「RAILWAY」は映画としてはシリーズ化されており、本作は3作目です。多くのヒット作を手掛けた製作総指揮をする阿部秀司の鉄道好きから企画されたシリーズ、一つ一つは監督も違い別々のストーリー。本作の監督・脚本は吉田康弘です。
25歳の奥薗晶(有村架純)と10歳の奥薗駿也(歸山竜成)は、東京から鹿児島の奥薗節夫(國村隼)を訪ねてきました。節夫の息子、修平(青木崇高)は東京でイラストレーターの仕事をしていましたが、妻は駿也を産むときに亡くなってしまい、男手一つで駿也を育てていたのです。たまたま知り合った家族のいない晶と再婚したものの、妊娠した晶は流産しています。
しかし、修平が突然の病で亡くなったため、晶と駿也は節夫を頼ってやってきたのでした。節夫は鹿児島のオレンジ鉄道の運転士をしていて、晶も父親譲りで鉄道好きの駿也のために運転士になることを決意します。厳しい研修を受けついに運転士免許を取得した晶でしたが、研修運転で突然飛び出してきた鹿を轢いてしまいパニックになるのです。
学校で家族について作文を発表することになった駿也は、父親との思い出ばかりを書いたため、晶に「もうお父さんには会えないんだよ」と言われ、反発して「晶ちゃんがいなくなればよかった」と口にしてしまうのでした。
運転士としての適性に悩んでいたところに、母親になろうとしている駿也の言葉にショックをうけた晶は、一人東京に戻り修平と駿也と三人でいつも来ていた鉄橋から下を走る鉄道をじっと眺めていました。そこへ駿也からきっとそこにいると教えられた節夫がやってきて、晶にどうなっても心配ないから自分で決断しなさいと優しく言うのです。
そして携帯に修平からのコールがあり、出ると駿也でした。ごめんなさいと一言いって電話が切れると、晶は着信者の名前を修平から駿也に変更して駅に走るのでした。
有村架純主演の映画としては、やや話題性が低かった印象ですが、内容はなかなか素晴らしい。比較的わかりやすい展開で、ストーリーの流れも想像しやすいのですが、少しずつ回想シーンを入れて、晶と駿也、そして節夫が新しい家族を作り上げていく様子がうまくまとめ上げられています。
有村架純の役どころもけっこう難しいもので、連れ子の駿也の母親になろうと決意する過程、全くの他人である義父であり運転士としての先輩である節夫との関係性などは今までにはないものでした。ただし、周囲をホッとさせる雰囲気と、一つの芯が通った女性を演じると言う点では、有村らしさの完成形みたいなところがあるように思います。
鉄道好きの人には、実際にある熊本・鹿児島間を走るディーゼル1両編成のオレンジ鉄道が見どころでしょう。実際に列車が走ってくるシーンでは、有村本人が運転席に座っているように見えるのですが、本当のところはどうなんでしょう。