2026年9月7日月曜日
タコス
メキシコ料理と言えば、タコス!!
いや、他にもあるよと言われそうですが、たぶん普通に知られているのはタコスが一番だと思います。
トウモロコシの粉(マサ)から作る薄焼きのパン、これがトルティーヤ。
トルティーヤにいろいろなものを挟んで食べるのがタコ、複数形になるとタコスでメキシコの国民食と言われています。タコス専門の料理店はタケリアと呼ぶらしい。
中に使う具材はいろいろ。地域差もかなりあるらしく、特定のルールに縛られるわけではないようですから、好きな物を好きなだけ挟めばいいんでしょうけど、一応定番とされているものがあります。
挽肉にクミン、チリパウダーなどを入れて煮込んで風味付け・味付けしたものがタコミート。
味の主役はサルサソース。トマト、タマネギ、ピーマンなどを細かく刻んで、レモン汁、塩、ニンニク、辛いのがお好きならタバスコなどで味を整えたもの。
この二つははずせない感じですが、他にオリジナルでカレー風味のポテトとコンソメ風味の刻んだムキエビなども用意してみました。
買ってきたトルティーヤは、電子レンジでOKと書いてありましたが、オーブントースターで温めたほうが美味しく食べれました。
比較的健康的な感じですが、美味しくてどんどん食べられるので、注意しないとね。
2026年9月6日日曜日
Complete Album Collection Vol. One (2013)
2013年11月にリリースされたのが、これまでのすべてのアルバムをまとめた巨大ボックス・セットです。
当時コロムビア・レコードはこの手の企画をたくさん立ち上げていて、クラシックならピアノの巨匠、ウラジミール・ホロヴィッツやグレン・グールド、ジャズならマイルス・デイビスなどの巨大ボックスが飛ぶように売れました。
これらはデジタル化、ストリーミングの流れを受けて、アナログな存在であるオールド・メディアを売れるうちに売り切ってしまおうという、他のレコード会社にも共通した流れでした。
特定のアーティストのすべての音源を、格安に手に入れられるチャンスだったので、自分もたくさんボックス・セットを購入しました。ただし、今となっては保管場所に困るという、最初から分かり切っていた悩みを抱えることになってしまいました。
ボブ・ディランの場合は、1962年のデヴュー作から2012年の「Tempest」まで、正規に発売されたスタジオ・アルバム、ライブ・アルバム全40タイトルがCD45枚(CD2枚組を5セット含む)に収められています。
また、ディラン自身が自分のアルバムとしては認めずに廃盤にした、1973年の「DYLAN」が初CD化され復活しているのは、評価されるポイントかもしれません。「Greatest Hits」や「Biograph」などのコンピレーションは含みません。
そしてコンピレーションだけに含まれるもの、シングル盤としてだけ発売されたものなどを集めた「Side Tracks」と題された2枚組が追加されていて、「The Bootleg Series」や「Live Recordings」のシリーズで陽の目を見たものを除くと、ほぼすべて(公式リリースされてこのボックスに含まれないのは10数曲)のディランの音源がまとまります。ちなみに日本でだけ、「Side Tracks」は単独でも発売されました。
ディランの自伝も「Chronicles Vol.1」となっていましたが、このボックスもわざわざ「Vol. One」と付いているのは、ちょっとした洒落みたいなもので、ディランのセンスなのかレコード会社のものかはわかりません(Vol.2が出ることはたぶん無い)。これ以降に発売されたものは個別に手に入れるしかありませんが、実売3万円程度ですべて揃ってしまうのは優れたコストパフォーマンスです。
日本国内盤は日本語の解説が付きますが、中身はアメリカまたはヨーロッパからの輸入盤です。紙ジャケット仕様なのがマニアには嬉しいところ。輸入物の紙ジャケットは粗悪なものが多いのですが(日本盤が丁寧すぎるのかもしれません)、このセットは比較的まともなので安心です。付属のハードカバーのブックレットには詳しいトラックリストやレコーディング・データが満載です。
内容はすべて2003年以降にリマスターされていて、基本的に音質については特に問題はありません。よほどのオーディオ・マニアでなければ、特に不満を感じることはないと思います。例えば、これまで書いてきた記事の内容を、音で確認するにはこれほど最適なセットはありません。
と、良いことづくめみたいに書いていますが、すべてを「持っている」こととすべてが「わかる」ことは違います。特にディランの場合、一度や二度聴いただけだと「何だこりゃ」となる場合も少なくないし、英語の歌詞がわからないのでなおさらです。やはり聴き込む必要があるし、聴き込む価値があるアーティストだと思いますので、このようなセットは飾っておくだけでなくフルに利用することを強くお勧めします。
2026年9月5日土曜日
Tempest (2012)
ボブ・ディラン、71歳、前作から3年ぶりの新しいスタジオ・アルバムです。この年齢でも創作意欲が衰えていないことが凄いと思いますが、この間もステージに立ち続けるペースは落ちていないことは、さらなる驚きです。
2010年は、2月にオバマ大統領主催の公民権運動追悼イベントに出演し、3月には9年ぶりの来日公演を観客との距離が近いライブハウスで行い、5月から11月末まで世界中を回ってステージをこなしています。これらのライブの合間に、すでに新作のアイデアが生まれています。2011年になっても、3月から11月まで、4月の初めての中国でのライブを含めて89公演を行い、この間に70歳の誕生日を迎えました。
2012年の年明けから、ディランは新しいアルバムの録音に入ります。今回も、Jack Frost名義のセルフ・プロデュース、レギュラーのツアー・バンド・メンバーを中心に、ロス・ロボスのデヴィッド・イダルゴを迎えてのセッションになりました。作業は、例によって一発録りに近い形で行われ、3月には終了しています。
