阿部秀司製作総指揮による鉄道シリーズの第2作目。今回の舞台は富山県、富山地方鉄道(通称、地鉄)の運転手の話。監督は蔵方政俊、脚本は小林弘利、ブラジリィー・アン・山田。
地鉄の運転士を42年間、無事故無違反で勤める滝島徹(三浦友和)は定年を控えていました。退職後は家族との時間を作るつもりでしたが、元看護士の妻の佐和子(余貴美子)から緩和ケアの訪問看護師土の仕事をすることにしたと聞かされます。
何度も話をしても理解を示さない徹だったので、佐和子は家を出てしまい、突然妻がいなくなり徹は困惑するのでした。しかも佐和子は、徹に名前を書き込んだ離婚届と自分の結婚指輪を渡すのです。娘の麻衣(小池栄子)も、自分のことばかりで母親のことをわかっていない徹を責めます。
徹は研修中の小田(中尾明慶)の指導を任されますが、明るい性格の小田も彼女との別れ話で落ち込んでしまいます。小田は「もしも、奥さんから離婚と言われたら、滝島さんだって冷静でいられないですよね」と言いますが、徹は平気を装うしかありませんでした。
佐和子が担当した井上信子(吉行和子)は、家族と一緒に最後の時は自宅で過ごしたいと強く思っている患者でしたが、孫に使う薬草を探しに黙って出かけてしまいます。そして帰りに、徹が指導して小田が運転する電車に乗り合わせます。しかし、落雷のため送電が止まってしまい、山肌の斜面の場所で電車はストップしてしまうのです。
徹の連絡で、佐和子が現場に駆け付けますが、救急車が近づけないため佐和子は斜面をよじ登って電車に乗り込み、信子の応急処置をするのでした。佐和子は母親を病院で亡くしたことの後悔と、自分も一時ガンを疑われたことで、強い覚悟を持って復職したのです。徹は、本当の佐和子の姿を始めて理解し、やっと佐和子や自分がこれからどのように生きて行けばいいのかの答えを見つけた気がしました。徹は離婚届を役所に提出し、自分と佐和子の結婚指輪を投げ捨てるのでした。
もちろん、ちゃんとハッピーエンドですからご安心を。指輪を捨てちゃったときは、こりゃ思い切った展開だと思いましたが、なかなかうまい着地点を用意したものだと感心します。
自分も含めて男というのは、どこかで家族のために自分が頑張るという気持ちが強く、いつの間にか家族の事が見えなくなっているものです。それを「男は理性、女は衝動」みたいな言い訳をして、自分を正当化しているところは少なからずあることは間違いない。
電車の運転士という仕事も、一度走り出したら何があっても投げ出すことができないというところは、ある意味医療の仕事と似ている部分があります。主人公は妻が同じような立場になったことで、自分の姿を家族がとのように見ていたかが初めてわかったのかもしれません。
今回もローカル鉄道が舞台ですが、都会から引退した車両などを大事に整備し続けて走らせるところは、地方の鉄道の厳しい事情が垣間見えます。しかし、だからこそ車両に対する愛情は、ドラマとしての深みを与えています。美しい風景と共に、名作とは言えないかもしれませんが、心に残る作品になっていると感じました。
このシリーズは、2018年に第3作として「かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発」が作られています。こちらは九州のオレンジ鉄道が舞台で、有村架純が女性運転士を目指す話になっています。