2023年12月30日土曜日

PHEVへの道 5 電気でどれだけ走れる?


ガソリン車なら、1Lのガソリンでどれだけの距離を走れるかと言う「燃費(燃料消費率)」というのが、効率性能の指標として定着していてわかりやすい。「リッター二桁いくなんてすごい」と言っていたのが20世紀の話で、ハイブリッド車が登場してからは20キロ、30キロは当たり前というのが今の時代。

とは言っても、そこそこ走って最大40km/Lというのが限界みたいですし、HEVが普及して燃費競争も落ち着いた感があります。燃費は、一定の測定条件下の公表される数字よりは実際の走行は落ち込むのが当たり前で、PHEVも燃費という面では、HEVと基本的には同じ。むしろたくさんの電池を積んで車体重量が増えてしまうので、燃費そのものは同一車種のHEVよりも落ちてしまいます。

電気自動車では「電費(交流電力量消費率)」という言葉があり、搭載したモーターのエネルギー効率の指標として用いられています。これは1kWhの電気で走れる走行距離で、現在の標準的なモーターでは6km/kWh程度が一般的で数字が大きいほど優秀。ただし、逆に1kmの距離を走るのに必要な電力をWh/kmで表示すると(標準167)、小さいほど優れていることになります。

例えばトヨタ唯一の100%電気自動車であるbZ4Xでは、国土交通省が審査するWLTCモードで前輪駆動(FWD)なら128Wh/km、四輪駆動(4WD)なら134Wh/kmです。表記法を変えれば、FWDは7.8km/kWh、4WDは7.5km/kWhということになります。ちなみに先行するBEVメーカーであるTESLAの場合、日本で一番売れているModel3の後輪駆動(RWD)は123Wh/kmとされています。

プリウスPHEVの場合は、FWDで134Wh/km。同じくPHEVであるLexus RX450h+は178Wh/km、マツダCX-60PHEV(4WD)は247Wh/km、三菱自動車エクリプスクロスPHEV(4WD)は213Wh/km。BEVである日産リーフは標準モデルで155Wh/km、中国製BYD ATTO3は139Wh/kmとなっています。

無くなればすぐに給油すれば良いガソリンの場合は、ガソリン代も高くなりましたし燃費はすごく気になるところなんですが、現状では電気の場合は必ずしも充電が自由にできる保証はありませんので、電気代も無視はできませんが一度にどれだけ走れるのかの方が実用面では気になるところです。

となると、実際には搭載した電池に依存する部分が大きいと言うこと。HEVでは、元々電力のみの走行を前提にしているわけではないので、電費という概念は適用されません。プリウスのZグレードではPHEVが51Ahという電池容量があるのに対して、HEVだと1/10以下の4.08Ahで十分に充電されていてもEV走行できるのはノロノロでせいぜい2km程度です。

電池の種類によって細かい違いはありますが、最終的にはどれだけの容量を積めるかが大事で、より小さく軽い電池が有利になるため、現時点ではニッケル水素よりもリチウムイオン電池、そして将来的には全固体電池が必須ということになります。

電池容量の表記はkWhとAhの2種類があり、ちょっとわかりにくい。電気の仕事量がW(ワット)で電流Aと電圧Vをかけたもので、1時間当たりどれだけ使えるかを示したのがkWhです。一方、Ahは電圧は考慮されていません。例えば100Ahの電池から、10Aの電流を取り出す場合は10時間もつということになります。その時の電圧が100Vならば、10kWhの電池となり、100Wの規格の道具を100時間使用できることになります。

トヨタはAh表記が多いのですが、本来Ahは家庭で使う小さな鉛電池などに用いられるむもので、リチウムイオン電池ではkWh表記の方が望ましいようです。日産リーフの場合、リチウムイオン電池で総電力350V、総電力量40kWhと記載されていますので、単純に計算すれば114.3Ahとなり、プリウスPHEVの倍以上の電池容量となります。

エクリプスクロスPHEVは300V・13.8kWhとなっているので46Ah、CX-60PHEVは355V・17.8kWhで50Ahです。RX450h+では355.2V・18.1kWh・51Ahと記載されているので、プリウスPHEVと同等と想像します。bZ4Xは355.2V・71.4kWh・201Ahで、BYD ATTO3は390.4V・58.56kWhで150Ah。TESLAは詳しい諸元を公表していないのですが54~75kWhと言われています。

忘れてはいけないのが、電池の経年劣化の問題。BEVもPHEVもリチウム・イオン電池を使用していますが、使い込んでいくと充電量が次第に低下していくことは避けられません。充電方法と温度管理が大きく影響するわけで、スピーディに充電できる方法ほど電池に負担をかけますし、また電池を傷める発熱量も大きくなる。充電は100%と0%を繰り返すとより電池を傷めますので、30~80%の範囲で使用するのが良いと言われています。

もしも毎日フル充電と電池を使い切るような走り方をしていると、1000回の充電(約3年)で電池容量は90%程度に低下するといわれています。しかし、容量の半分程度を維持するような使い方なら、90%程度に低下するまでに5000回以上の充電が可能です。もっとも、満充電で500km走れるBEVなら、1000回の満充電で50万km走ることになるので、タクシーでなければあまり気にし過ぎない方が良さそうです。

最終的には総合的な航続距離については、やはり国土交通省基準の審査方法による「充電電力使用時走行距離」として公表されています。bZ4xは559km、リーフは322km、BYD ATTO3は470km、TESLA Model3は573kmです。例えば用賀から名古屋までの東名高速道路の総距離は346.7kmで、上りも下りも数十kmごとにSAなどに充電スポットが10か所程度設けられています。BEVの場合、ある程度満充電で出発すれば、そのまま走り切れるか途中で1回の充電で大丈夫という感じになります。

PHEVは普段使いを電気で走り、遠出の時はガソリンでも走るという使用法が想定できるわけですが、それでもプリウスPHEVは87km、RX450h+で86km、エクリプスクロスPHEVで65km、CX-60PHEVで74kmなのでまず問題はない。エンジンも使えば、理論上の最大連続走行可能距離はそれぞれ、1126km、1120km、865km、804kmとなり、うまくいけば首都圏から九州・北海道まで行けるかもしれません。