重い。この映画を見た、率直な感想は「重い」です。自分も医療関係者、医師ですから、この映画を単なるエンターテイメント作品として見ることはできませんでした。
映画全体が、最初から最後まで重苦しい雰囲気の中で進行するので、一般の方には辛い作品だと思います。ですから、そういう「重い」部分もあるのですが、やはり登場する医師たちにものすごく共感してしまう部分が重くのしかかってくるのです。
これは日本における新型コロナウイルス(COVID-19)感染症のパンデミックのきっかけとなった、2020年1月末に豪華クルーズ船であるダイアモンド・プリンセス号の乗客にCOVID-19感染者がいることが判明し、2月3日に横浜港に停泊後、全乗船者が下船した3月1日までの事実に基づいた一部フィクションを交えたセミ・ドキュメントと言える映画です。
監督の関根光才は、MV制作から出できて社会問題にもかかわる人物。脚本は「コードブルー」の製作にも携わった増本淳で、福島第一原子力発電所事故を丁寧に扱った「THE DAYS」でも制作・脚本を担当しました。
新型感染者の発生により、多くの病院が尻込みする中、神奈川県は神奈川DMAT(災害派遣医療チーム)に船内での救護活動を要請しました。DMATの指揮官、結城(小栗旬)は、DMATの専門が感染症ではないことは承知した上で、目の前の命の危険がある人々を救いたいという思いから引き受けます。
船内に入って実質的な医療行為を行うのは医師の仙道(室塚陽介)、真田(池松壮亮)らで、結城は主に神奈川県庁から多くの交渉事を一手に行っていました。厚生労働省からは立松(松坂桃李)が派遣され、このウイルスを国内に持ち込ませないことを第一の使命と考えていました。
はじめは結城と立松はぶつかることがありましたが、何の保証もなく自分たちも感染する危険の中で必死に活動するDMATを見るうちに、立松は国としてのルールよりも今現場が必要としていることに出来る限り協力する姿勢を見せ始めるのです。
そんな中で、感染症専門家と称する六合(吹越満)が、船内を訪れ専門家ではないDMATが不適切な感染対策をしているという動画をネットに上げたことで、DMATの隊員たちの中に動揺が広がります。職場から批判されたり、中には、家族が差別を受けたりする者もいて、船内の活動に従事できるスタッフが激減してしまうのです。しかし、結城も仙道も今は反論している時ではないと考えていました。
初めは厚労省やDMATの仕事を批判していたテレビ局の上野(桜井ユキ)は、メディアり取り上げ方に少しずつ疑問を持ち始めました。テレビは最初は何故乗客を降ろさないと批判していたのに、いざ下船準備が始まると何故下ろすと矛先を変えるのです。上野は結城たちの想いを感じ、起こっている事実だけを冷静に報道することを目指すのでした。
PCR検査陰性者も含めて船に足止めして2週間の隔離期間が過ぎたことで、集団下船が始まりクルーズ船での作業は終了します。真田はやっと家族の待つ家に帰宅し、仙道は新たな現場に向かいました。結城は立松に、「あんたが偉くなってくれれば、もっと我々は働きやすくなる」と言うのでした。
現実に同じ横浜市内で起こっていたこの件については、単純な傍観者にはなれませんでした。しかし、自分はクリニックの一人医者ですし専門外ですからという理由に納得して、この現場に参加するようなことは無いと思っていたことは間違いありません。
結果として、自分には何もできなかったかもしれませんが、あらためてこの映画を見ると、ものすごく後ろめたさを感じてしまいます。当時のブログを見返してみると、専門外でも少しでも冷静な客観的な情報を提供しようとしていたことを思い出しました。それすらも自己保身的なものだったかもしれない。そういう意味でも、とにかく「重い」映画でした。