1997年の「Time out of Mind」以後、完全復活したディランですが、以後のアルバムは「ボブ・ディラン」というアーティストを形成したルーツをたどり、再発見し再確認して再構築することで現代に再提示する作業の連続と言えます。今回もそのコンセプトは継続していますが、比較的ダークなストーリー・テリングに重きを置いたものとなりました。
2012年5月、ホワイトハウスにてバラク・オバマ大統領から、文民に贈られる最高位の栄誉である「大統領自由勲章(Presidential Medal of Freedom)」を授与されました。音楽関係者では、ボノ、ドリス・デイ、フランク・シナトラ、ブルース・スプリングスティーン、ヨーヨー・マ、アレサ・フランクリンなどが受賞しています。授賞式でのディランは、終始、無言・無表情でオバマ大統領も「それも彼らしい」と語っています。
この年の後半は、再び「Never Ending Tour」の毎日に戻りますが、9月にこの「Tempest」がリリースされると、またもや70代の巨人の新作は大絶賛されます。年老いてなお、前作を凌駕するようなアルバムを出せることに、多くの評論家や一般のファンは驚くしかありませんでした。
1曲目の歌詞だけはロバート・ハンターとの共作で、作曲時期は前作「Together Through Life」制作時のものかもしれません。ラジオから聞こえてくるようなスティール・ギターのイントロから始まり、懐かしい響きを持つ軽快な曲ですが、列車の汽笛が死や運命の象徴として歌われアルバム全体の雰囲気を示しています。以後のツアーでも毎回のようにセットリストに加わりました。
2曲目以後も、深夜過ぎの不穏な空気、荒廃した世界、男女の破局、血の代償、人の醜さ、権力欲への皮肉、三角関係の悲劇などをテーマにしています。そして14分超えの壮大なアルバム・タイトル曲で、「タイタニック号の悲劇」を想像を膨らませて虚実混在するドラマを歌い上げます。
ラストを飾るのはジョン・レノンに捧げた哀悼歌です。レノンの書いた歌詞のフレーズを織り込み、功績を讃え安らぎを祈っています。ガスリーの影響を強く残す1962年頃に、プライベート・テープやステージで歌っていた同名曲がありますが、それは労働者を歌うトラディショナルで別のものです。
Duquesne Whistle
Soon After Midnight
Narrow Way
Long and Wasted Years
Pay in Blood
Scarlet Town
Early Roman Kings
Tin Angel
Tempest
Roll On John
Bob Dylan (vo, g, pf)
Tony Garnier (b), Donnie Herron (steel guitar, banjo, vn, mandolin)
David Hidalgo (g, accordion, vn), Stu Kimball (g)
George G. Receli (ds), Charlie Sexton (g)
January ~ March, 2012, Santa Monica, California
☆☆☆☆☆☆☆・・・
2026年9月4日金曜日
Christmas in the Heart (2009)
第1位はダントツでエルビス・プレスリー、第2位はマライア・キャリー。ランキング上位にはケニー・G、セリーヌ・ディオン、ナット・キング・コール、ビング・クロスビー、カーペンターズなどなど、そうそうたる面子が並びます。
そう、これはホリデー・アルバムの売り上げ枚数ランキングの話。トップのプレスリーはいろいろな形で発売されたものを全部合わせると2000万枚以上になるらしい。キャリーは2枚のアルバム、特に最初の1枚だけで1500万枚以上というのは実質的にはトップかもしれません。
ホリデーというのは、イコール「クリスマス」のことで、キリスト教の国にとっては新年より、12月25日のキリストの誕生日の方が重要。この時期、ホリデー・シーズンを当て込んだレコードやCDは、昔からたくさん作られてきました。
さて、ここで、久々の困ったディランのアルバムの登場となります。一般には「Empire Burlesque」とこの「Christmas in the Heart」が、二大珍品アルバムとして扱われることが多い。最初に種明かししておくと、ディランのホリデー・アルバムは売れた枚数は世界中でもたぶん数十万枚です。
先によかった点を整理しておきます。2009年は「Together Through Life」が4月に発売され、同じ年にさらにアルバムが発売されたことは評価できるポイントです。また、このアルバムで発生する印税収入は、食料支援のための慈善団体への100%永久寄付としているところも嬉しい。
そもそも、何でアルバムを作ったのか? ということなんですが、2006年からディランがパーソナリティを務めるラジオ番組で、クリスマス・ソングの話題をしているうちに思いついたらしい。またユダヤ教の家庭に育ちながらも、こどもの頃に慣れ親しんだ音楽に対する愛着もありました。
5月にスタジオ入りすると、一気にアルバムを仕上げてしまいました。レギュラー・バンド・メンバーが中心ですが、彼らもスタジオで初めてホリデー・アルバム制作と知って驚いたようです。しかも、手本になりそうな古いレコードを聴かせただけで、さぁやってみよう、という感じの一発録りです。
いきなり鈴の音が響いてコーラス隊の美声が聞こえてくると、確かにクリスマスだなと思わせます。そこにディランのだみ声が出てきて「サンタがやってくる」となるので、最初はおいおいと突っ込みたくなる・・・んですが、不思議なことに何かこれはこれでありかもしれないと思ってしまいます。
「The Christmas Blues」は、ジャジーなブルースで、この時期のディランとしては最も普通に聴けるのですが、むしろこのアルバムの中では異質な感じがするという逆転現象が起きています。その次がまさに教会で聴けそうな讃美歌なので落差がすごい。時には、ルイ・アームストロングが歌っているのかと勘違いしそうなところもあります。
とにかく、本人は大真面目に作ったものですから、ディランのファンなら肩肘張らずに数年に一度はクリスマスに聴くようにしましょう。
Here Comes Santa Claus
Do You Hear What I Hear?
