2026年4月6日月曜日

寒い国から帰ったスパイ (1965)

戦後にスパイをテーマにした映画としては、最初期の傑作。イギリスとアメリカの合作で、監督はマーティン・リットです。原作者はジョン・ル・カレ。ル・カレはイギリスの外交官であり、MI6(イギリス秘密情報部)に所属していました。ル・カレの書いたスパイ小説はリアリティがあり、その多くが映像化されています。

第2次世界大戦後には、ソビエト連邦を中心とした共産主義経済圏と欧米諸国を中心とした資本主義経済圏に世界は大別されました。いわゆる西側と東側の冷戦の構図です。その象徴的な国がドイツであり、その代表的な存在と言えるのがベルリンでした。

ベルリンは東ベルリン、西ベルリンに分断され、いつの間にか境界部には155kmに渡って高い壁が作られ、東から西への越境者がいないか日夜監視されていました。1989年の「ベルリンの壁崩壊」は、東ドイツ政府の失言から、市民らによって一気呵成に突発的に起こったことでしたが、壁が無くなったことは冷戦時代の終焉の始まりとなったのです。

長年、イギリス情報部の西ベルリン駐在の局員であるリーマス(リチャード・バートン)は、東側の協力者を境界部で殺されてしまいます。イギリスに戻ったリーマスは、責任を取らされて、コントロールと呼ばれる長官から解雇されてしまいます。

それから酒浸りになり、やっと職業安定所から紹介された図書館の仕事に就くことになりました。そこで、英国共産党員のナンシー(クレア・ブルーム)と親しくなりますが、酔って傷害事件を起こし警察に逮捕され、再び職を失ってしまいます。勾留を解かれたリーマスに、東ドイツ側の男が接触してきます。男は大金を餌に、情報部員だった時の話を聞こうとするのでした。

実はこれらのリーマスの行動は、東ドイツ諜報部のNO.1のムントを消すための芝居だったのです。ムントを二重スパイに仕立て上げて、NO.2のフィードラーによって粛清させようというもので、巧妙なリーマスの証言によりフィードラーはムントを告発するのです。査問会が開かれ、リーマスは証人として証言をしますが、ムント側は思ってもいない証人を用意していたのです。

リチャード・バートンは50~70年代に活躍したイギリスの代表的な俳優で、エリザベス・テイラーの「クレオパトラ」でのアントニウス、「荒鷲の要塞」でのクリント・イーストウッドとの共演などが思い出されます。クレア・ブルームは、チツヤプリンの「ライムライト」の他、多くのシェークスピ物に出演しています。

カラーが普通になった時代の白黒映画ですが、かえって寒々とした緊張感が増していて違和感はありません。また、ゆったりした暗い曲調のオリジナルのテーマ曲が。いろいろな演奏でときどき流れるのが、ストーリーを台無しにせずに雰囲気を強調しているところも好感が持てます。

最近のような派手なアクションはありませんが、淡々とスパイとはどういうものかを描いている映画で、静かなスリルが全編を貫いています。誰が真実を言っているのか、誰が嘘をついているのか、本当は誰が誰をどうしようとしているのか、最後まで謎が多く視聴者を釘付けにします。