CSチャンネルであるフジテレビNEXTで深夜に放送されたもので、台本は数日前に渡されていたようですが、収録当日の本番12時間前に集合、衣装合わせ、番宣取材、読み合わせ、リハーサルをこなし、一発勝負のノーカットの1時間のコメディを演じるという・・・
こんなバカなこを考えた張本人は福田雄一と知れば、あーなるほどと納得です。福田雄一が脚本・演出を担当し、隣接する3つのセットをナックスの5人が2~3役をこなしながら走り回るのです。しかも観覧する一般客をスタジオに入れて、緊張を煽っています。そんなドタバタの中で、少しでも"perfect"を目指すということ。
右端の「銀行の前の道」セットからスタート。銀行強盗による立てこもり事件が発生したため、現場には吉岡刑事(森崎博之)と三鷹刑事(音尾琢真)がいて、そこへ立花巡査(大泉洋)と富田巡査(安田顕)が集まり、4人だけで突入する計画を打ち合わせます。
そして作戦開始となって真ん中の「銀行内」のセットに移動。強盗のリーダーブラック(戸次重幸)がピストルを持って人質を脅かしています。ブラックは仲間のピンク(音尾)に、逃亡用のヘリコプターを用意するように警察に伝えさせます。人質の支店長(森崎)は縛られて身動きがとれない。さらに仲間のテンパ(大泉)とホワイト(安田)も加わります。
その頃、左端の「演芸場控室」セットでは、相方が現れずに困っている芸人・水本(音尾)がいて、マネージャー女史の重田(戸次)は、こうなったらそこで掃除をしているおじさん(大泉)を相方にしたらと提案します。ピン芸人のヤマダヤマダ(森崎)が入って来て、困っているなら俺とコンビを組もう、なんならおじさんも入れてトリオでやろうと言い出します。
その頃、「銀行の前の道」にはブラックの両親(安田・戸次)が到着して、吉岡・立花に頼まれて犯人を説得し始めますがうまくいかない。水本はテレビで立てこもりのニュースを見て、現場に相方がいるのを発見し、警察官の格好をしていた富田を連れて行ってしまいます。
「銀行内」や「演芸場控室」では、いろいろ動きがありますが、結局、「銀行内」に戻って、犯人の中に潜入捜査官がいるということになる。ピンクが警察官であることがバレてしまいブラックが拳銃を撃とうとしたとき、ホワイトが俺も潜入警察官だといいブラックに銃口を向けたため、ブラックとテンパは逃げ出すのです。「演芸場控室」では、富田を連れ戻した水本が重田の前でネタを披露するのでした。
このあらすじだけでもわかると思いますが、1時間の間にナックスの5人は裏に引っ込んで大急ぎで着替えて次のセットに何度も登場するというかなりの忙しさです。当然、間に合わないときもあり、着替えの途中で登場を余儀なくされたりもします。
そもそも、当然のことながら台本が頭に入っていない。ところどころで、言い間違えたり台詞が出てこないという事態が発生しますが、何とかアドリブで乗り切れたところもあれば、完全に真っ白になってしまうところもある。そもそも、最初の突入計画の説明では、全員が計画書という名目で台本のコピーを手に持っていたり、台本を持ったままセットに登場したりするという失態ぶりです。
さすがに、笑うに笑えない部分もあって、こればかりはナックスの責任というのは忍びない。やはり福田雄一の悪ふざけの度が過ぎると言わざるを得ない。福田は映画だとふざけすぎ傾向があり、テレビでは比較的ギャグをおさえているんですが、これはCSということでやりたい放題ということでしょうか。
しっかり準備して稽古を積んだ舞台をこなしてきたTEAM NACSですが、さすがに1日では"perfect"というわけにはいきません。それでも、アドリブ力の強さでかろうじてドラマを成立させたと褒めておきたいところですが、彼らにとっては悪夢のような時間だったかもしれません。