宮澤正之による自叙伝「さかなクンの一魚一会 〜まいにち夢中な人生!〜」が原作。宮澤正之というと「 誰??」となるんですが、「さかなクン」と言えば知らない人はいない。
さかなクン、本名宮澤正之は、いつでもハコフグの帽子をかぶりハイテンションで魚に関する様々な解説をすることで人気者になりました。一方で、その魚類に関する博学ぶりは専門家をも凌駕する場合があり、内閣総理大臣賞(2012年)を受賞し、現在は東京海洋大学の客員教授を務めるほどになりました。
監督・脚本は沖田修一。さかなクンは男性ですが、監督は中性的な魅力も感じる女優ののん(能年玲奈)を起用し、ミー坊と呼ばれた少年が「さかなクン」になるまでを沖田流のフィクションの味付けを加えて描いています。
小学生のミー坊(西村瑞季)は、魚が大好き過ぎてクラスの中でも浮いていました。それでも、
クラスメートのヒヨ(中須翔真)、モモコ(増田光桜)とは仲良しでした。母親のミチコ(井川遥)は、そんなミー坊を否定することなく、応援するのでした。
ある日、ミー坊はギョギョおじさん(さかなクン)と出会います。魚に詳しいギョギョおじさんは、ミー坊にいろいろな魚の話をしてくれたのですが、夢中にになって夜遅くなってしまい警察がやってきて、ギョギョおじさんは連行されてしまうのです。去り際にギョギョおじさんは、かぶっていたハコフグの帽子をミー坊に渡すのでした。
ある日、ミー坊はギョギョおじさん(さかなクン)と出会います。魚に詳しいギョギョおじさんは、ミー坊にいろいろな魚の話をしてくれたのですが、夢中にになって夜遅くなってしまい警察がやってきて、ギョギョおじさんは連行されてしまうのです。去り際にギョギョおじさんは、かぶっていたハコフグの帽子をミー坊に渡すのでした。
高校生になったミー坊(のん)は、学校で飼育するカブトガニの孵化に成功して新聞に紹介されました。原付暴走族の総長(磯村勇斗)との仲良くなり、対抗するグループの籾山(岡山天音)とも親しくなりました。しかし、ミー坊の学校の成績はいまいちでした。それでも三者面談で、母親は成績が悪くてもかまわないと言うのです。
水族館に就職したミー坊は、魚への愛ばかりで仕事はからっきし。寿司屋に転職したものの、魚好きのミー坊にはどうも向いていない。高級歯科医院からアクアリウムの設計を頼まれても、マニアック過ぎる魚ばかりをチョイスして失敗します。
熱帯魚店でやっとやっと落ち着いたミー坊の元に、モモコ(夏帆)が子連れで転がり込んできました。しかしモモコを同居させるには部屋に置いていたたくさんの水槽が邪魔だったので、ミー坊は水槽を整理するのです。それを知ったモモコは黙って出ていきました。
ミー坊の魚の絵が上手なことを知っていた総長は、寿司店を開こうとしていた籾山のもとに連れていき、ミー坊に店の外壁・内壁にたくさんの魚を絵を描かせます。これが評判になり、ミー坊の元には魚のイラストの仕事が舞い込むようになりました。それを知ったテレビ局で働くヒヨは、ミー坊をテレビで紹介することにしました。緊張するミー坊は、ギョギョおじさんから受け継いだハコフグ帽をかぶり、ついに「さかなクン」になったのでした。
さかなクンにまつわる本当の話も混ざっていますが、大部分はフィクション。それでも、実にうまく話が作られていて、さかなクンならこうやって誕生したのかもしれないと思わせてくれます。この辺りは脚本の妙味というところなんで、映画としては良く出来ているところです。
ただし、沖田監督作品としては・・・ちょっと原作に振り回された感じで、ある意味「普通」の映画です。原作がフィクションではなく、かつ原作者が存命中ということで、皆が知っているさかなクンのキャラクターに寄せ過ぎた感は否めません。その結果、沖田カラーは彩度を失ってしまったのかもしれません。
事務所移籍トラブルから露出が激減したのん(能年玲奈)にとっては、この年は自ら監督も行った「Ribbon」に続いての女優としての実力を再確認させることにつながっています。男性とも女性とも、あるいはトランスジェンダーでもない何にも染まらない存在感を、見事に演じています。
