このタイトルだと、まず最初に思い出すのはクリント・イーストウッド監督・主演の西部劇です。アウトローは「outlaw」、つまり法律(law)の外(out)にいる人、法律を無視する人、法律を気にしない人などなど・・・日本語では「無法者」という訳が使われることが多い。
この映画の原題は「Jack Reacher」であって、アウトローは日本で勝手につけたもの。イギリスの作家、リー・チャイルドの代表作が「ジャック・リーチャー・シリーズ」で、「One Shot (2013)」がこの映画の原作。米陸軍憲兵隊捜査官だったジャック・リーチャーが、今では流れ者になり事件に関わって来る展開なので、確かにアウトローというのもあながち間違いではありません。
主演のトム・クルーズは製作にも名を連ね、監督・脚本のクリストファー・マッカリーとはこのあと「ミッション・インポッシブル・シリーズ」で立て続けにタッグを組んでいます。トム・クルーズはここでは、徹底的に冷静な主人公を演じ、基本的にド派手なアクション、ユーモアやロマンスは封印しています。
ピッツバーグの川沿いの公園で、対岸の駐車場から狙撃され5人が殺害される事件が発生。無差別殺人犯として、遺留品などから元陸軍の狙撃兵バーが逮捕されました。しかし、バーは警察で「ジャック・リーチャーを呼べ」と書いて、その後他の拘留者の暴力により昏睡に陥ってしまいます。
バーの事件を知ったジャック・リーチャー(トム・クルーズ)は、自らピッツバーグに赴きバーの弁護を引き受けたヘレン・ロディン( ロザムンド・パイク)の調査員として捜査を始めます。
リーチャーは、かつて陸軍憲兵隊の捜査員として無差別殺人を起こしたバーを捕えたことがありましたが、遺留品が多い事、狙撃の場所などからバーのような訓練を受けた狙撃者の計画とは考えられませんでした。リーチャーはヘレンに被害者を調べろと言い、一見無差別殺人と思われた事件が一人を殺すための偽装であることがわかってきました。
リーチャーは到着直後から、尾行され内部にも犯人側と通じる者がいる疑いもあります。リーチャーが犯人の決定的な証拠を得るため遠出したところを、ヘレンが犯人たちに拉致され、リーチャーは彼らのアジトに乗り込むのでした。
犯人を追い詰めていくスリラーとしては、うまくストーリーはまとまっていて及第点の映画。普通ならリーチャーとヘレンがいちゃいちゃしたくなるところですが、うまくドライにかわしているところも好感が持てます。クルーズも、イーサン・ハントのイメージと被らないことを意識していたでしょうから、このあたりはマッカリーのうまさでしょうか。
ロムサンド・パイクは2002年にボンド・ガールでデヴューし、2014年の「ゴーン・カール」でその演技が賞賛されました。ここでも、弁護士という役柄もあり、年齢以上に落ち着いた雰囲気でいい味を出しているように思います。リーチャーに協力する老人役で、往年の名優ロバート・デュバルが活躍するのは嬉しいところ。
ただ、やはりイーサン・ハントのイメージが強いトム・クルーズが、「ミッション・インポッシブル・シリーズ」と掛け持ちでやる役としては、評価が下がるのはしょうがない。もう少し、リーチャーが軍を離れて「アウトロー」になるまでの経緯や、アウトローとしてどんな生活をしているのかなどを掘り下げていれば、映画としての面白みは倍増したでしょうし、その場合は別の俳優を起用した方がよかったのかもしれません。