TEAM NACSにとっては、第15回となる本公演。
それにしても気がついたのは、「COMPOSER ~響き続ける旋律の調べ (2005)」以降は全国を回って「ツアー」をしていて、数年ごとに約60ステージをこなしているわけですが、誰も病気したり怪我して休むことが無いというのが凄い。基本的に5人という少ない人数の演劇集団で、しかも一人で何役もこなしたりするので、一人欠けたら休演するしかありません。
今回の「悪童」では、TEAM NACSはまた新たな挑戦をしています。前作「WARRIOR~唄い続ける侍ロマン(2012)」では、原案はリーダー森崎ですが、初めて外部の脚本家を入れました。そして、今作では脚本は映画「探偵はBARにいる」シリーズ、テレビ「リーガルハイ」、「コンフィデンスマンJP」などで大人気の古沢良太にオリジナル脚本を依頼、さらに演出は俳優としても活躍しているマギーに依頼しました。
マギーはTEAM NACSに先駆けて6人組の演劇ユニット、ジョビジョバを主宰しており、学生だったTEAM NACSメンバーも憧れる存在だったようです。完全に外部の脚本・演出を入れたことで、メンバーの負担が軽減し、演技に集中できたことは大きい。また演技を客観的に指導されることも、彼らの新しい魅力を引き出すことに役立ったようです。
今や廃墟となり明日から取り壊しが決まっているレジャー施設、竜宮に吉村雄太郎、通称チャック(戸次重幸)が立てこもりました。中学校の卓球部でチャックと仲間だった市役所職員の西崎直樹、通称ニシ(音尾琢真)は説得するため廃墟に入りましたが、チャックは部長の紺野治、通称コンちゃん(森崎博之)、幽霊部員だった江口幸一、通称エロっち(大泉洋)、副部長の巻光博(安田顕)、そして転校してしまった左和哉、通称とん平を連れてこいと言うのでした。
チャックはとん平以外の集まった4人に理由を説明します。皆、この竜宮で楽しそうに遊んでいたが、存在感の薄い自分は母親からも禁止されていたため来たことが無い。卒業したら皆で一緒に遊びに来ると約束してくれたがいまだにその約束が果たされていない。自分は病気になって明日をも知らぬ体なので、今日はあの時の約束を守って、一緒に遊んでもらいたいというのでした。
皆がそんなことに付き合えるかと言い出すのですが、チャックは誰だってやりたかったことがあるはずだと言うので、一人一人が当時を思い出していくのです。そして、コンちゃんの口から、とん平が転校したのは飛び降り自殺未遂のせいだったことが語られます。コンちゃんは、病院で飛び降りた原因は卓球部の仲間のせいだけど、それが誰かは詮索しないでほしいと言われたというのです。
話をしていくうちに、それぞれの悪行が明らかになっていきます。とん平からお金を巻き上げていたエロっち、ゲームでからかっていたチャック、ごみクズと呼んで厳しく当たっていた巻、それを見て見ぬふりをしていたコンちゃん、そして幼馴染だったとん平をそんな過酷な環境に仲間入りさせてしまったニシ。話しているうちに、全員がとん平が辛い思いをする原因を持っていることがわかるのです。
一人一役で、それぞれのキャラクターを作り上げていく会話劇というスタイルは、TEAM NACSとしては初めての試みです。セルフ・プロデュースではないのでギャグは少な目なので、TEAM NACSらしさが物足りないと感じるかもしれませんが、トータルとしての面白さは彼らならではのものだと思います。
しだいに見えてくる事柄が真実なのか否かという、ある種のサスペンスがとても面白い。このあたりのパズルは、さすがの古沢良太の面目躍如というところでしょう。古沢も「スタンド・バイ・ミー」のように事件が起こっても結局たいしたことではなかったというスタイルを目指したそうで、ちょっとしたことが小さなどんでん返しを何度も起こすうちに大きな山崩れになりそうな一歩手前で大どんでん返しをします。
いずれにしても、結成して20年近くなろうという彼らの、いまだに新しい一面を見ることができることは興味深い。また、年月がたったからこそ、それを可能としている彼らの貪欲さには驚かされる。5人だからこそできる、5人でないとできない芝居はまだまだ尽きることはなさそうです。
ちなみに、「CUE DREAM JAMBOREE 2016」では、大泉洋脚本による「悪童 Episode 0」が演じられています。登場人物の中学校時代、本公演で語られた卓球部員だった時の「思い出」を中心としたストーリーと立て籠もり事件から5年後を組み合わせた内容です。ただし、これはあくまでもお遊びなので、見ないと困るというほどのものではありません。