2025年11月16日日曜日

幸せカナコの殺し屋生活 (2025)


ウェブサイトで連載された、若林稔弥による無料の4コママンガが原作。そして、それを実写ドラマ化したのはネット通販サイトであるDMM.comが運営する動画部門のDMM TVです。出展からして、実にネット社会だからこその新しさがあります。

通常の地上波テレビは、スポンサーが出資して番組が作られ、視聴者は無料で番組を見れますが、そのかわりスポンサーによるCMを合わせて見ないといけない。番組制作にはスポンサーの意向が反映され、誰でも見れるため時代に合った制約を強く受けます。

一方、衛星放送チャンネルやネット配信のよる番組は、そのほとんどが「サブスク」で提供されます。視聴者は見たいと思って同意した上で視聴するので、映画と同等に暴力的、あるいは性的な倫理的に過激な描写も可能で、作り手はかなり自由に番組を作れるので、いろいろな意味で面白くなるのは必然と言えます。

このようなメディア構造の変化は、特にネットに依存する度合いが強い若者中心に受け入れられ、もはや地上波テレビ放送は「絶滅危惧種」の如くで、関係者は先細りの将来に大きな危機感を持っていることだと思います。ただし、サブスク番組も視聴者を獲得するため、より過激化する心配もないわけではありません。

事務所移籍トラブルにより、芸名である「能年玲奈」を本名であるにも関わらず使えなくなった"のん"は、地上波テレビ復活よりも映画やサブスク系ドラマなどに活路を開いたという意味では、現在のメディア構造をもっともうまく利用した出演者と言えるかもしれません。

5年ぶりとなるメディア露出を果たしたのは、2019年の自ら監督もした「おちをつけなんせ」で、これはYouTubeを利用した自主制作でした。2025年はNetflix映画「新幹線大爆破」や本作で存在感を見せつけ、この時期にABEMAで配信中の「MISS KING」でも大評判になっています。

前置きが長くなりましたが、本作は痛快アクション・コメディで、1話約30分の全6話、実質的には2時間ちょっとの映画サイズです。監督はこのジャンルの作品が多い英勉。

ブラック企業に見切りをつけたカナコ(のん)が、就職面接を受けに行ったのは殺し屋でした。しかし、社長(渡部篤郎)の説明でホワイトな職場であることを理解したカナコは採用され、早速殺し屋としての実践訓練を始めることになります。指導するのは先輩の桜井(藤ヶ谷太輔)ですが、社長も桜井もカナコの殺し屋としての才能を認めざるを得ない。

まずは壮絶なパワハラをカナコにしていた元上司を暗殺したのですが、怨恨の線でカナコの元にも警察が事情を聞きに来ます。刑事の竹原(矢本悠馬)はカナコに一目惚れし、バディの大森(山崎紘菜)もあきれてしまう。しかし、カナコは殺し屋の仕事に今までにはなかった充実感を感じるようになるのです・・・

というような、荒唐無稽の話ですが、とにかくテンポが良い。アクションもそこそこかっこいい。社会の落ちこぼれになったカナコが再生していくところも、共感を呼びます。頻繁に出てくるギャグもわざとらしさがなく、ストーリー全体をポップに仕上げることに溶け込んでいます。機会があれば、是非視聴してみることをおすすめできるドラマだと思いました。