2023年12月11日月曜日

さらば愛しき女よ (1975)

探偵フィリップ・マーロウが登場する2作目の長編で、レイモンド・チャンドラーの小説「Farewell, My Lovely(1940)」の映画化。40年代に2回映画化されているので、今作は3回目。「ロング・グッドバイ」を製作したエリオット・カストナーが製作総指揮を担当し、監督はディック・リチャーズ。

マーロウを演じるのは名優ロバート・ミッチャム。「ロング・グッドバイ」は70年代の今風にアレンジされていましたが、今回は原作通りで、戦前のロサンジェルスが舞台で、ちょいと年老いたマーロウを渋く描いています。

フィリップ・マーロウ(ロバート・ミッチャム)は、刑務所から出てきたばかりだというムース・マロイ(ジャック・オハローラン)という粗暴な大男から、昔の恋人ヴェルマ・ヴァレントを探すよう依頼されます。マロイは、ヴェルマが働いていた飲み屋にマーロウを連れて行きますが、そこは今は黒人の店になっていて、店主を殺してしまい姿を隠してしまう。

マーロウは店の向かいの宿に住んでいる、かつての店のバンドマンから、当時の店主の妻、ジェシー(シルヴィア・マイルズ)の居所を知り訪ねます。ヴェルマの写真を手に入れ、たどっていくと簡単に見つけることができましたが、彼女は廃人になって病院に入院していました。

リンゼイ・マリオット(ジョン・オーライリー)と名乗る男が事務所に来て、頼まれて盗まれた翡翠を買い戻す大金を持ち歩くので護衛してほしいと依頼してきます。指定された場所に行くとマーロウは殴り倒され、気がつくと警察がいてリンゼイは殺され大金も消えていました。

マーロウは翡翠コレクターとして有名なグレイル元判事を訪問し、若く美しい妻のヘレン(シャーロット・ランブリング)がマリオットを雇ったことを知ります。さらに女ギャングのアムソー(ケート・マータフ)に拉致され、マロイの居所を聞かれ監禁されます。そこにはバンドマンの死体もありましたが、一味の内輪もめのどさくさに紛れて逃げ出しました。

元検事で今は裏稼業に勤しむブルネットからも、マロイの居所を聞かれ、マーロウはさらに銃撃され命を狙われます。ジェシーに尋ねると、本物のヴェルマは別人で生きていると言い、マロイに連絡させると約束しました。

連絡してきたマロイを連れて待っていると、電話がかかって来てマロイは約束の場所に出向きますが、殺されそうになりなりマーロウに助けられ再び姿を消します。警察に事情を隠せなくなってきたマーロウは、刑事をジェシーの家に連れて行くと、すでにジェシーも殺されていたのです。

マーロウがしきりにジョー・ディマジオの連続安打記録を気にしているので、これは1941年の話。こちらは、戦前のアメリカの雰囲気が色濃く画面を彩ります。マーロウの一人称で進む小説の形式を踏襲して、ミッチャムのけだるいナレーションから入るのも原作を大事にしているポイント。

ただし、マーロウとマロイの出会い方などは変更してあり、まずはマーロウがどんな探偵なのかを印象付ける前説的な短い事件からスタートします。また、ブルーネットの役割も拡大しているようです。

原作に忠実なマーロウという意味では、ハンフリー・ボガートは背が低いけどカッコよすぎ。ロバート・モンゴメリーは印象が薄く、ジェームス・ガーナーは、しょぼくれ過ぎ。いろいろなマーロウがいてよいわけですが、ロバート・ミッチャムは、最も「らしい」感じがして好感が持てますし、現代風ならエリオット・グールドが素晴らしいという結論です。

ロバート・ミッチャムは、1978年にボガートの「三つ数えろ」のリメイクである「大いなる眠り(1978)」でもマーロウ役を演じています。