2025年10月19日日曜日

グランメゾン★パリ (2024)


2025年正月映画として公開された映画ですが、もともとは2019年放送のTBS日曜劇場で放送された「グランメゾン★東京」の完結編にあたります。ドラマ版から通じて、脚本は黒岩勉、監督は塚原あゆ子が担当しました。2024年の塚原は、映画では「ラストマイル」、テレビで「海に眠るダイヤモンド」があり快進撃の1年になりました。

パリでミシュラン三ツ星レストランを目指していた尾花夏樹(木村拓哉)は、トラブルから夢破れた生活をしていましたが、絶対的な味覚の持ち主である早見倫子(鈴木京香)と出会ったことで、倫子をオーナーシェフとした「グランメゾン★東京」をオープンし、倫子に三ツ星を取らせるため奮闘するというのが、ドラマ版の骨格でした。

グランメゾン★東京が三ツ星を獲得したことで、ドラマにおける目的を達成した夏樹は表舞台を去っていくわけですが、夏樹自身の夢はまだ達成できていません。

映画公開前の2024年クリスマスイブに、単発のスペシャル・ドラマが同じスタッフ・キャストで放送され、コロナ禍で経営が苦しくなったグランメゾン★東京に対して、夏樹が「グランメゾン★東京を終わらせるため」に京都に店を開き挑んできました。これは倫子を奮い立たせるためのものだったわけで、そのことに成功した夏樹は再び自分の夢を叶えるためにパリに旅立つという内容となっています。

さて映画は、尾花夏樹がパリの料理界の重鎮から見込まれて開店した「グランメゾン★パリ」が獲得した二つ星を維持できたところから始まります。つまり、開店してから最低2年は経過していることになりますが、当然三ツ星を目指している夏樹は満足できません。

夏樹を支えるスタッフは、倫子をはじめ、昔からの理解者、京野陸太郎(沢村一樹)、相沢瓶人(及川光博)らに加え、バリで三ツ星のバティシエを夢見る韓国人のユアン(オク・テギョン)、移民で集まったいろいろな国の人々でした。

いまだに外国人という理由で食材の調達にも苦労している状況で、ついにオーナーから立ち退きを迫られることになります。三ツ星を取ることを条件に、立ち退きを引き延ばした夏樹は、自分のルーツを封印して徹底的にフランス人が好むフランス料理を並べようとしますが、ユアンの借金の取り立てによる暴力事件が発生し窮地に立たせられるのでした。

それでも、スタッフ全員が夏樹に三ツ星を取ってもらいたくて頑張っていることをあらためて知った夏樹は、スタッフそれぞれの国のアイデアを生かして、さらなる革新を加えていくのがフランス料理の神髄であることに気がつくのです。

当然流れから結末は容易に想像がつくわけですが、ドラマ版で濃厚な駆け引きを見ているので、2時間の映画に落とし込むには時間が少なすぎるような感じがします。もっとも、東京と同じことをパリでやっても二番煎じになってしまうだけですから、製作陣としてはその辺りが一番苦労したところなのかもしれません。

そして、舞台がパリで、ほぼ全編に渡ってフランス・ロケとなっているのは、見応えがある一方で、セリフの大半がフランス語、時に韓国語というのがやや観客のハードルを上げているように思います。これらは当然強制字幕になるので、始まってしばらくはセリフを読むのが精一杯で、登場人物の心情を感じ取るのを難しくしているのではないでしょうか。

ドラマを知っている者からすると、その辺りがややモヤモヤすることになるのですが、初めて映画から入る者にとっても、人間関係の説明は全く無いので「いつものキムタク・ストーリー」以上にはならないという、なんとも悩み深い作品になっているという感想を持ちました。

ドラマ終了直後に、小林圭氏が実際にフランスで三ツ星を獲得したことがニュースになり、しかも5年間それを維持しているという偉業を続けています。映画では彼が料理監修を行い、登場する料理は画面からも素晴らしい味や匂いが伝わるような撮影・編集がされているところは拍手喝采もので、これだけでも見る価値はあります。