鎌倉 鶴岡八幡宮
これらの指針は1977年の第1回世界遺産委員会で「世界遺産条約履行のための作業指針」として決められ、時代の変化によって少しずつ変更が加えられてきています。
(1) 世界遺産登録を目指すことになったら、最初に任意でアップストリーム・プロセス (Upstream Process)と呼ばれる作業がある。暫定リストへの記載準備から登録までの全過程で、世界遺産センター及び諮問機関からの助言、能力強化の協力を得るもので、作業に不慣れな地域でも登録をしやすくする効果が期待できる。
(2) 各国の担当政府機関がUNESCO世界遺産センターへ、文化・自然遺産の候補の暫定リストを提出する。暫定リストには10年以内に登録をめざす遺産が収載され、10年を経過したものは、記載内容の妥当性や見直しが求められる。日本の場合の担当部署は、文化庁、環境省、林野庁で、関連省庁が協力し「世界遺産条約関係省庁連絡会議」を経て閣議了承されて決定される。
(3) 世界遺産条約締結国は暫定リストの中から準備が整ったもの(プレリミナリー・アセスメントを実施した遺産)を、各国の担当政府機関によって推薦する。推薦書には、資産の登録範囲と内容、それが顕著な普遍的価値 (OUV)を持つことの証明、脅威を与える要素などについてのモニタリングを含む保全関連の情報などが記載される。
(4) UNESCO世界遺産センターが推薦を受けた遺産について、諮問機関に事前調査を依頼する。原則として、自然遺産はIUCN、文化遺産はICOMOSが審査を担当する。
(5) これらの諮問機関は現地調査を行い、審査の結果を「登録」、「情報照会」、「登録延期」、「不登録」の中から勧告する。2016年以降は、審査の途中で中間報告が出されるようになり、登録を目指す遺跡の問題点の修正がしやすくなった。
(6) 世界遺産委員会で最終審議を行う登録の可否を決定する。委員は条約締結国の中から、地域のバランスを考慮して21名が選出され、任期は6年間(4年での自主的な辞任が慣例)。原則として年に1回の委員会で、新規の推薦の登録の可否、既登録遺産の保全状況の確認、危機遺産や世界遺産基金運用の検討などを行う。なお保全状態が維持に関する研修・能力開発・助言は、主としてUNESCO諮問機関のICCROMが担当している。
(7) OUVについては問題ないものの、保全計画など問題がある場合は「情報照会」となり、追加の書類提出により翌年に再審査を受けられる。OUVについて疑義がある場合は「登録延期」となり、整備した上であらためて推薦を行う。「不登録」に決定した場合は、原則としてまったく同じ内容で再び推薦することはできない。
(8) 登録された遺産は、世界遺産としての価値が維持され適切な保全が行われていることを6年ごとに報告する義務がある。登録後に、名称の変更や登録範囲の拡大・縮小が行われる場合があるが、OUVが明確に失われた場合は「登録抹消」になる。
(9) 世界遺産に登録された遺産の特性そのものを脅かす状況が発生した場合には、世界遺産委員会は、これを危機遺産リスト入りとし、国際社会に周知し、是正措置を促す。原因としては、武力紛争や戦争、地震などの自然災害、汚染、密猟、無秩序な都市化、そして無計画な観光開発などがあげられる。
実務的には、世界遺産に登録したい場合は、9月15日までに事前評価申請書を世界遺産センター事務局に提出することから始まります。申請書に問題が無ければ、センターは1か月後に諮問機関に評価依頼を行います。
諮問機関は締結国と協議しながら事前評価を行いますが、その期間は1年間で翌年の10月1日に報告書がセンターに提出されます。これは締結国にも届き、これをもとに推薦書を提出することになりますが、それは1年3か月後の2月1日までとなっています。
推薦書が提出されると、1か月後の3月1日までに再び諮問機関に現地調査を含む専門調査が依頼され、翌年1月末までに中間報告が行われます。ここで補足情報や修正が求められた場合は、締結国は2月末までに対応しないといけません。
世界遺産委員会は通常6月~7月に行われていますが、その6週間前までに諮問機関は審査結果と「登録」かそれ以外かの提言を委員会に提出します。委員会での審議を経て晴れて世界遺産登録となるのですが、事前評価申請から登録までは何と最短で4年弱の期間を要することになります。登録決定の報を知らされると、待ちに待った関係者が大喜びするのも仕方がないのかもしれません。
参考
日本の暫定遺産リスト
古都鎌倉の寺院・寺社など(平成4年~)
古都鎌倉の寺院・寺社など(平成4年~)
彦根城(平成4年~)
平泉 - 仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群(拡張) (平成24年~)
過去に登録抹消になった遺産
オマーン アラビアオリックスの保護区 新たに地域開発による
ドイツ ドレスデン・エルベ渓谷 景観を損ねる橋の建設による
イギリス 海商都市リヴァプール 街の再開発による
イギリス 海商都市リヴァプール 街の再開発による













