2025年3月22日土曜日

トワイライト ささらさや (2014)

加納朋子によるファンタジー小説が原作。監督は深川栄洋、脚本は深川と山室有紀子。夫婦愛、親子愛など家族愛をテーマにして、笑いどころはありますがキュンとくる作品になっています。

売れない落語家のユウタロウ(大泉洋)は、自分の落語を一生懸命だったからと唯一笑ってくれたサヤ(新垣結衣)と結婚し、息子のユウスケが産まれたとたんに・・・交通事故で死んでしまいます。葬儀にユウタロウからは死んだと聞かされていた父親(石橋凌)が現れ、ユウスケは引き取ると言い出します。

この世の未練、サヤのことが心配でたまらないユウタロウの霊は、師匠(小松政夫)に乗り移って、サヤにここからユウスケを連れて逃げろと言うのです。サヤはとにかく、かつて世話になっていた佐々良にある亡き叔母の家に身を寄せます。

ユウタロウは、近所の認知症を装っているお夏(富司純子)に乗り移りますが、一人に1回しか乗り移れないらしいと話します。そして、乗り移れるのはユウタロウの気配を感じることができる者だけで、乗り移られたものはアレルギーが出てしまうので長くは乗り移れない。

それ以来、お夏さん、久代(波乃久里子)、球子(藤田弓子)というおせっかいな三人お婆らに助けられる生活が始まります。そして、強気のシングルマザー、エリカとも知り合います。エリカには言葉を失った息子のダイヤ(寺田心)がいましたが、亡くなった夫は今でも近くいるという話をエリカが信じてくれないので、ユウタロウはダイヤに乗り移って事情を話し出すのです。

偶然、サヤがちょっと留守にした時に、久代の息子(つるの剛士)が泣いているユウスをあやしていました。ユウタロウの父親が差し向けた者と勘違いしたサヤは、思わず包丁を向けてしまいます。ユウタロウは、陽気でサヤに気がある駅員の佐野(中村蒼)に乗り移り何とかその場を鎮めました。

実は、この土地では佐野が乗り移れる最後の一人だったのです。ユウタロウはこれでお別れだと言うと、サヤはだからあなたの落語は独りよがりで面白くないと二人は言い合いになります。そして、それぞれの想いをぶつけ合ったことで、サヤはユウタロウの父親と会うことを決意します。しかし、やって来たユウタロウの父は、ユウスケを抱くとそのまま家の外へ逃げ出してしまうのでした。

最初に感じたのは悪者がいない作品ということ。ですから、最後まで見て泣きはあっても、安心できる仕上がりです。ガッキー初めての母親役というのも見どころです。また乗り移られた俳優さんたちの大泉洋風の演技が実に素晴らしく、特にさすが天才子役の寺田心くんには頭が下がります。

撮影で特徴的なのは、街並みなどの遠景ではティルトレンズを使ったミニチュア風撮影を多用していること。ササラという場所がファンタジーであり、リアリティを打ち消すことを目指しているようです。もっとも霊が誰かに乗り移るというのは、冒頭のユウタロウの「私はすでに死んでいます」という説明からしてフィクションなので、もしかしたら監督が意図したほどの効果は出ていないかもしれません。