2026年4月14日火曜日

ゼロ・ダーク・サーティ (2012)

監督のキャスリン・ビグローは、元ジェームズ・キャメロンの妻で、2008年の「ハート・ロッカー」でアカデミー賞の作品賞、監督賞など6部門を受賞し、一躍有名になりました。それの次作となったこの映画では、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の首謀者とされる、イスラーム過激派アルカーイダの指導者ウサーマ・ビン・ラーディンを10年に渡って追跡したCIAの女性分析官に焦点を当てています。

基本的にはフィクションですが、事実に基づいてドキュメンタリー様に作られたもので、ストーリーは淡々と進みますが、ラストのビン・ラーディン殺害で一気にカタルシスに達するのです。

ビン・ラーディンは、当初アフガニスタンのタリバン政権の庇護を受けていましたが、911後にアメリカのビン・ラーディン引き渡し要求をタリバンが拒否したため、アフガン戦争となるも行方は謎のままになっていました(これは事実)。

2003年、CIAパキスタン支局に配属されたマヤ(ジェシカ・チャスティン)は、当初はアルカーイダの資金調達係だったアンマルの尋問に同席しますが、その拷問のような手法に気後れしてしまいます。しかし、マヤのアイデアによりビン・ラーディンの連絡係として「アブ・アフメド」という人物がいることを聞き出すことができました。

マヤは、様々な資料からアブ・アフメドを特定しようと試みますが、情報があまりに少なく、かつばらばらのため時間が過ぎ去るばかりでした。そんな中で、同僚のジェシカ(ジェニファー・イーリー)が、ビン・ラーディンと接触しうるアルカーイダの医師から情報提供できることになりますが、その人物の自爆により6人のCIA職員と共に死亡します(2009年12月30日 キャンプ・チャップマン攻撃)。

マヤはアブ・アフメドがカギだと信じ、さらなる追求をしますが、上司は本当に存在するのかもわからない人物の調査より日々のテロリズムを優先するのです。さらにアブ・アフメドはすでに死亡しているという情報まで出てくるのですが、イブラヒム・サイードという人物がアブ・アフメドと同一人物であり、現在も生存している可能性が浮上してきます。

サイードの実家の電話番号から、時々サイードから電話がかかっていることを突き止めたマヤは、パキスタン領内でサイードをついに発見し、彼の動向を徹底的に監視するのです。そして、サイードの住まいがパキスタン郊外であり、まるで要塞のような屋敷であることを突き止めます。

衛星画像の解析から、絶対に姿を見せない男がいることを確認したマヤは、それがビン・ラーディンであると確信しますが、数か月だっても絶対的な確証が得られないため、上層部は屋敷への直接行動を承認しようとしませんでした。しかし、マヤの強い説得により、ついに2011年5月2日、アフガニスタンの基地から2基のステルス・ヘリコプターが海軍特殊部隊を乗せて飛び立ちました。作戦のスタートは、夜中の0時30分(ゼロ・ダーク・サーティ)でした。

映画では一部実在の人物を名を変えて登場させていますが、主役のマヤについては多くのCIA局員を取り込んだ人物像のようです。中盤までは、CIAの地道な仕事を描き、映画としての盛り上がりはあまりありません。ただ、これが事実に基づいていることを考えながら見ると、一定の緊張感が持続します。

マヤを通して、実際のCIA職員の成長、危険との隣り合わせの非情な世界を知ることができます。それはエンターテイメントのアクション映画とはほど遠いもので、おそらく真のスパイの世界に近いものなのかもしれません。

ビン・ラーディン殺害のニュースは朝になると世界中を駆け巡りました。パキスタンはアメリカから何の事前連絡も無かったことに強く反発しましたが、おおむね日本を含む各国の反応は対テロリズムへの前進として評価し、批判はほとんどありませんでした。

アメリカ国内では、当然絶賛されましたが、多くの映画賞ではノミネートにとどまったものが多い。映画の中で、CIAが拷問をすることに対する批判か巻き起こったことなどは、マイナス要素になったかもしれません。リアルタイムでこれらの事件を知っている自分としては、その裏で起こっていたことの一端を垣間見ることができたことは重要かもしれません。