2018年11月26日月曜日

Blade Runner バージョンの違い


「ブレード・ランナー」は、言わずと知れた1982年のアメリカ映画。監督はリドリー・スコット、主演はハリソン・フォード。

何しろ「エイリアン(1979)」を大成功させて監督と「スターウォーズ(1977)」で一躍人気者になった俳優がタッグを組んだのですから話題性は抜群で、さぞかし大ヒットしたと思うのが当然。

ところが公開当時は、その先進性、難解さもあって一般受けしませんでした。しかし、しだいに評価が高まり、今ではSF映画最高傑作とまで言われるようになり、後続する作品への多大な影響を与え続けている作品です。

自分が最初に見たのはLDでした。一度見て、未来都市の和洋折衷の世界に引き込まれ、最低限のストーリーはわかったつもりになりました。

でも、このシーンは何だろうと思うようなところがあまりに多く、内容の理解までにはほど遠い。ネットはまだありませんでしたから、映画に関する情報は、LDジャケットに印刷されたほんの少しの日本語だけで皆無に近い状況でした。

映画が再評価されていったのは、やはりビデオの一般普及か大きく貢献していることは間違いなく、ビデオで簡単に映像を止めたり、繰り返して見ることで不思議な部分を確認することができるようになり、この映画のより深みにはまっていくことになるわけです。

公開後に未公開部分を足したりしてディレクターズ・カットとか完全版とか呼ばれるようなものが出てくることはよくありますが、基本的に最初の公開版が基本です。

ところが、この作品に特徴的なことは、ファンが少しずつ増えていったことで、公開後にいろいろなバージョンが作られたことが上げられます。しかも、現在までに7つのバージョンが存在しており、改変されるたびに作品としての完成度が上がっていくというのは、他では見られない独特な現象です。

公開前のサンディエゴ試写会版とアメリカでのテレビ放映版は、過去に発売されるような形態にはなっていないので、現在手に入れてみることが可能なのは次の5つのバージョンです。

ワークプリント版
公開前に観客の反応を見るために数カ所で上映されたもの

劇場公開版
試写の様子から、ハリソン・フォードのナレーションによる若干の説明の挿入、一部の暴力的なシーンの削除、最後にハッピーエンドを思わせる映像の挿入など

インターナショナル版
ヨーロッパ、日本での公開用に暴力シーンが復活し、初期のビデオ・テープやLDに収録された

ディレクターズ・カット版
公開10周年で、リドリー・スコットによる再編集がなされ、ナレーションとエンディングの削除、暴力シーンの再削除、そして重要なのはデッカードがユニコーンの夢を見るシーンが追加された

ファイナル・カット版
公開25周年のリドリー・スコットによる再々編集で、今のところ最終決定版
全体の色調を青から緑に変更し、ゾーラがショーウィンドウを突き破るシーンは取り直して編集、暴力シーン他の映像の復活、最後の鳩が飛び去る風景を変更など

劇場公開版とインターナショナル版は、基本的に説明ナレーションとハッピーエンドのエンディングで特徴付けられます。ディレクターズ・カット版とファイナル・カット版は、ユニコーンの夢のシーンが特徴。

インターナショナル版から入った自分としては、ファイナルカット版でもいいのですが、初めて見る人にはナレーションが無い分謎が多すぎて難解度が高くなります。

削除されたエンディングは、実はキューブリックの「シャイニング」のオープニングで使われなかった映像の使いまわしというところが興味深いのですが、確かに無い方が主人公の未来の想像が膨らんでいいのかもしれません。

もっとも、この映画がずっと興味を持たれ話題性を持続できているのは、これらの謎に対する明解な答えが無い事も理由の一つになっています。ユニコーンの夢の追加は、さらに謎を深めているわけですが、この解釈の仕方によっては、物語の根幹を変える可能性があるくらいインパンクがありました。

昨年、リドリー・スコットも監修として参加している続編と呼べる「ブレード・ランナー2049」が公開されたので、元祖についてはこれ以上の改変は行われないだろうと想像します。

いずれにせよ、このような多くのバージョンが存在することは、ディープなファンがいるからこそであり、そしてさらにコアなファンを増やす要因になっているということなんでしょうね。