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2022年1月26日水曜日

ダンスウィズミー (2019)

ユーモアを盛り込んで人気の三谷幸喜は、劇団員から出発し、脚本家となり、自らメガホンを取るようになった人。それにに対して矢口は、アマチュアの映画製作から始めたので、自ら脚本も含めて何でも担当するのが普通のスタイル。

三谷と矢口の映画の中での「笑い」は似ていて、両者とも比較的自虐的なネタでシニカルなユーモアを作り出すことが多い。三谷は、笑いを作るためにその場のシーンを作り出し、しかもいかにもおかしな人物を登場させるのですが、矢口の場合の「笑い」は自然発生的で、ストーリーの中に溶け込んでいる感じがします。

現在のところ、矢口史靖監督の最新作がこれ。2016年に公開された多くのアカデミー部門賞を独占した「ラ・ラ・ランド」を見た矢口が、人が急に歌って踊りだすミュージカルのシチュエーションに違和感を感じたことがきっかけで、自分なりにその答えを探すのがテーマとなっています。

鈴木静香(三吉彩花)は大手商事会社に勤めるOLですが、人気者だった小学生の時に学芸会のミュージカルでの失敗がトラウマになっている。姪っ子も同じように学芸会のミュージカルが怖いと思っていたので、うらぶれた催眠術師、マーチン上田(宝田明)に自信が持てるようになる催眠術をかけてもらうことに。

ところが催眠術にかかったのは静香の方で、音楽が聞こえてくると場所・状況などおかまいなしに、歌って踊ってしまうようになってしまいました。人から笑われ、レストランでは多額の弁償金を請求され、なんとか上田を探し出し催眠を覚ましてもらうことにします。

上田を探すために興信所に行くと、上田のいんちき催眠術の助手をしていた斎藤千絵(やしろ優)と鉢合わせ。二人は探偵の渡辺(ムロツヨシ)の情報により新潟に向かいますが、一足遅く上田は秋田に。途中で知り合ったストリート・シンガーの山本洋子(chay)と路上ライブで小銭を稼ぎながら秋田に向かいますが、またまた間に合わない。

次の札幌で、ついに上田を捕まえ、全員がミュージカルのショーのようにステージで歌い踊りますが、上田の「音楽が終わると催眠が解ける」といった通り、歌い終わった静香はやっと歌と踊りから解放されるのでした。でも、静香はこの短い旅の中で、本当に大切なことは何かがわかったのでした。

主演した三吉彩花は、もともとアイドルから出発し、早くから女優業に転向したようです。映画中のダンス・シーンはすべて自ら踊っていて、身長が高く手足が長く見えるので見栄えが良い。前半は、まさに三吉のダンスを楽しむ映画というところ。

中盤からは、いわゆるロード・ムービーとなり、行く先々で出会う変わった人たちとの交流が描かれていきます。特に一緒に旅をすることになる、ものまねタレントのやしろ優とのコンビがGOOD。やしろ優のうらぶれた感がなかなか良く、俳優経験は多くないはずですが、三吉とのコントラストがうまく出ているようです。

昔は人気があったけど、今は落ちぶれたしがない催眠術師兼手品師という役どころを大御所、宝田明が演じているのもなかなかうまいキャスティングです。会社のOL連中の憧れの的だけど、実はちょっと怪しいイケメンに三浦貴大。ムロツヨシは、もう少し役に重要性を持たせてもよかったかもしれません。

そもそもの矢口監督の違和感は、催眠術で無理やりという理由なので、あまり解決にはなっていません。そもそも。ミュージカルとはそんなものだということなので正解は特に無くて当たり前。この映画はミュージカルではありませんが、旅を通して人として静香が成長していく物語という意味では一定の評価ができそうです。