これは若い人にはタイトルの意味がわからんかもしれない。エレキは電気のエレキですが、60年代にアメリカのベンチャーズの人気から日本でも大流行したエレキギター(電気ギター)のことで、今のバンドブームの元祖と言えるものを巻き起こしました。若大将というのは読んで字の如しですが、今でも若大将と言えば加山雄三の代名詞。
東宝は若手の中で加山雄三の溌剌としたイメージを利用して、若大将シリーズの映画をたくさん作りました。テレビがそれほど娯楽として定着していない時代ですから、一度ヒットした映画はシリーズ化されるのが恒例で、例えば松竹の「男はつらいよ」シリーズとか、東映の任侠ものなどは新作をほぼ年に2本ペースで公開していました。
加山雄三は昭和の大スター、上原謙の息子で、慶応ボーイです。大学卒業と同時に東宝で1960年に俳優デヴュー、翌1961年には早くも「大学の若大将」が作られシリーズ化しました。1962年の黒澤明の「椿三十郎」では若侍の一人でしたが、1965年の「赤ひげ」では三船敏郎に絡む準主役に抜擢されています。
主人公のニックネームが若大将で、悪友は青大将と呼ばれ田中邦衛が演じています。シリーズ前半は若大将は大学生で、マドンナ役は星百合子。後半は社会人になってマドンナは酒井和歌子に代わります。父親は有島一郎、祖母が飯田蝶子、妹が中真千子、若大将をサポートする友人が江原達治といった面々がレギュラー出演しました。
この頃の映画シリーズは、どれもはっきり言って同じ構成。ワンパターンですが、観客もむしろ予定調和を期待して楽しんていたと言えます。若大将シリーズは、女性にもてて何でもスマートにこなすスポーツ(A)万能な若大将が、清純な女性とひょんなきっかけ(B)で知り合いお互いに惹かれていきます。金持ちのボンボンでずるがしこい悪友が邪魔してトラブル(C)になりますが、最後に主人公は颯爽と解決(D)してめでたしめでたしというのがお決まりになっています。
この映画では(A)がアメリカン・フットボール、(B)がエレキ・ギター合戦、(C)が青大将のインチキと父親の店の倒産、そして(D)はレコード大ヒットと試合の勝利という具合にはめ込むとあらすじが完成。キーワードを変えるだけで、全部のあらすじは簡単に説明できてしまう。
シリーズ物は、映画製作各社が観客がさすがに飽きたというまで続けるのですが、若大将シリーズの場合アイドル映画の側面があるので、演じる加山雄三が年を取るにつれて設定に無理が増えてしまいました。それでも、高度成長期の日本人の代表的な娯楽の一つとして十二分に役割を果たしたと言えます。
特に本作は、実際に作品中で歌われた「君といつまでも」が大ヒットし、歌手・加山雄三の代名詞になったことで、シリーズの最高傑作にあげられることがよくあります。今の感覚ではおかしな部分はたくさんありますが、チャンスがあれば見て損はありません。