Winter Wonderland
Hark the Herald Angels Sing
I'll Be Home for Christmas
Little Drummer Boy
The Christmas Blues
O' Come All Ye Faithful (Adeste Fideles)
Have Yourself a Merry Little Christmas
Must Be Santa
Silver Bells
The First Noel
Christmas Island
The Christmas Song
O Little Town of Bethlehem
Bob Dylan (vo, g, pf, harmonica)
Tony Garnier (b), George Receli (ds)
Donnie Herron (steel guitar, mandolin, tp, vn), Phil Upchurch (g)
David Hidalgo (accordion, g, mandolin, vn), Patrick Warren (key)
Choir : Amanda Barrett, Bill Cantos, Randy Crenshaw, Abby DeWald,
Nicole Eva Emery, Walt Harrah, Robert Joyce
May 2009, Groove Masters, Santa Monica
May 2009, Groove Masters, Santa Monica
☆☆☆☆☆・・・・・
2026年9月3日木曜日
Together Through Life (2009)
ピューリッツァー賞(Pulitzer Prize)は、アメリカの新聞王ジョセフ・ピューリッツァーの遺志に基づき1917年に創設された権威のある賞で、誰もが一度は見たことがある報道写真などが受賞作品として有名です。ただし、M.ミッチェルの「風と共に去りぬ」やE.ヘミングウェイの「老人と海」のような文学作品も受賞しています。
また、実は音楽部門というのもあって、そのほとんどがクラシック音楽関係の受賞でしたが、数人のジャズ畑からの受賞者もいて、特に驚かされるのは2018年にラッパーのケンドリック・ラマーが受賞していることでしょうか。
そして、我らがボブ・ディランも、2008年に部門からは離れて特別賞を受賞しました。特別賞は、優れた功績を残した人物が対象で、ディランの場合はポピュラー音楽やアメリカの文化に多大な影響を与えてきたことが評価されたものです。特別賞は、過去にはジョン・コルトレーン、セロニアス・モンク、デューク・エリントンといったジャズの巨匠が受賞しています。
これに対してディランは・・・ノーコメントを貫きました。日頃から他人による自分の評価に対しては、(自分が不調の時を除いて)ほとんど知らんぷりを決め込んでいるディランですから、らしいと言えばらしいわけで、その時でも淡々とツアーを続けていました。
秋頃になって、映画監督のオリヴィエ・ダアンから、映画の主題歌の書き下ろしの依頼が来ます(出演ではありません)。映画は「My Own Love Song」というタイトルのレネー・ゼルウィガー主演のロード・ムービーで、引き受けたディランは早速グレイトフル・デッド専属の作詞家ロバート・ハンターに協力を依頼して「Life Is Hard」を書き上げ、12月にスタジオで録音を行いました。
すると、あれよあれよという間に、次々にアイデアが湧いてきてアルバムが作れるほどになりました。これは、よほどセッションの雰囲気が良かったということらしい。ハンターと共作するのは「Down in the Groove」以来でしたが、1曲を除いてすべてが共作になっています。
ツアーのレギュラー・バンドのメンバーの他に、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのマイク・キャンベルのギターとロス・ロボスのデヴィッド・ヒダルゴのアコーディオンが効果的にフィーチャーされました。プロデューサーはジャック・フロスト(ディランの偽名)です。
前2作のようなオールド・アメリカン再発見という趣向は薄まりましたが、モダン・ブルース、モダン・ロックンロールというような古くて新しい雰囲気に統一されたアルバムになりました。2009年4月に発売されると、音楽各誌は高い評価をし、ビルボード誌でも週間1位に輝く成功を収めました。発売形態は、1枚組CDと2枚組LPレコードでしたが、ディラン出演のラジオ番組の音声と元マネージャーへのインタビューを収録した3枚組CDのデラックス版も作られました。
スタートはラテン調で、映画の主題歌「Life Is Hard」は2曲目の哀愁漂うカントリー調のバラードです。続いては「妻の故郷は地獄」というブラックなブルース。全体的にはミディアム・テンポで、落ち着いた大人の音楽という感じで、都会的だったり泥臭かったりと雰囲気で一気に最後まで聞かせます。
Beyond Here Lies Nothin'
Life Is Hard
My Wife's Home Town
If You Ever Go to Houston
Forgetful Heart
Jolene
This Dream of You
Shake Shake Mama
I Feel a Change Comin' On
It's All Good
Bob Dylan (vo, g, key)
Mike Campbell (g, mandolin), Tony Garnier (b)
Donnie Herron (steel guitar, banjo, mandolin, trumpet)
Donnie Herron (steel guitar, banjo, mandolin, trumpet)
David Hidalgo (accordion, g), George Receli (ds)
December 2008, Jackson Browne Studio, Los Angeles
☆☆☆☆☆☆☆・・・
December 2008, Jackson Browne Studio, Los Angeles
☆☆☆☆☆☆☆・・・
2026年9月2日水曜日
生クラゲ
最近は、何でも「生」ってつけば嬉しいみたいな風潮があります。
生食パン、って絶対火が通っていて生の訳がない。
生プリン、も同じ。
通常、売っているワカメは緑色してますけど、これも湯通ししているからで、本当の生ならほぼ真っ黒です。
