自分の少年時代・・・って、まぁ半世紀以上も昔の事ですが、こども向けの月刊誌といえば「少年」とか「冒険王」、週刊誌といえば「少年マガジン」、「少年サンデー」、そして「少年キング」の5つが定番でした。いまだに「マガジン」、「サンデー」が生き残っていることは驚異的なことかもしれませんが、当時からキングは三番手に甘んじていた印象で70年代末には自然消滅した印象です。
でも少年キングで最大のヒット作は何? と聞かれれば、望月三起也の「ワイルド7」と答える人は多いのではないかと思います。ロボット、アンドロイド、宇宙人、未来人などなどの超人的な主人公が活躍するマンガばかりの時代に、現代人が悪を退治する活躍をするのですから、まさに「痛快」なアクション物として人気を博しました。
それが映画になったというだけで、大人になったかつての少年としてはワクワクする気持ちはあるのですが、正直に言えば今の時代にそのまま持ってきても「どうなの?」という不安もかなりあります。監督は「海猿」や「暗殺教室」の羽住英一郎、脚本は2時間ドラマ専門みたいな深沢正樹です。
ワイルド7は、草波警視正(中井貴一)が犯罪者の中から選抜した「悪をもって悪を征する」ことを目的とした特殊な警察組織で、通常の警察が手を焼く凶悪犯を「抹殺」することを使命としています。隊員は飛葉(瑛太)、セカイ(椎名桔平)、パイロウ(丸山隆平)、ソックス(阿部力)、オヤブン(宇梶剛士)、ヘボピー(平山祐介)、BBQ(松本実)の7人。
新聞記者の藤堂(要潤)は、超法規的な行動する警察が存在する噂を追いかけていて、新人記者の岩下こずえ(本仮屋ユイカ)と取材を続けていました。テロリストのM108号が国家が秘密裏に開発していた細菌兵器を奪い、東京にばらまくと脅迫してくる事件が発生し、藤堂らも事件に関わっていくことになります。
解決を委ねられた草波は公安調査庁情報機関、通称PSUに出向き最高統括者である桐生(吉田鋼太郎)に協力を頼みます。PSUでは、国民一人一人の個人情報をすべて把握していて、膨大なカメラによってその行動すらリアルタイムに監視することが可能でした。PSUの協力で犯人グループを追い詰めたワイルド7でしたが、何者かによって犯人が射殺されてしまいます。
飛葉に接触してきた本間ユキ(深田恭子)は、両親の復讐としてM108号を追いかけ、すでに何人かを処刑していて今回の射殺のユキの仕業だったのです。飛葉はもう復讐はやめるように強く説得しますが、ユキはあきらめません。
草波は、PSUが今回の細菌兵器強奪事件の初動を遅らせるため、意図的に報告をしていなかった疑いを持ちます。そしてその間隙に桐生が株取引で大きな利益を上げていること、そしてこれまでにも同じような事案が何度もあることを突きとめました。草波に知られた桐生は、ワイルド7を凶悪犯罪集団に仕立て上げ世間に公開し、その首謀者として草波を逮捕させるのでした。地下に潜ったワイルド7のメンバーは、PSUとの対決を決意するのでした。
・・・まぁ、よくある感じのストーリーです。見かけは悪でも実は正義のワイルド7と見かけは正義ですが実態は悪という桐生・・・なんですが、PSUという組織全体ならともかく悪役が桐生一人で、その動機も私利私欲という設定はショボい。巨悪に挑むみたいな映画にするだけのモチベーションが感じにくい。
主役瑛太はそれなりにかっこいいんですが、見た目はともかくやはり原作の飛葉との印象が違うように思います。それにもまして、ワイルド7というばバイクを中心としたカーアクションなんですが、最初の紹介エピソードとPSU突入くらいで、ほとんどが人間アクションになっているのも今一つピンと来ないポイントになってしまいました。
最大の原因は、最大の見せ場で相手がPSUをガードする正規の警官隊というところにありそうです。問答無用で悪を退治するのがワイルド7の醍醐味なんですが、警察官を退治するわけにいかないのでなんともむず痒い感じです。まぁ、峰不二子ばりの深キョンのわずかな活躍だけが見所かもしれません。