2026年10月5日月曜日

世界遺産


今年の7月に、UNESCOの世界遺産委員会にて「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」が、日本で27件目の世界遺産として登録されることが決定しました。

このニュースは、各メディアが大々的に取り上げたので、大多数の日本の人々はすでに知っていることと思います。委員会の会議が始まって、登録が決定するのを今か今かと待っている関連地域の方々や、登録決定し喜ぶ様子がニュースでも紹介されました。

世界遺産に登録されると、地元には多くの観光客が国内外からやって来て、高い経済効果が期待されるわけですから、喜ぶのは当然と言えば当然の事と言えるでしょう。実際、世界遺産に登録された白川郷や富士山でも多くの観光客で賑わっている様子はニュースになっています。

ただ、ちょっと待てよ・・・という喜んでいるところに水を差すような、申し訳ないような違和感みたいなものを強く感じました。世界遺産というものが、「観光すべき場所」としての国際的なお墨付きのような扱われ方をされてはいないでしょうか。

実際、観光客が増えたことで、白川郷では民家に勝手に入り込む人や、ゴミ問題などが発生しているわけですし、富士山では山頂への人渋滞、安易な登頂による遭難者が増えたり、閉山期間に強引に登山を行う人の問題など、多くの悩みを抱え込むことになっています。

世界的な人類の遺産として未来にも確実に残すべきものとして登録されるわけですから、そこには文化的・自然的に継続されるべき厳重な管理が求められるわけで、単純に観光客が増えて喜んでいる場合ではありません。多くの人に遺産として知ってもらう必要性はありますが、観光客に対してある程度の制限が加わるような厳格なルール作りも併せて考えないといけないことを肝に銘じることも大事なことだと思います。

あらためて「世界遺産」というものはどういうものなのか整理してみましょう。

第2次世界大戦終結後に恒久的な政治的平和を維持するために国際連合が作られ、同時に主として教育・科学・文化などを通じて世界各国の連帯を促進させる目的で下部機関として設置されたのがフランスのパリに本部があるUNESCOです。1972年にUNESCO総会にて、特別な価値を持つ文化財や自然に対して国際的な保護体制を構築するために「世界遺産条約」が採択されました。

世界遺産に登録するためには、各国からの推薦を基に、文化遺産についてはICOMOS、自然遺産についてはIUCNが主として調査・評価に協力して年に1回の世界遺産委員会で協議されます。一度登録が否決された場合は、原則として同一内容での推薦はできないことになっています。

世界遺産の定義はどうなっているのでしょうか。

1. 顕著な普遍的価値を持つ
 国家・民族・宗教などの枠組みを問わず、人類全体にとって将来に渡っても共通の重要な文化的な意義や自然の価値があることを意味します。これを継続的に守るための制度設計も併せて求められます。
2. 文化遺産
 人類の歴史が生みだした記念物・建造物群・遺跡・文化的景観です。形状・意匠・素材。用途・機能などにおいて独自性や継承性がある「真正性」が求められます。
3. 自然遺産
 地球の生成や動植物の進化を示す地形・景観・生態系などです。
4. 複合遺産
 文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えているものです。
5. 危機遺産
 登録遺産が、重大・明確な危険に晒され、人の関与により改善可能なものです。この場合は、世界遺産委員会が経済的・人的・物的な援助を行います。

登録されるためには以下の基準の1つ以上を満たす必要があります。

文化遺産の登録基準 (i)〜(vi) 
(i)  人間の創造的才能を表す傑作
(ii)  建築や科学技術などの発展に重要な影響を与えた価値観の交流
(iii)  文化的伝統や文明の存在を伝える無二の物証
(iv)  建築様式や科学技術の発展段階を示す優れた見本
(v)  人類と環境の交流を示す伝統的集落や土地利用
(vi)  出来事、宗教、芸術などと直接結びついたもの

自然遺産の登録基準 (vii)〜(x)
(vii)  優れた自然美や景観美
(viii)  地球の歴史の主要な段階を示す記録
(ix)  生態系や進化の重要な過程
(x)  生物多様性の保全にとって最も重要で絶滅危惧種の生息域

これらの基準が単独で採用されることはごくまれで、ほとんどがいくつかの基準を組み合わせて登録が決定しています。制度がスタートした初期には、ヨーロッパの宮殿や宗教施設に偏る傾向がみられたため、近年では世界中での不均衡を是正し、代表制・信用性を確保するグローバル・ストラテジーという概念が重視されています。

これらの世界遺産の「イロハ」をもう一度確認した上で、今後も日本からも世界遺産が登場するようなら大変喜ばしいことだと思います。