原作は中田永一の小説ですが、もともとは歌手、アンジェラ・アキのヒット曲「手紙 -拝啓 十五の君へ」に基づくドキュメンタリーがベースになっています。この曲は、もともと2008年のNHK全国学校音楽コンクールの中学生の部の課題曲と書き下ろされたもので、「15歳の自分が書いた未来の自分への手紙」によって今を生きていくことの意味を考えるというもの。
監督は三木孝浩、共同脚本は持地佑季子と登米裕一です。主演は新垣結衣ですが、ずっと心を閉ざし笑い顔が無いという役柄は、まず他では見られません。撮影は五島列島を中心とした長崎県で行われ、新垣はピアノ、合唱部員は合唱の特訓を受けて実際に歌唱に臨みました。
合唱部の面倒を見ていた松山ハルコ先生(木村文乃、)が産休に入るため、ハルコの友人の柏木ユリ(新垣結衣)が臨時教員として島の中学に着任します。ユリは将来が期待されたピアニストでしたが、恋人が交通事故で亡くなってから、その責任を重く受け止めピアノが弾けなくなってしまったのです。
合唱部員の仲村ナズナは、早くに母を亡くし父親は愛人といなくなっていました。そんなナズナのことを気にかけているのは向井ケイスケ。桑原サトルは、兄が自閉症だから自分が生まれたと思い、兄に対する責任を重く受け止めているのでした。
最初は、女子部員と男子部員が対立したり、ユリの突き放したような態度によってばらばらでしたが、ハルコからの宿題だった「15年後の自分に手紙をかくこと」を実践し、ユリも過去の中学の時の文集で15年前の自分の文章を読んで、少しずつお互いを理解し始めます。そして、いよいよコンクールの当日となり、それぞれが様々な思いを持って課題曲の挑もうとしていました。
けして奇をてらった展開は無く、普通と言えば普通なんですが、逆にこの手の映画では見ている者の想像通りに進むことでがっかりさせないことが大事。そういう意味ではお手本みたいな映画です。否が応にも感動してしまいますし、気を許していると泣いちゃうかもしれません。