角川グループ60周年記念として、25年ぶりに再び戦国時代に自衛隊を送り込む映画が作られました。前作とのストーリーとしての直接的な関連はありません。半村良の前作の原作をある程度下敷きに、福井晴敏がストーリーを組み上げました。
太陽のフレアの影響を避けるための人口磁場シールド実験中に、シールド内にいた的場(鹿賀丈史)が率いる中隊が忽然と消えてしまいました。そして、72時間後に同じ場所に一人の戦国武者、七兵衛(北村一輝)が出現します。
実験の責任者だった神崎(鈴木京香)は、中隊が時空の歪みによってタイムスリップし、その揺れ戻しが起こったものと推察。その後各地に「虚数空間」と呼ぶ様々なものを吸い込んでしまうホールが出現、次第に大きくなることで現代が消滅する危機が迫って来ます。
これは的場らが積極的に歴史の改変を行っていることが原因と考えられたため、再び太陽フレア活動が活発化した2年後、森(生瀬勝久)が指揮するロメオ隊が、的場らの救出とホールの拡大を食い止めるために1549年にタイム・スリップするのでした。ロメオ隊には神崎の他に、かつて的場の部下で彼をよく知る鹿島(江口洋介)も参加していました。彼らはミッションを完了して、到着した場所に72時間以内に戻らなければなりません。
的場は戦国時代では織田信長を名乗り、美濃の蝮こと斎藤道三(伊武雅刀)を味方につけ、富士山の南西、天母山に築城し天導衆という武装集団を率いていました。この時代の人間を殺傷することを禁じられているロメオ隊は、なすすべなく天導衆に捕らえられてしまいます。
的場は、富士山ごと壊滅できる強力な爆弾を準備し、一から国を作り替えようとしていたのです。しかし、ロメオ隊と一緒に戻った七兵衛、ロメオ隊が助けた少年、藤介(中尾明慶)らが、実は狂いだした時間軸を自然と元に戻そうとする鍵となる人物でした。
最も異なるのは、今回は自衛隊が全面協力した点です。場所も東富士演習場が使われ、登場する車両などは本物です。ただし使用できる期限が限られていたため、悪天候でも撮影が強行され、それはそれで映画の要素としてうまく機能しているように思います。
さらに前作と違い、今回はタイム・スリップする原理らしきものは一応設定されています。また、タイム・パラドックスも考慮され、先にスリップした的場ら以外には実弾を使用しないなど、ある程度科学的な拠り所を用意しています。また、CGを取り入れ全体的に派手な画面となりました。
しかし、理論的な正当性を出そうとすると、逆に細かいところが気になってしまいます。所詮、リアリティは度外視した話なので、もう少しエンターテイメントに徹しても良かったように思いました。
ちなみに、斎藤道三の娘で信長に嫁ぐ濃姫を演じるのは、まだ初々しい綾瀬はるかで、近作「レジェンド&バタフライ」の濃姫役は18年ぶりでした。