2025年3月5日水曜日

セーラー服と機関銃 (1981)

もう言わずと知れた、初期の角川映画、最大のヒット作であり、かつ邦画史上でも必ず上位に食い込む名作です。当時も「か・い・か・ん・・・」の名セリフと共に社会現象になるほどのブームを巻き起こしました。

原作は赤川次郎。脚本は鈴木清順作品で活躍した田中陽造、監督は相米慎二。相米監督は「翔んだカップル」に続く本作でも、主演に薬師丸ひろ子を迎え、両者とも監督として女優として確固たる評価を獲得しました。

跡目は甥に譲ると遺言を残して、目高組三代目組長が亡くなりました。しかし、その甥は交通事故で亡くなり、その娘である星泉(薬師丸ひろ子)は天涯孤独の身となってしまいます。目高組は佐久間(渡瀬恒彦)、政(大門正明)、ヒコ(林家しん平)、メイ(酒井敏也)の4人しかいませんが、組を潰すわけにはいかないと、泉に四代目組長になるよう頼み込みます。

最初は拒否した泉でしたが、それなら殴り込みをして全員で死を選ぶというため、仕方がなく組長になることを承諾します。しかし、事務所が銃撃され、泉も高校を強制退学させられます。さらにヒコが何者かに殺されてしまう。

どうやら敵対する松の木組、それを操る浜口物産、そして真の黒幕である三大寺らの仕業であると佐久間は考えます。実は、三大寺と手を組む黒木刑事(柄本明)が、手に入れたヘロインを咄嗟に通りかかった泉の父親のバッグに隠し、それが何かわからずに泉が受け取っていたのでした。メイも殺され、ついにイズミは佐久間とマサを引き連れ浜口物産に殴り込みをかけるのでした。

三大寺には三國廉太郎、松の木組組長には佐藤允、浜口物産社長には北村和夫など豪華な大ベテランが脇を固めます。三大寺の娘で佐久間に味方するマユミには風祭ゆき、泉の同級生には柳沢慎吾、光石研などが登場します。

公開時は約112分の映画でしたが、翌年尺の都合でカットされたシーンを復活させた「完璧版(131分)」が公開され、より高い評価を受けました。また主題歌は来生たかおの「夢の途中」が使われ、相米監督の強い意向で薬師丸ひろ子が歌い大ヒットしています。

内容はそもそも、原作者の赤川次郎も映画の3年前に本作を執筆した時点で、なかば薬師丸ひろ子に当て書きしていました。アイドル映画と思いきや、薬師丸ひろ子にとっては、「野生の証明(1978)」で鮮烈なデヴューを飾り、「翔んだカップル(1980)」でアイドル的な人気が上昇、そして本作で演技力も認められ女優としての地位を決定づけました。角川映画創業期を支える看板女優であったことは間違いありません。

相米監督の特徴と呼ばれるワンカット長回しは、この映画でも顕著です。やり方を間違えると画面がだれてしまったりするリスクを伴ないますが、計算された長回しは見る側に一つのシーンで多くの情報を提供できる。もっとも、登場する俳優たちの演技力にもかなり左右されるので、この映画の出演陣の緊張感は見事と言えるかもしれません。