2025年10月31日金曜日

ミライさん (2018)


世の中の情報技術・・・つまりIT (Information Technology)の進歩は、21世紀になって急速に拡大して、特にメディアの世界では、従来の組織がどんどん縮小する傾向が顕著です。

例えば、本。文字文化の象徴みたいなところがありますが、本屋はほとんど姿を消しつつあり、手に取って文字を読むという習慣は過去の物になりつつある。例えば、新聞。発行部数は縮小の一途をたどり、いまやテレビのニュースはSNSに上がった個人の感想みたいなものばかりを垂れ流している。

しかし、他人とのコミュニケーション・ツールとして言葉そのものが無くなることは、今のところは想像できません。SNSでさえ、言葉を文字にして交換するというのが基本です。SNSの代表的なツールであるLINEは、オールド・メディアがやってきたことを取り込んで、どんどん肥大化しています。

そんなLINEが、2018年に初めてドラマとして製作したのが本作です。現在はYouTubeのLINE NEWSの中で見ることができます。スマートホンで見ることを前提として、1時間の番組では長すぎるという観点から始まった企画のようで、1話10数分で全5話という構成。制作サイドはこれでも長いと考えているらしい。

ただし、LINEの企画はこれ1本だけですし、今最も勢いのあるドラマ配信であるNetflixなどは、1話1時間程度が基本ですし、2時間の映画を作ってもいて、いずれも支持されているわけですから、短いドラマは見た時の満足感も少なくなってしまい必ずしも安定した需要は見込めないのかもしれません。

このストーリーは、ちょっとだけ近未来のホーム・ドラマという感じのもので、今野ミライ(のん)、兄のトモロウ(本多奏多)、母のイマコ(堀内敬子)、そして父のフルキチ(マキタスポーツ)という4人家族の話。

「人が働かなくてもいい未来」を作る自称革命家であるミライは、まったく働こうとせずダラダラと日々を過ごしています。わかりやすく言えばニート。トロモロウが発明した道具を、便利に使いこなして楽することばかり考えているのです。

フルキチは名前の通りで、ミライからはしょっちゅう「古い常識にとらわれている」と言われるため、ミライとはしばしばぶつかります・・・という、はっきり言って他愛ない内容。

スマートホンだろうと大画面だろうと、やはり内容の面白さが一番大事なポイントになるのだと思います。短い時間では、物語に深みがなく、ドラえもんのポケットから出て来たみたいな道具を巡ってのドタバタにしかなっていません。

ただし、この短いドラマが注目できるポイントの一つが「のん」の女優復帰作であるということ。のんについては、どうしても芸名にまつわるトラブルの話を避けては通れません。

2013年のNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」と2014年の映画「海月姫」でブレークした能年玲奈は、その2つの出演を最後にメディアから遠ざかってしまいました。事務所の売り出し方針と本人の希望との間のずれのため退所したことが原因で、本名である能年玲奈は芸名としては事務所の商標であるため使用できなくなったのです。

トラブルを起こしたタレントはスポンサーは使いずらい。そのため数年間は露出が激減したわけですが、このLINEドラマで4年ぶりに女優に復帰しました。その後は着実に映画を中心に、俳優としての実力を発揮していて、テレビでも見かけるようになってきたので安心ですね。