食料品に「生」と冠するのはなかなか難しいところがありますが・・・
これは、たぶん本当に生。赤クラゲです。
ただし、生物学的な「アカクラゲ」は毒性が強いらしく別物で、食用としてでまわっているのは「ビゼンクラゲ」というもの。
・・・だろうと思うんですが、刻んであるだけみたいです。味も付いていません。
つまり、このまま食べても、ほぼ味は無い。
まぁ、もともとクラゲは食感命の食材ですから、それで良いと言えば良いわけです。
ポン酢で食べましたが、すごく美味しいとまではいいませんが、何となく食べて楽しいというものでした。
2026年9月1日火曜日
DYLAN (2007)
2007年もひたすらライブ活動に勤しむボブ・ディラン。ツアー・バンドは「Modern Times」と同じ顔ぶれで、3月から10月まで、休む暇もなくアメリカとヨーロッパで演奏を続けていました。この年唯一のアルバムは10月に発売されたオールタイム・ベスト盤「DYLAN」です。
公式のベスト盤は、「Greatest Hits」第1集が1967年、第2集が1971年、そして第3集が1994年に登場しています。いずれも収録された曲の重複がないという良心的な選曲。そして未発表曲を詰め込んだ「Biograph」は1985年、コロムビア・レコードのアーティスト全体のシリーズとして「Essential」が2000年に発売されています(アメリカ以外の国の独自編集は除く)。
「DYLAN」はCD3枚組で、自らの名を冠するだけあって、この時点での決定版と言える内容です。さまざまなデジタル配信サービスが急速に拡大していた時期であり、各レコード会社は手持ちカタログのデジタル化に精を出していました。コロムビアも再びディランが世間の注目を集めているこのタイミングで、ディランの楽曲のデジタル・リマスターを行っていました。
ディランのことはこれまであまり聞いてこなかったというライトなファンに向けては「Best of the Best」のCD1枚組というのも用意され、日本ではさらに初回のみライブ音源4曲追加のCD2枚組という形態もありました。本命の3枚組は、特に新曲や未発表音源は含みませんが、布張りボックスという豪華な仕様で、オマケもついてマニアも手に入れたくなるところは商売上手です。いずれにせよ、純粋にディランの歴史を一望できる決定盤として必須のアイテムと言えます。
また同時に、40年前の「Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)」がマーク・ロンソンによって新しく現代風にリミックスされたものが配信され話題になりました。しかもこのニューバージョンのミュージック・ビデオが作られ、いかにもディランっぽい後姿の男性が登場し、これまでのディランの半生を一気に見せてしまうという興味深いものになっています。
11月にはドイツのケムニッツ美術館にて、初の本格的な個展「The Drawn Blank Series」を開催しました。1980年代から90年代にかけて、ツアーの合間に描いたスケッチをベースにした水彩画やアクリル画が展示され評判になりました。刊行された画集は、現在は大変なプレミアがついています。
そして、アメリカでは11月に公開されたのが映画・・・と、言っても安心してください。ディランは今回は出演していません。「I'm Not There」というタイトルで、クリスチャン・ベール、ケイト・ブランシェット、マーカス・カール・フランクリン、リチャード・ギア、ヒース・レジャー、ベン・ウィショーという6人の俳優が別々のディランを投影したエピソードを演じる「伝記」様のストーリー。
ディランは映画の制作を承認し楽曲の使用を認めただけで、基本的に関与はしていません。ただし、自分の本質を理解している映画だと評価しています。第64回ヴェネツィア国際映画祭にて審査員特別賞を受賞、特にブランシェットは多くの映画祭で受賞し、映画としての評判は上々でした。
日本でも公開はされていますが、架空の名前だったり実在の人物の名前が登場したり、時間があちこちに移動したりと、なかなか中身を理解するのは難しいこと請け合いです。確かにそれがディランらしいということなのかもしれません。
ディランは映画の制作を承認し楽曲の使用を認めただけで、基本的に関与はしていません。ただし、自分の本質を理解している映画だと評価しています。第64回ヴェネツィア国際映画祭にて審査員特別賞を受賞、特にブランシェットは多くの映画祭で受賞し、映画としての評判は上々でした。
日本でも公開はされていますが、架空の名前だったり実在の人物の名前が登場したり、時間があちこちに移動したりと、なかなか中身を理解するのは難しいこと請け合いです。確かにそれがディランらしいということなのかもしれません。
Song to Woody
Blowin' in the Wind
Masters of War
Don't Think Twice, It's All Right
A Hard Rain's a-Gonna Fall
The Times They Are a-Changin
All I Really Want to Do
My Back Pages
It Ain't Me, Babe
Subterranean Homesick Blues
Mr. Tambourine Man
Maggie's Farm
Like a Rolling Stone
It's All Over Now, Baby Blue
Positively 4th Street
Rainy Day Women #12 & 35
Just Like a Woman
Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)
All Along the Watchtower
You Ain't Goin' Nowhere
Lay Lady Lay
If Not for You
I Shall Be Released
Knockin' on Heaven's Door
On a Night Like This
Forever Young
Tangled Up in Blue
Simple Twist of Fate
Hurricane
Changing of the Guards
Gotta Serve Somebody
Precious Angel
The Groom's Still Waiting at the Altar
Jokerman
Dark Eyes
Blind Willie McTell
Brownsville Girl
Silvio
Ring Them Bells
