2007年7月28日土曜日

自分の実践する医療のスタンス

セカンド・オピニオンについて書いていて、この事にもふれたくなったので、だいぶ話が堅くなりますがしばしご辛抱を。
自分は東海大学医学部の卒業で、あまり深く考えずに母校に残り研修をしてきました。その中で、「塩化カリウム事件」と遭遇しました。平成3年、助手に採用された年のことです。この事件を起こした医師は間接的に知っていたので、大きな衝撃でした。大学は全体の職員を体育館に集め何回もミーティングを行い、この事件から学ばねばならないことを必死に模索し、インフォームド・コンセントの重要性を答えの一つにしました。インフォームド・コンセントという言葉は、やっと使われるようになったばかりで、一般の方にはまだ知られていなかったと思います。
平成12年に東海大学を辞して、東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターへ移りましたが、平成14年に女子医でも事件が起こりました。死亡事故に対してのカルテ改ざんです。たまたま教員の研修会に参加することになっていたところでしたので、ここでもミーティングが行われました。やはり、ここでの答えのひとつはインフォームド・コンセントでした。
この二つの日本における重大な医療関係の事件の現場に居合わせたことは、自分の実践する医療のスタンスに影響を与えないわけにはいきません。特に手の外科というジャンルを主として扱っていたために、患者さんとの会話(一方通行の説明ではなく双方向であるとがこだわり)は大変重要なものと考えています。手は大変複雑な機能を必要としており、患者さんの要望通りの機能再建は大変難しく、自分が100点満点の手術だと思っても、「まだ、××ができない」という、不満を残しやすいのです。したがって、手術をする前にどこまでできて、どこからできないのかを明確にしておく必要があります。場合によっては「やっても変わらないかもしれない」、あるいは「やってみないとわからない」という話まですることがあります。もちろん、それなりの成算があるから手術をお勧めするわけですが、少なくとも手術の話をしてから一度は帰ってよく相談をして考えてきてください、と話してその場で決定しないようにしました。患者さんとの会話が30分以上かかることは普通のことでした。
二つの事件の間で、直接自分が関係する一つの出来事が、今でも忘れられません。出向して医長をしていたときですが、骨折の若い男性で治療もだいたい終わる頃に、「まだここが痛い」といって指をだされました。レントゲンを撮ってみたら指の骨折があったのです。完全な見落としでした。自分は院長にどのように対応するかを相談しました。「それは先生のミスですか?」と聞かれ、正直にそうだと答えました。院長の返答は、「ミスだというなら患者さんに謝りなさい」というものでした。謝っていいとなってかえって気持ちが楽になり、患者さんに説明して手術をさせてもらうことができました。
とにかく、患者さんとの関係を作ることが最も大切であること、そのためには限られた時間の中で最大限の会話をする努力をすることが重要だと考えています。そして、できること、できないこと、わかること、わからないことをはっきりさせていくことも忘れてはなりません。あまりまとまりのない話になってしまいましたし、偉そうなことばかり書いてもしょうがないので、今日はこの辺で・・・m(_ _)m