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2007年4月10日火曜日

くだける腰~ぎっくり・びっくり・動けない

その瞬間、腰の力が抜けて崩れるようにその場にへたりこむ。立とうにも力が入らず、無理に動こうとすれば、腰の周囲に激痛が走る。そして動けずに、ただただじっとしているだけで、時間が一秒一秒を確認しながらのように過ぎ去っていくのであった。

あなたは、ギックリ腰になったことがありますか。あれは辛いですよ。正しくは急性腰痛症と云いますが、いくつかの発症原因のどれかによって、急激な腰痛が生じる症候群なのです。予想もしない時に急激な激痛で身動きが取れ無くなりますから、本当に辛いものです。普通は、中腰や前屈みの姿勢を長くとったり、急に重たいものを持ったりしたときに生じます。

中腰や前屈みの姿勢は腰に対しては大変に負担となる姿勢なのです。ここで簡単な実験をしてみて下さい。必要なものは鉛筆一本、なければ箸でもなんでも構いません。机の上にまっすぐ鉛筆を立てて、真上から押して倒れないようにしてみて下さい。まっすぐの場合には、触れている程度のほんとに少しの力で十分に倒れないように支えていられます。ところが、すこしだけ傾けてみるとどうでしょう。今度は明らかに押していないと鉛筆は倒れてしまうでしょう。それだけ斜めの物を支えるには力がかかるということなのです。これは腰痛の予防を考えるとき、重要なヒントになるでしょう。

さて腰部椎間板ヘルニアは、ギックリ腰を起こす病気のなかでは老若男女を問わず最もポピュラーなものです。ギックリ腰と腰部椎間板ヘルニアを、ほとんど同じ意味で使っている医者もいるくらいです。動物の背骨は、ちょうど鮭缶のような形をしており、これがいくつも重なって支柱としての脊柱(せきちゅう)になっています。椎間板は背骨と背骨の間でクッションの役目をする軟らかい組織です。ヘルニアとは、体の組織が正常の位置から飛び出した状態です。椎間板ヘルニアの場合、なんらかの原因でグズグスになった椎間板が、いろいろな負担を受けて背骨と背骨の隙間からはみ出したものです。ちょうど鮭缶と鮭缶で饅頭を挟んで押したら、中のあんこが外に飛び出した様なものです。

脊柱の後方には脊髄という神経の束が頭からお尻まで通っているので、ヘルニアが後方に飛び出ると神経を圧迫して足の麻痺症状が出て来ます。こうなるともう立派な病気です。これらの変化がゆっくりと進行する場合もありますが、中には急に重たいものを持ったときに、いっきに飛び出すことも珍しくありません。麻痺症状が強い場合は、緊急的に手術治療を必要とすることがあります。

もちろん腰部椎間板ヘルニアの他にも、ギックリ腰の原因はいろいろ考えられます。背骨と椎間板がいくつも積み重なって脊柱を構成することは前に説明しましたが、これらだけでは柱としてビシっと立っているのは難しいのです。実際には柱の周囲を、いわゆる背筋と呼ばれる太いしっかりした筋肉がいくつもいくつも取り囲んで支えているのです。したがって背骨だけで支えきれない分の負担は、まわりの筋肉に対してかかってくるのです。このため筋肉への負担が大きすぎると腰部筋膜炎という状態になります。これも急性に生じればギックリ腰ということになります。この場合は真ん中の背骨の部分より、そのすぐ横(傍脊柱と云います)の方の痛みが強く、通常は神経症状は伴いません。

その他にも、背骨の老化現象の総称である変形性腰椎症、背骨の一部に亀裂が入って不安定になる腰椎分離症、上下の背骨の重なりがずれてしまう腰椎辷り症(すべりしょう)、骨が脆くなる骨粗鬆症など、多くの原疾患が考えられます。

いずれにせよ、腰痛の急性期は、一に安静、二に安静、三四も安静、五も安静です。適当な鎮痛剤を使いながら、最も楽な姿勢で横になっていることです。どれだけ安静を保てたかによって、痛みの程度や持続期間が決まってくるのです。無理に動いて病院に行くより、救急車を呼ぶか、何とか動けるならば2~3日安静にして痛みが少し楽になってから病院に行って適切な診断と治療を受けましょう。