2025年8月26日火曜日

ミハル (2003)

TEAM NACSの本公演は、1996年から始まり2021年までに17回を数えています。一般にDVD等で入手して視聴可能なのは2004年の第10回「LOOSER」からで、それ以前のものは基本的に見ることはできない・・・のですが、ナックス沼にはまった方は、是非にも見たいものだと思うかも、いや思うはず。

1996年の第1回は解散公演とされ、森崎博之・安田顕の大学卒業・就職記念としてTEAM NACSの旗揚げと同時に解散するものでした。1997年の第2回は、演劇の夢を捨てきれなかった森崎・安田が戻って来た復活公演です。

そして1998年の第3回公演からは、彼らはアマチュアからの卒業を決意し、舞台の様子は撮影・編集され、ビデオ(VHS)として限定的に販売するようになります。今やネット時代となり、それらのビデオテープの映像は動画配信サイトで運が良ければ見つけることが出来るかもしれません。

さて、第9回公演となったのは脚本・演出が戸次重幸による「ミハル」でした。

暗い舞台の中にスポットライトで浮かび上がる二人の男。一人はしゃがみこみ、もう一人は拳銃を相手の頭に向けています。全体の照明が点灯すると、そこはホテルの一室。ピンポンと音がして、ホテルのベルボーイの小宮(戸次重幸)が入ってくると、目の前の光景に動転し興奮して電話にかけより110番にかける。すると拳銃を構えていた安藤(音尾琢真)の携帯につながり、二人が刑事でありもう一人は後輩の岡田(大泉洋)と判明します。

安藤は匂いで相手の嘘を見抜く力があり、岡田は痛みの刺激で相手の過去の記憶を読み取る力があるという。岡田は小宮があまりに疑うので、小学校の時に好きな女の子の縦笛を盗んで今でも大事にしていることを読み取って驚かせます。

そこに撮影日を間違えたカリスマAV男優のキノコ山本(安田顕)が登場します。さらに売れない小説家でドラマの脚本を書くためにホテルに缶詰めになっていた長峰源五郎(森崎博之)も入って来て、やたらと刑事たちにちよっかいを出すのです。山本は実は引退した殺し屋、長峰はかつて恋人を殺した過去があることが明らかになります。

3か月前に、警察に突入された3人の実行犯が人質全員を殺害するという銀行強盗事件が発生しました。その場を指揮を執ったのは安藤で、彼は発砲許可が出る前に犯人を射殺したのです。安藤は幼い時に目の前で強盗に家族を殺された過去があり、犯人が生きて捕まっても遺族の苦しみが減るわけでは無いと考えていたのです。

銀行強盗事件では1億5千万円が消えていて、重傷を負った唯一の生存者である警備員の田中を怪しむ安藤は、彼を監視するためにこのホテルに滞在していたのでした。

高低差の無い一室を舞台にしたシチュエイション・コメディですが、戸次作品でもメンバーそれぞれのキャラクターを生かした配役とギャグがさく裂します。タイトルの「ミハル」は女性名ではなく、向かいの建物にいる容疑者を「見張る」という意味。

出だしは爆笑の嵐で、少しずつシリアスな展開となり、緊張感が途切れずにラストまでもっていく構成はなかなかよく出来ている作品だと思います。後年の「悪童」につながるような舞台で、一人一役でわかりやすいと思います。

特殊能力で過去のトラウマをあぶり出すというのはやや安易なところがあり、本来はしっかりと台詞と演技で少しずつ明らかにしていくべきかもしれません。ただし、上演時間の節約と笑いを取るネタとして機能しているので、TEAM NACSの作品としてはありなのかもしれません。