ハンフリー・ボガート主演の一風かわったクライム・サスペンス。
ジョセフ・バレット(ハンフリー・ボガート)は、戦前に銀座で東京ジョーズというキャバレーを経営していました。終戦となり、久しぶりに羽田空港に降り立ったジョーは、今は日本人が経営している店に立ち寄ります。旧友のイトー(島田テル)と再会して、かつて店の歌手で恋人だったトリーナ(フローレンス・マリーナ)の居場所を知ります。
しかし、トリーナはアメリカ軍の法律顧問ランディス(アレクサンダー・ノックス)と結婚しており、ジョーを拒絶します。ジョーは元秘密警察のキムラ男爵(早川雪舟)に近づき、トリーナが戦時中に日本軍に協力していたことを知り、このことを公にすれば反逆罪になり、ランディスもおしまいだと脅すのでした。しかし、トリーナはそれはこどもを助けるためだったと説明し、そのこどもの父親はジョーだったのです。
キムラはジョーに航空運送会社をまかせ、さらなる陰謀に巻き込んでいきます。しかし、アメリカ軍GHQは、初めからジョーをマークしていて、木村が逃亡戦犯を秘密裏に帰国させるためにジョーを利用していることを察知していました。GHQはジョーを呼び出し、陰謀を潰すために3人を羽田で引き渡すように命令し、ジョーも了承します。
キムラは事態を察知し、トリーナの娘を誘拐します。ジョーは機内でGHQに連絡を取りますが、乗せた三人に機を乗っ取られてしまいます。しかし横浜の廃飛行場に着陸したところをGHQが取り囲み全員を逮捕します。ジョーは娘を取り戻すために、キムラのアジトに向かうのでした。
冒頭が富士山の空撮。羽田から終戦間もない東京の街並みが映し出されるところは、何か不思議な感じですが、ちょっと嬉しい。もっとも、ハンフリー・ボガートが実際に来日したわけではなく、ボギーの影武者が代役をしているわけで、メインの撮影はアメリカ。顔がわかる場面では、スクリーン・プロセスの手法が用いられています。
日本はまだアメリカ軍の占領下にあり、しだいにソビエト連邦が力を拡大し東西冷戦の下地ができつつあった時代背景を理解したうえで見ると、キムラの陰謀というのも理解しやすいかもしれません。
早川雪舟は、サイレント時代からハリウッドで最初に成功したアジア人俳優で、日本で最も知られているのは「戦場にかける橋(1957)」でしょうか。島田テルは日系アメリカ人で、「007は二度死ぬ(1967)」のスペクターの一員で有名です。
まあ、この頃の日本を舞台にしたアメリカ映画は「なんちゃって日本」なので、かなり違和感はありますが、ハンフリー・ボガートもこんな映画に出ていたんだという珍しさも手伝って、それなりに楽しめると思います。