
Charlie Parkerらの登場により、白人のためのダンス音楽であった黒人の音楽は聴かせるための音楽、バップとして急成長をとげた。
Parkerの愛弟子であったMiles Davisは、さらにアドリブに重点をおいて、より緊張感のあるハードバップの火をつけたのだ。
しかし、Milesはきっかけでしかなく、そこから触発されて数多くのミュージシャンが音楽をより濃厚に磨き上げていったのだ。
その母体となったレコード会社はいろいろあるが、その中でもBlue Noteは群を抜いていた。数多くのミュージシャンの傑作と呼ばれるアルバムを量産し、またそのちょっと丸みのある独特のサウンドは、完全にレーベルの個性となっていった。
Art BlakeyはJazz Messengersというグルーブを結成し、怒濤の進撃を開始した。もともと、強力なドラミングとアフリカゆずりの複雑なリズムを刻むことがBlakeyの信条ではあるが、一方ソロイストに反応してあおっていくドラムは天才的で、アドリブがさらに熱を帯びていく様はまさにハードバップの顔とも言える。
Moanin'は、Blue Noteの栄光の歴史の中でも十指に入る名盤として今もなお輝いている。
かつてジャズ喫茶ではかからぬ日はないくらいの人気で、最初のタイトル曲が始まると、もうこの単純なブルースがジャズのフィーリングのすべてを語っているかのようであった。
Drum Thunder SuiteはBlakeyの独壇場で、さまざまなリズムの嵐が次から次へと飛び出し、聴く者を熱狂させるのだった。
しかし、このアルバムはあまりに有名になりすぎ、ジャズを少し聞きかじった者からはかえってうとまれたものだった。
かれらは、他のジャズのレコードのことは知らないのに、Moanin'がいいと言ってのりのりになっているファンを「Moanin'おじさん」などと称してバカにしたものだった。最後のBlues Marchのやたらと明るい曲調もさげすむ材料になっていたようだ。
しかし、確かにここには時代の空気が凝縮されている。ジャズが最もジャズらしく元気だった頃の名盤として、しっかりと記憶に残すべきレコードなのである。