2025年11月20日木曜日
イチケイのカラス (2021)
犯罪物、いわゆるクライム・サスペンスというと、一般には捜査をして犯人を逮捕する警察官が主役ですが、その後に待っている裁判を描くのが法廷物(リーガルドラマ)というジャンル。過去には、検事が主役の「HERO」、弁護士が主役の「リーガル・ハイ」、「99.9-刑事専門弁護士」、「石子と羽男」などがヒットし、全部の仕事をまとめた「虎に翼」も思い出されます。
「イチケイのカラス」は東京地方裁判所第3支部第1刑事部、通称「イチケイ」を舞台にした裁判官が主役のドラマで、原作は浅見理都によるマンガです。ただし、主役やキャラクター設定は改変されていて、落ち着いた配役によって安定したライト・コメディに仕上がりました。
イチケイに新たに配属されたのは超真面目で、上からの期待が高い優秀な女性裁判官、坂間千鶴(黒木華)です。イチケイのトップは駒沢(小日向文世)、書記官としては川添(中村梅雀)、石倉(新田真剣佑)、浜谷(桜井ユキ)、事務官として一ノ瀬(水谷果穂)がいますが、一番問題児なのが中卒で、元弁護士の裁判官、ふるさと納税を趣味とする入間みちお(竹野内豊)です。
入間は、誰もが納得できる正しい裁判を行うために、裁判官としては異例の「職権発動」によって自ら再捜査に乗り出してばかりいるので、たくさんの処理案件が滞っているのです。しかし、駒沢もそのことに理解があるので、イチケイ全体が問題視されているのでした。
12年前、入間が弁護士として関わった殺人事件で、担当した日高亜紀裁判官(草刈民代)は、まったく弁護側の主張を聞き入れず、被告に無期懲役の判決を下しました。無実を主張していた被告は絶望して自殺し、弁護士に嫌気がさした入間は、駒沢の申し出により裁判官になったのです。
あまりのマイペースぶりに坂間のイライラはつのりますが、いろいろな事件を担当するうちに、少しずつ入間の想いを少しずつ理解するようになっていきます。そして、ある事件をきっかけに、12年前の事件の真相に近づくチャンスが巡ってくるのです。
本当の裁判官からすると、こんな裁判官はあり得ないといわれそうですが、エンターテイメントとしては、実に良く出来ています。それでもキムタクも松潤も相当変わっていましたし、堺雅人ほど極端なキャラではないので、一般人からするとだいぶ現実的な印象を持ちます。
それはキャスティングの妙もあると思いますが、演技者として定評のある出演者によってそれぞれがしっかりと描かれていると思います。ただし新田真剣佑だけは活躍の場が少なすぎて、ちょっと物足りなさを感じます。
裁判官は法廷の最後でほとんど事実関係が明らかな状態で登場するので、ストーリーを盛り上げたのは原作者の力が大きいとは思いますが、それをうまくドラマに落とし込んだ脚本の浜田秀哉も評価されると思います。