Dignity
Everything Is Broken
Under the Red Sky
You're Gonna Quit Me
Blood in My Eyes
Not Dark Yet
Things Have Changed
Make You Feel My Love
High Water (For Charley Patton)
Po' Boy
Someday Baby
When the Deal Goes Down
☆☆☆☆☆☆☆☆・・
☆☆☆☆☆☆☆☆・・
2026年8月31日月曜日
Modern Times (2006)
長いスランプからV字回復し、中年のオヤジになったボブ・ディランの快進撃はまだまだ続きます。とはいえ、生活の中心である「Never Ending Tour」は衰え知らずですが、ニュー・アルバム制作のスピードはダウン。
2002年は「The Bootleg Series Vol.5 The Rolling Thunder Revue」の発売だけにとどまりました。2004年は、「The Bootleg Series Vol.6 Live 1964」が発売され、ロック化する直前の「ハロウィン・ライブ」の完全版が陽の目をみました。また2005年には「The Bootleg Series Vol.7 No Direction Home」が同名テレビ・ドキュメンタリーのサウンドトラック、1962年の「Gaslight Live」、1963年の「Carnegie Hall Live」が登場しています。
積極的に過去の業績を整理整頓していた期間という見方もできますが、シリーズにはディラン自身の承認は必要でしょうが、実際はディランの事務所とコロムビア・レコード側のスタッフの仕事です。従来から海賊盤で聴かれていた音源ばかりですが、公式に発売されることでマニア以外の一般のファンも手に入れやすくなります。また、過去の再評価につながり、ディランの影響の大きさを再認識することになりました。
あれ? 2003年はどうしたの、ということですが、本当に性懲りもないディランは、またもや映画作りに手を出していました。音楽だけにしておけば良いものを、今度は脚本を書いて主演してしまいました。撮影は2002年夏に行われましたが、よくそんな時間があったものだと感心してしまいます。タイトルは「Masked and Anonymous」で直訳すれば「仮面の匿名者」ですが、邦題は「ボブ・ディランの頭のなか」というトホホなものに・・・
この映画用のディラン自身が歌う新曲はありませんが、新たに書き下ろされた「City of Gold」が使われています。また、ここだけのトラディショナルのカバー曲や既存曲のディランの新録音が数曲あったり、いろいろなアーティストがディランの曲をカバーした演奏も聴けるので、気になる方はサウンド・トラック盤をチェックしてください。
また、2004年には「Chronicles: Volume One」とタイトルされた「自伝」が発売されています。これもディランらしいものになっていて、時系列にはバラバラで一部の時期だけ詳しく書かれていて、個人史を俯瞰することはできませんが、貴重な証言として内容の濃いものになっています。なお、Volume Twoが出版されるかは未定です。
2006年になると、5年ぶりの新作アルバムの制作が始動します。今回もプロデューサーはJack Frost (ディランの別名)でセルフ・プロデュースを選択しています。また、バンドも前作同様にツアー・メンバーを起用しました。1月下旬からリハーサルを開始し、2月になるとスタジオに入りますが、曲のイメージがなかなか定まらず試行錯誤が繰り返され、収録には2月一杯が必要でした。
内容は前作よりもさらに古い音楽や詩にインスパイアされたものが中心となっていて、今となっては「古き良き時代」を思わせますが、その時点では「現代風」だった、つまりレトロ・モダンな内容と言えそうです。
ミディアム・テンポの古いロックン・ロール「Thunder on the Mountain」でスタートし、「Spirit on the Water」で甘い感じのスウィングに身を委ねます。スライド・ギターのリフが効いている「Rollin' and Tumblin'」は古典的なシカゴ・ブルースのカバーで、「When the Deal Goes Down」もムーディなカントリー調のワルツ。「Someday Baby」は再びシカゴ・ブルースで、「Workingman's Blues #2」では労働者の尊厳を歌い上げます。
古いハワイアン調の「Beyond the Horizon」、ディラン流の極上のエレジーである「Nettie Moore」、メンフィス・ロックン・ロールの「The Levee's Gonna Break」と続きます。そしてアルバムの最後を飾る「Ain't Talkin'」は、荒廃した世界を歩き続ける巡礼者を描いた9分に及ぶダークなバラードです。
8月に発売されると、高く評価され、中にはディランの最高傑作とまで褒める評論家もいました。またビルボード誌で初登場1位を獲得し、21世紀のディランの存在感をさらに強めることになりました。
その一方で、クレジットは「All Songs Written by Bob Dylan」となっているものの、いずれの曲にも、古い詩からの引用、古い曲のコード進行の借用あるいはフレーズの模倣などが含まれていることが問題視されました。よく言えば「コラージュ」ですが、悪く言えば「盗作」または「替え歌」、今どきの言い方なら「パクリ」です。
メディア各社は、どこから引用したかを探すことと、それをもとに批判する記事を展開しました。それに対して、これらはオマージュであると擁護する記事もあり、ちょっとした論争が巻き起こりました。
この手の議論は、多くの事例がありますが、もともと地域に土着で発展したルーツ音楽は、他人の模倣をベースにしています。黒人のブルース、ゴスペル、白人のフォーク、カントリーなどは古いものから「盗む」ことが加わって新しいものに変わっていくのです。ブルース、ロックン・ロールのコード進行は基本的に同じで、歌のメロディもわずかな違いしかありません。
ディランは、歌手として世の中に登場して以来、このような引用は普通に行ってきたことで、自らも天性の「メロディ・メーカー」ではないことを認めています。後年、ジョニ・ミッチェルがディランを「盗作者」と批判したのも、これらの議論があってのことかもしれません。ただ、それを再解釈・再構築する才能はディランだけのものであり、多くのミュージシャンや文化人からは擁護する意見が多かったようです。
