「水曜どうでしょう」で有名になったTEAM NACSの兄貴分で、北海道に強いこだわりを持つ鈴井貴之の監督第3作目の映画。今回の作品では、舞台は釧路の何にも無いところにポツンと一軒あるコンビニエンス・ストアですが、俳優陣は有名どころを取り揃え、TEAM NACSは脇役にまわっています。
もともと農家をしていた北島昇一(小日向文世)は、周りからの勧めもあってコンビニを営んでいました。店のオーナーは昇一ですが、実際に店を切り盛りしているのは妻の店長・佐和子(浅田美代子)です。高校三年生の娘、由希(佐藤めぐみ)は、東京の大学への進学を考えていて、昇一だけがそれを知りません。
ある日、佐和子が交通事故にあい入院してしまいます。昇一はしかたがなく店に立つことになるのですが、勝手がよくわからず、配送の六ッ木(大泉洋)からは、新米のバイトに思われてしまうのです。夜勤馴れしている寡黙な佐藤くん(西島秀俊)に助けられ、何とか店を開けていられましたが、佐和子はこれを機会に自分はもう店には出ないと言い出すのです。
由希は、東京に出たがっていることが狭い町の中で知れ渡ってしまい、そのような環境に窮屈な想いをつのらせていきます。そして、ついに昇一の耳にも伝わってしまいますが、怒っている昇一に、由希はずっと自分に無関心だったくせにいまさらと言い放つのでした。
ストーリーとしては娘を本心から心配している不器用な父親とそのことがわからない娘を軸に、コンビニに出入りする二人を応援するたくさんの人々の小さなドラマをたくさん散りばめた群像劇のような体裁になっています。
タイトルの「銀のエンゼル」は森永製菓のチョコボールの当たりマークのこと。常連客のスナックを経営しているシングル・マザー(山口もえ)が、自分の人生の運試しとしてチョコボールの当たりを集めているところからきています。いつも昇一に買う箱を決めてもらっていましたが、佐藤くんに自分で選べばはずれでも後悔しないと言われます。
北海道の空気感みたいなものはうまく焼き付けられていますが、強いメッセージがあるわけではなく、問題を抱えた人々がちょっとだけ前を向いていけるような気になる作品というところでしょうか。大泉洋の出演作としては、主役ではありませんが、適度なユーモアを出しつつも、なかなかかっこいい態度を出すあたりは大泉カラーが確立したような感じがします。