2025年3月4日火曜日

翔んだカップル (1980)

薬師丸ひろ子は高倉健と共演した角川映画「野生の証明」で映画デヴューし、すごい子役が登場したと話題になったのが1978年。その後テレビ・ドラマの後、1980年のこの柳沢みきおのマンガが原作のこの映画で「アイドル女優」としての人気を決定づけました。

と、同時に、ロマン・ポルノの助監督をしていた相米慎司にとっても商業映画監督デヴュー作となりました。相米はこの処女作から、役者自身にどう演じるかを自分で考えさせ何度でもテイクを重ねる演出技法を取っており、出演したまた少年少女たちはたいぶ苦労したようです。

北条高校に入学した田代勇介(鶴見慎吾)は、外国に転勤になった伯父の家に一人住まいすることになりますが、小遣い稼ぎに同居人を募集したところ、何と同級生の山葉圭(薬師丸ひろ子)が引っ越してきてしまいます。女の子、それも同級生と一緒に住むなんてとオロオロする勇介をよそに、あっけらかんとした圭は動じる気配がありません。

勇介とともだちになった秀才肌の中山わたる(尾身としのり)は、圭が気になる。やはり秀才の杉村秋美(石原真理子)は、自分も一人住まいなので勇介に一緒に暮らそうと積極的にアプローチしてくるのです。

事あるごとにぶつかり合う二人なんですが、まぁ、青春ですから・・・いろいろあるわな。素直じゃない二人が、しだいにお互いの気持ちをやっと表に出せるようになるのですが、ついにノイローゼになったわたるは学校に二人の同居を通報してしまいます。

今でこそ、ドラマの世界ではあるあるのシチュエーションですが、当時はまさに「翔んだ」設定で、原作は大ヒットしました。映画でも、まだ互いを思いやる方法に未熟な二人のぶつかり合いの中で、少しずつ相手の気持ちを理解していくところがうまく描かれていました。

勇介に積極的な秋美は、その後「ぷっつん女優」となる美少女、石原真理子で、この映画のためにスカウトされた聖心女子学院に通学していた正真正銘のお嬢様でした。一方、圭に想いをつのらせるわたるは「転校生」でブレークする前の尾身としのりで、いびつな性格の秀才を演じました。

勇介は、いまでこそ貴重な脇役としてコンスタントにドラマ・映画に登場している鶴見慎吾ですが、さすがに演技としてはまだまだというところでしょうか。薬師丸ひろ子は初主演ですが、「野生の証明」と違い、年齢相応のはじけた演技を披露しました。

原作は、この後も年齢を重ね変化していく勇介と圭の関係を追っていくので、始まりの1年間だけにかぎるこの映画のストーリーは起承転結の「起」の部分だけ。ですから、監督も無理して盛り上げようとせず、日常的なさざ波のような変化を丹念に追いかけています。

そのいう意味では薬師丸見たさのファン以外には物足りなさを感じさせるかもしれませんが、実際の生活の中でも、同級生の異性と同居するということ以上の事件なんてそうそうおこるはずもありません。そこを無理しないことで、翔んだ設定の中で可能な限りリアリティを持たせることに成功しているのかもしれません。