Thunder on the Mountain
Spirit on the Water
Rollin' and Tumblin'
When the Deal Goes Down
Someday Baby
Workingman's Blues #2
Beyond the Horizon
Nettie Moore
The Levee's Gonna Break
Ain't Talkin'
Bob Dylan (vo, g, harmonica, pf)
Denny Freeman (g), Stu Kimball (g), Tony Garnier (b, cello)
Donnie Herron (steel guitar, violin, viola, mandolin)
George G. Receli (ds, perc)
February, 2006 New York City
☆☆☆☆☆☆☆☆・・
February, 2006 New York City
☆☆☆☆☆☆☆☆・・
2026年8月30日日曜日
Love & Theft (2001)
ボブ・ディランの「Never Ending Tour」は、もちろん別々のツアーの積み重ねですが、一つが終わっても次がもう決まっていて、大きな区切りというものがありません。歌手として歌い続けるのは当たり前ですが、昨日のセットリストと今日の物が違っていたり、今日の演奏と明日では同じ曲名でもテンポやアレンジが変更されたりするというのが特徴的です。つまりライブ演奏は、過去の再現ではなく、その瞬間の即興・創作であるという考え方が基本にあります。
1996年に80公演、1997年は入院しているにも関わらず93公演、1998年に110公演、そして1999年はおそらく最多の119公演をこなしています。2019年までは平均100公演程度、コロナ禍はさすがに激減ですが、2022年以後も現在まで毎年80公演程度を続けています。
1999年は特別なステージが2つありました。まず記憶に残るのは、6月から9月にポール・サイモンがジョイントしたツアーです。両者が別々にステージに立ったのですが、ディランのセットにサイモンが加わり数曲を一緒に演奏しています。特に名曲「Sound of Silence」のデュエットには驚きます。さすがにディランは、自分をおさえてサイモンに寄せているのが微笑ましいのですが、ハーモニカのソロは好きにやっている感じです。
そしてもう一つは、6月30日にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われたエリック・クラプトンが主宰した「E.Clapton & Friends in Concert: A Benefit for the Crossroads Centre at Antigua」への出演です。クラプトンが薬物依存克服のために創設したCrossroads Centreへの支援イベントですが、数年ごとに継続的に開催される第1回目の特別ゲストがディランでした。
自分の曲はともかくも、何とディランが歌う「Crossroads」はここでしか聞けません。また、ディランもクラプトンもギターはストラトキャスターを使っているので聞き分けにくいのですが、ディランが控えめなギター・ソロをとるというのも、たぶんなかなか聞くことはありません。
2000年には映画「ワンダーボーイズ」の主題歌として、新曲「Things Have Changed」をツアー・メンバーと録音しています。アカデミー賞歌曲賞やゴールデングローブ賞主題歌賞を受賞し、後にライブの定番曲になりますが、映画のサウンドトラック以外ではディラン自身のベスト盤でしか聴くことができません。
気がつくと21世紀、ディランも2001年に還暦を迎えました。ライブ演奏は盛んな一方で、1997年の「Time out of Mind」以後は、ベスト盤が数種類リリースされただけで、再び新作からは遠ざかっていました。
これまでのアルバム制作では、基本的にツアー・バンドのメンバーはほとんど参加していませんでした。しかし、ディランは自分の気まぐれに完璧に即応できるメンバーの実力を高く買っており、そのままステージの即興性をスタジオに持ち込むというアイデアが生まれてきました。前作ではディランは、共同プロデューサーとしてJack Frostという偽名を使っていたのですが、今回はFrost名義で単独のセルフ・プロデュースすることにしました。
タイトルの「愛と盗用」は、エリック・ロットの本から引用されていて、タイトルが示す通り古いブルース、ジャズ、カントリー、トラディショナルだけでなく文学などからも言葉やフレーズを愛情をもって取り込んで再構築した楽曲が並んでいます。
2000年には映画「ワンダーボーイズ」の主題歌として、新曲「Things Have Changed」をツアー・メンバーと録音しています。アカデミー賞歌曲賞やゴールデングローブ賞主題歌賞を受賞し、後にライブの定番曲になりますが、映画のサウンドトラック以外ではディラン自身のベスト盤でしか聴くことができません。
これまでのアルバム制作では、基本的にツアー・バンドのメンバーはほとんど参加していませんでした。しかし、ディランは自分の気まぐれに完璧に即応できるメンバーの実力を高く買っており、そのままステージの即興性をスタジオに持ち込むというアイデアが生まれてきました。前作ではディランは、共同プロデューサーとしてJack Frostという偽名を使っていたのですが、今回はFrost名義で単独のセルフ・プロデュースすることにしました。
タイトルの「愛と盗用」は、エリック・ロットの本から引用されていて、タイトルが示す通り古いブルース、ジャズ、カントリー、トラディショナルだけでなく文学などからも言葉やフレーズを愛情をもって取り込んで再構築した楽曲が並んでいます。
「Tweedle Dee & Tweedle Dum」はルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」に登場する双子ですが、不条理な世界をダークに歌います。再起を歌う「Mississippi」は前作で試された曲をアレンジを変えて再録音したもの。若者たちが跳ねるように踊った50年代のロカビリー調の「Summer Days」、戦前のスイング・ジャズのような「Bye and Bye」、シカゴ・ブルースの荒々しいスタイルの「Lonesome Day Blues」、やはり戦前のパリあたりのカフェで流れていそうな「Floater」と続きます。
