TEAM NACSは、大学の演劇研究会の仲間5人組で結成され、1996年に旗揚げ公演を行いました。2005年まではほぼ毎年新しいステージを行っていましたが、全国を回るようになって毎年というのは無理が出てきました。以後は2~3年毎の公演日程が組まれるようになって、ついに結成25周年となる記念すべき2021年に第17回本公演を迎えることになりました。
しかし、2000年初頭から始まったコロナ禍は、エンタメ業界には大きな影響を及ぼし、多くの舞台やコンサートが開催目前で中止せざるを得ないことになりました。この本公演も、少なくとも2年前には計画が始まり、各地の会場をおさえたりしていたはずなので、メンバーおよび関係者は本当に開催できるのか本当に心配したことでしょう。
幸い文化・芸能活動の自粛は2021年2月に一定の条件下で解除され、3月初めに稽古が開始されました。何度も何度もPCR検査を行い安全を確認しつつ、4月5日の初日から6月6日の千秋楽までメンバー、スタッフ、そして観客に何事もなく駆け抜けたことは、ある意味賞賛に値するものだったのかもしれません。
成功の理由の一つとしては、今回は出演者はメンバー5人だけの会話劇だったこともあるかもしれません。脚本は、自身も俳優として活躍し映画・テレビの脚本を手掛けている喜安浩平に依頼され、「悪童」の時に関わったマギーが2度目の演出を行いました。昭和20年代後半の熱海の旅館を舞台に、TEAM NACSとしては得意なジャンルのコメディに仕上げられ、暗い雰囲気が覆う時勢に元気を届けられたのかもしれません。
昭和27年の年末に、熱海の温泉宿に新作映画の脚本を執筆するために、温泉を楽しむだけでなかなか筆が進まない諸澤(森崎博之)、ベテランだが不運にも関係した映画が完成したことが無い乙骨(安田顕)、真面目で恋愛経験の乏して灰島(大泉洋)、そして彼らのお目付け役としてプロデューサー見習いの茶山(戸次重幸)が集まりました。
彼らは恋愛物の時代劇を共同執筆しなければならないのですが、一向にアイデアが浮かばない。以前俳優を志しましたがあきらめて旅館の風呂番になった猫屋(音尾琢真)は、彼らの仕事がはかどるように協力(邪魔?)をするのでした。
灰田は、協力的な旅館の女中のアキ(安田顕)に、できたところまでの読み合わせなどを手伝ってもらううちに、しだいに惹かれていきます。大晦日になって、茶山の元に1月3日までに脚本ができないならこの企画は中止するという電報が着ます。
ちょうど同じ旅館の離れにも、同じように籠り切りで姿を見せない同業者がいることに気がつきます。それが偶然に「羅生門」で成功を収めた黒澤明監督であることがわかり、彼らは俄然負けていられないとはりきる・・・のですが、やはりいつまでたっても終わりが見えてこないのです。
メンバーは主たる配役以外に全員女中としても登場しますが、同時にステージにいることができないことが笑いどころになっています。主役は大泉洋ですが、自分の恋愛感情と書いている脚本の内容が少しずつリンクしていくところが本題と言えそうです。そして相変わらず驚愕の演技を見せるのが安田顕で、今回は主演女優賞を差し上げたいくらいです。特に何か仕掛けでもあるのか疑いたくなる女声は驚くしかありません。
随所に黒澤監督に対するオマージュが散りばめられていますが、コミカルな場面としっとりした場面のバランスが良いのは脚本・演出の賜物。途中で全員で枕投げをするところで、ほとんど本気で投げ合っているのは、まさにTEAM NACSらしさ全開で嬉しくなりました。