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2022年1月28日金曜日

ステキな金縛り (2011)

三谷幸喜が、演出家、脚本家から映画監督の世界に進出して、もしかしたら一番ノリノリの作品となったのがこちら。日常的な世界にありえないファンタジーを持ち込んだミタニ・ワールドの典型的な構図が見事に映像化された感じがします。

落ちこぼれ的な弁護士、宝生エミ(深津絵里)は、ボスの速水(阿部寛)から最後のチャンスとして、面倒な殺人事件の弁護の仕事をまわされます。何と被告人が主張するアリバイが、山奥の宿屋で幽霊にのしかかられて金縛りにあっていたというものだったのです。

エミは宿屋に出かけて夜になると、幽霊の更科六兵衛(西田敏行)が登場しました。エミは六兵衛に法廷で証言するように頼み込みます。しかし、幽霊ですから日が暮れないと現れることができない。しかも、裁判では、誰にも六兵衛の姿は見えず声は聞こえない。

裁判の検事は小佐野(中井貴一)は、超常現象などは一切信じないのですが、どうも六兵衛が見えているっぽい。エミは、六兵衛の姿が見える人は、最近ついていないことが多く、身近に死を感じていて、そしてどうやらシナモンの香りを好む人らしいとわかります。

小佐野が可愛がっていた最近死んでしまった愛犬の霊を連れてきて、ついに小佐野に幽霊の証言を認めさせたのですが、小佐野は冷静に六兵衛の証言の信憑性に疑いを投げかけます。さらにあの世の公安、段田(小日向文世)が登場して、この世を騒がしくしている六兵衛を連れ戻そうとしてくるのです。しかし、六兵衛に励まされ自信を持ったエミは、事件の真相そのものを探り出し六兵衛無しの裁判に臨むのでした。

竹内結子、山本耕史、浅野忠信、市村正親、草彅剛、戸田恵子、生瀬勝久、佐藤浩市、篠原涼子、唐沢寿明、深田恭子などなど・・・もう大勢の有名所がチョイ役で登場するのも見所。彼らの使い方は上手で、メインのキャラクターを霞めない程度に、それぞれが存在感をちゃんと残しています。

形式的には裁判を中心として法廷劇みたいなところなんですが、一定の条件を満たした人にしか見えない幽霊が証人というところから起こるドタバタのコメディ。特に、実に可愛らしい深津絵里と、無念を残し幽霊になった西田敏行の二人の演技が光ります。

ただし、見える人たちには一定の心の足かせみたいなものがあって、ドラマとしての深みを作っているところは脚本家としての三谷の真骨頂。ずっと六兵衛を見ることができていたエミが、裁判を通して自分に自信をつけたことで見ることができなくなったというところなんかうまいもんです。

ただ、(三谷らしい)こういう最初から笑わせるぞという意気込みも見え隠れして、はまる人とはまらない人がはっきり分かれるところなのかもしれません。この後の作品では、この意気込みだけで空回りしてしまう感じがありましたね。