2025年3月10日月曜日

ブルーピリオド (2024)

青春スターを集めた青春応援映画・・・という薄っぺらな言い回しは似合わない、けっこう硬派な映画です。原作は山口つばさのマンガ。脚本は吉田玲子、監督は「東京喰種 トーキョーグール」の萩原健太郎です。

矢口八虎(眞栄田郷敦)は成績優秀ですが、タバコは吸うし酒も飲むという荒れた生活もしていました。両親(石田ひかり、ずん)は、いい大学を受験してもらいたいと思っていますが、本人は何事にも一生懸命になれないでいました。

ある日美術室で見た一枚の絵に魅力を感じ、佐伯先生(薬師丸ひろ子)が顧問をしている美術部に入部します。美術部には友人のユカちゃん(高橋文哉)もいました。ユカちゃんは、本当は龍二という名で、化粧をして全身ギャル衣装に身を包んでいました。

しだいに絵を描くことで初めて熱中できるものを見つけた八虎は、東京芸術大学を受験することに決め、美術予備校にも通い出します。そこでは、大葉先生(江口のりこ)の指導を受け、しだいに絵画の技量が足りなくても戦略を練ることで自分の絵が描けることを学んでいきます。

いよいよ受験当日。1次試験は丸1日かけてデッサンの課題でしたが、八虎はさまざまな多面性を表現した自画像を描いて合格します。龍二は父親に女装道具をすべて捨てられてしまい。試験をボイコットしてしまいました。八虎は心配して電話をすると、海にいるから心配なら来てよと言われます。2次試験があるから無理だと言うと、龍二は自分の殻を脱げずに上から心配するなと言い返されてしまいます。

八虎はあわてて海に向かいます。龍二は自分の裸を描いてみたみたことはあるかといい、二人とも服を脱いで自分のままを書くのでした。しかし、翌日2次試験会場に現れた八虎は、熱を出して体調を崩してしまったのです。2次試験のテーマは裸婦でした。

眞栄田郷敦の演技力もなかなかのものでしたが、注目だったのは高橋文哉。長い金髪で化粧バリバリのスカート姿で、これが実に板についています。仮面ライダー出身の高橋ですが、他の人気者になった俳優とは一味違った柔らかいイメージです。

美術という評価が難しい主観的な目標を達成するのは、なかなか難しい。ましてや、それをマンガや映画にして見せるのは大変な事だろうと思います。スポ根物と違い、どうしたら「勝利」なのかがわかりにくいのですが、そこを芸大合格というわかりやすいゴールを設定したところがうまいポイントです。ただし、どんどん上に行くだけで、挫折がほとんど表現されていないところがちょっと物足りませんでした。