2026年2月2日月曜日

EARTH / SEKAI NO OWARI (2010)

邦楽と呼ばれる日本の大衆音楽は、昔は演歌と歌謡曲というのが相場と決まっていました。そこに若者が支持するロカビリーから派生したグループサウンズ(GS)というバンドによる音楽が登場しますが、どちらかといえばGSは新手の歌謡曲みたいなもので、歌謡曲の衰退と共に消えていったように思います。

70年代以後はフォーク・ソングが幅を利かせ、自ら演奏者が作曲・作詞をすることが多くなり、より激しさを求めてロックが入ってくるとバンド活動が広がっていきます。しかし、ブリティッシュ・ロックの影響を強く受けたバンドは、ギター奏者が中心となるのが当たり前という固定観念が形成されていくことになりました。

一方で、反体制的な雰囲気を持っていたフォークはしだいに角が取れて、恋愛物なども歌われるようになり、それと共にバンド演奏の中に取り込まれていきます。一部ではニュー・ミュージックというような呼ばれ方もされ、ギターを中心としたアドリブで聞かせるゴリゴリのロックとの境界も不鮮明になっていったのが、今で言うJPOPなのではないかと思います。

もっとも、今ではジャニーズの台頭と共に始まるアイドル路線、EXILEグループが開拓したダンス・パフォーマンスを見せるアーティストなど、多種多様な音楽を包括した総称としてJPOPという呼び名が使われているわけで、その中身はかなり混沌としているのが現状です。

最近、JPOP界隈ではもっとも人気があるバンドはMrs.Green Appleだと思うのですが、正直、興味はありません。自分が聴きたくなるのは、曲・詩の良さは当然で、バンドとしてトータルの表現力が唯一無二の個性を感じられ、追従するバンドが真似したくても真似できないようなバンドです。

自分のアンテナにピピっとくるアーティストは多くはありませんが、10数年来注目していたのが「SEKAI NO OWARI」です。とにかく不思議なバンドで、最初に驚くのは4人組なんですが、ベースとドラム担当がいないということ。

メンバーはメインのボーカルを担当するFukase、主としてギター担当のNakajin、主としてピアノ担当のSaori、DJとマニピュレート担当のDJ LOVEの4人。曲によって、各人がいろいろな楽器も担当し、基本的なリズム・セクションはナチュラルな音源による打ち込みを利用するというもの。

音楽の基本的な安定感を生み出すリズム・セクションがいなくて、機械任せという編成はかなり不思議なので、従来の感覚からすると有りえないとなる。バンドとはこうだという固定観念に縛られれば彼らは否定される存在であり、当然本人たちも重々承知のことだろうと思います。

また、その世界観も特異的で、一言で云えば「ファンタジー」、音楽のディズニーランドみたいなところがあって、硬派な音楽愛好家からは嫌われる要因になっています。特にDJ LOVEが始終ピエロのマスクを着用して素顔を隠しているところも、アンチの攻撃対象になりやすい。しかし、ファンとアンチが明確に対立するということは、それだけ個性が際立っているからで、それを突き進める力がある証明だと思います。

メンバーは全員東京都大田区の出身で(Saoriだけ生まれは大阪)、幼稚園から高校までずっと幼馴染という、最早家族よりも家族らしいと言っても良いような関係。20歳になって、音楽活動に集中するようになり、驚くことに2006年に自分たちの手作りでライブハウス「club EARTH」を開設します。

2010年にインディーズ・デヴューし、デヴュー曲の「幻の命」が評価され、第2弾シングルの「天使と悪魔」はテレビドラマ主題歌になりました。2011年にメジャーデヴューし、11月には早くも武道館でのワンマン・ライブを成功させ、「スターライトパレード」の大ヒットで世間に一躍名を知られるようになりました。

SEKAI NO OWARIの最大の魅力は、何と言ってもFukaseのボーカルだろうと思います。ビブラートを用いずに、高音域でも伸びやかな透明感のある歌声は、たいへん耳馴染みが良いと感じます。perfumeでも多用されるボーカルに対するエフェクターを、Fukaseもけっこうな頻度で利用していますが、使用する理由は不明。ファンタジー感を強める効果がある一方で、ある意味、DJ LOVEのピエロマスクと同じようなところで、もしかしたら根源的な劣等感みたいなものがさせているのかもしれません。

2010年にインディーズから発売された最初のアルバムは「Earth」というタイトルで、全7曲、40分足らずのものですが、すでに彼らの個性が爆発した内容になっていて、バンドとしての完成度の高さは驚くほどです。まさに、「SEKAI NO OWARI」の世界の始まりにようこそという感じです。