チャーリー・パットンに捧げられた「High Water」は、カントリー調のバンジョーが効果的です。「Moonlight」は古いジャズ・スタンダードのような甘い雰囲気を持ち、スライドギターが全体を引っ張るブルース・ロックの「Honest with Me」、「Po' Boy」も戦前のジャズ・クラブの雰囲気です。「Cry a While」は泥臭いブルースで、「Sugar Baby」で静かにフィナーレを迎えます。
5月の2週間弱の間に1日1曲ペースで録音されていったもので、これだけバラエティに富んだ構成ながら、トータルには納得してしまう出来となっているのはJack Frost恐るべしというところ。即興性を重視しながら、ツアー・バンドのメンバーの実力も確かなものであることの証明にもなりました。
9月に発売されると、音楽各誌で高い評価を受け、第44回グラミー賞で最優秀コンテンポラリー・フォーク・アルバム賞を受賞しています。前作に続いて、まだまだディランは「生きた音楽」を作り出す「現代に生きるミュージシャン」であることがはっきりしました。
Tweedle Dee & Tweedle Dum
Mississippi
Summer Days
Bye and Bye
Lonesome Day Blues
Floater (Too Much to Ask)
High Water (For Charley Patton)
Moonlight
Honest with Me
Po' Boy
Cry a While
Sugar Baby
Bob Dylan (vo, g, pf)
Larry Campbell (g, banjo, mandolin, violin), Charlie Sexton (g)
Augie Meyers (accordion, org), Tony Garnier (b)
David Kemper (ds), Clay Meyers (perc)
May 8 ~ 21, 2001, New York City
☆☆☆☆☆☆☆☆・・
May 8 ~ 21, 2001, New York City
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2026年8月29日土曜日
Time out of Mind (1997)
1994年から1996年の間にリリースされたボブ・ディランのアルバムは、「MTV Unplugged」だけでオリジナル・アルバムはありません。ディランはこの間もひたすらステージに立ち、歌い続ける毎日をこなしていました。
1988年6月から始まったとされている「Never Ending Tour」は1988年は71回、以後100回、93回と続き、バンド・リーダーのG.E.スミスの脱退で、いったん一区切りがつきます。1991年からは、ツアーに個別のタイトルが冠せられるようになりますが、世間はいつのまにかディランのツアーを「Never Ending」と呼ぶことが慣例になりました。
1991年には101回、以後も92回、80回、104回と続き、1995年には115回を数えます。これはある意味驚異的なことで、喉を酷使する歌手が、ほぼ3日に1度はステージに立ち続けるということは健康面だけをとっても強靭な体力を必要とすることは容易に想像できます。
一方で、1990年の不評だった「Under the Red Sky」以後オリジナルの新曲を発表していないことについて、ディラン自身は以前のように次から次へと曲が頭に浮かんでこないことを認めていて、「思いついても聴きたい人がいるのかと考えているうちに消えてしまう」と述べています。それでも、1996年になると少しずつオリジナル曲が新たに出来上がり始めます。
オリジナル曲でアルバムを作るとなると、1989年の「Oh Mercy」を成功に導いたダニエル・ラノアとの再タッグが必要だとディランは考えました。ディランはラノアにデモを聞かせ、50年代の古いブルースの響き(まさにディランのルーツの一つ)を持ったアルバムを作りたいと伝えます。4月から7月までの北米・ヨーロッパを周るツアーがひと段落し、10月からの全米ツアーが始まる合間に、ディランとラノアはニュー・アルバムに向けての準備に入ります。
通称「シアトロ・セッション」と呼ばれるプリ・プロダクションが行われ、アルバムに含める含めないは関係なく多くの新曲が録音され、現在では「The Bootleg Series Vol.17 Fragments Time out of Mind Sessions」でほとんどが聴くことができます。例によって、アルバム未収録の完成度の高い楽曲が目白押しですが、これだけ曲を作っておいてあまり意欲が無いみたいなこと言うのがディランという人物の難しい所です。
年が明けて1997年1月に、いよいよ本格的なレコーディング作業が再開されました。ラノアの特徴である音空間の雰囲気作りのため、一つの楽器に対して複数のミュージシャンが用意され、時には同時に演奏することで音に厚みを付けていきました。お互いの出方がわかっているので、「Oh Mercy」の時ほどの衝突はなかったようですが、かなりの議論はあったらしい。ディラン自身は、過去の作品を超えられないかもという不安との戦いだったようです。
それでも、アルバムに収録される全11曲が完成し、ディランは2月からのツアー生活に戻っていきました。この時の公演は2月に前年に続いて日本から始まり、しかも各地を周るもので、3月の休養を挟んで4~5月は再び全米というスケジュールでした。1992年からパワフルなドラミングを聞かせていたウィンストン・ワトソンは1996年夏まで活躍し、以後ドラムはデヴィッド・ケンパーに交代しています。また、1991年からディランを支えたジョン・ジャクソン(g)も日本公演までで、全米ツアーからは新たにラリー・キャンベルが加わりました。
6月以後、ヨーロッパに渡る予定でしたが、5月末にディランは病気に倒れてしまいます。強い胸痛と高熱からカビの一種であるヒストプラズマ感染症と診断され、一時は心膜炎併発により、本人も「エルヴィスに会うのか」と覚悟するほど重篤になります。さすがに50代後半になったディランは、心身の疲労の蓄積は隠せなくなってきているようです。
それでも8月にはステージに復帰し、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の招待に応じて、9月27日にはイタリアのボローニャで開催された「第23回国際聖体大会」で、教皇を前にして演奏を行いました。教皇はその後、「人が歩むべき道はキリストの道だけ。答えは人を神へと導く聖霊の風の中にある」と「Blowin' in the Wind」の歌詞を引き合いにスピーチを行いました。
9月30日にニュー・アルバム「Time out of Mind」がLPレコード2枚組、CDでは目一杯の約73分収録の1枚組として発売されました。タイトルは「(古いブルースの味わいを持つ)記憶にないほどの昔」という意味で、ジャケットにはラノア撮影のスタジオのディランの写真(またピンボケ)が使われました。アルバムは商業的に大成功で内容も高い評価を受けることになり、1998年のグラミー賞では年間最優秀アルバムなど複数の部門で受賞を果たし、間近に迫る21世紀に向けてスランプ期終了・完全復活を印象付けました。
「Love Sick」でいきなり不穏なダークな雰囲気でアルバムの世界観を提示し、ロカビリー調、バラード、ブルースと続きます。ヒット曲「Knockin' on Heaven's Door」ではドアはすでに閉じていましたが、「Tryin' to Get to Heaven」はそのドアが閉ざされる前に天国を目指す男(自分?)の歌です。「Not Dark Yet」は特に評価が高く、「まだ暗くないが、もうじき暗くなる」という人生の終点を意識した歌になっています。
「Make You Feel My Love」は自らピアノを弾き、日本では映画「七つの会議」の主題歌になりましたし、ブライアン・フェリー、ビリー・ジョエルやアデルらがカバーしたことでも知られるラブ・ソング。ラストは16分の長い「Highlands」で、典型的なゆったりしたブルース・リフに乗せて理想郷への思いを散文詩的に歌い続けるのですが、聴いているうちに癖になってくる不思議な曲です。
Love Sick
Dirt Road Blues
Standing in the Doorway
Million Miles
Tryin' to Get to Heaven
'Til I Fell in Love with You
Not Dark Yet
Cold Irons Bound
Make You Feel My Love
Can't Wait
Highlands
Bob Dylan (vo, g, harmonica, pf)
Bucky Baxter (aco.g, pedal steel), Brian Blade (ds)
Robert Britt (g), Cindy Cashdollar (slide g), Jim Dickinson (key)
Tony Garnier (b), Jim Keltner (ds), David Kemper (ds)
Daniel Lanois (g), Tony Mangurian (perc), Augie Meyers (org)
Duke Robillard (g), Winston Watson (ds)
August ~ October 1996, January 1997
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August ~ October 1996, January 1997
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2026年8月28日金曜日
バーミヤン @ 多摩区長沢
久しぶりにファミレスに行きました。
中華のバーミヤンです。最近はなかなかバカにならないと評判だと聞きます。
頼んだのは、今のご時世流行している麻辣系でタンメンです。
追加の麻辣オイルが付いてきて、好きなだけかけてくださいというスタンス。
辛さなどを自分の好みにできるのはいいんですが、これがあまり辛くない。たくさんかけたくても油ですから、ちょっと気が引ける。
むしろ普通のラー油の方が辛い気がしました。
味は、まぁ、普通に美味しいです。それほど文句はありません・・・なんですが、バーミヤンなら安いというイメージがあるので、これで税込み1000円超えるのは・・・・ご時世なのでしかたがない。
会計はセルフレジです。コロナ禍の時なら、人との接触を減らすということで理解できる。
人件費削減ということなんでしょうけど、今はむしろ時間がかかるだけで、客のメリットは少ないかもしれません。
2026年8月27日木曜日
ディランをカバーする
音楽に携わるアーティストは、誰もが自ら音楽を作っているとは限りません。自作自演するシンガー・ソングライターは、いまでこそ普通の存在ですが、以前は作曲家、作詞家、歌手は別々というのは普通の事でした。1960年代に入って、自らの主張を歌に乗せる動きが加速し、その中心にいた人物の一人がボブ・ディランでした。
ディランは、多くのアーティストに影響を与え続ける音楽界の巨人ですが、その登場の初期からディランの楽曲をカバーする動きは始まっていました。ジョーン・バエズ、ピーター・ポール&マリー、ザ・バーズらを中心に、積極的にディランをカバーしたことが、むしろディランの知名度を上げ人気を高めたことにつながったことは間違いがありません。70年代以降になると、ディランのカバーはリスペクトによるものが多くなり、現在までその流れが続いています。
初めてディランのカバー曲に接したのは、エリック・クラプトンの「Knockin' on Heaven's Door」でした。またディラン自身の演奏はありませんが、クラプトンの「Sign Language」もディランの名曲の一つだと思います。カバーというのも、音楽の楽しみ方の一つとして是非おさえておきたいポイントです。
最も多くのアーティストがカバーしたのはThe Beatlesの「Yesterday」で推定数千回以上と言われていますが、ディランのカバーをしたアーティストはいったいどのくらいいるのでしょうか。そしてカバーされた楽曲はどんなものが多いのでしょうか。これを知るのはかなり難しいと思いきや、実はネットの百科事典「Wikipedia」に、まさにこの単独の項目(List of artists who have covered Bob Dylan songs)があります。
完全なリストを作ることは、日々どんどん動いていることなのでおそらく不可能。ただし、大雑把な傾向は把握できますので、検討する価値があります。掲載されているリストは、商業的にリリースされたものだけが含まれていて、ライブなどで披露しただけとか、アマチュアの演奏は除かれています。
まず、アーティスト別のベスト10です。
1位は30曲のジョーン・バエズ。順当な結果で、全キャリアの中で、時々ディランの歌を取り上げていました。驚いたことに30曲で同率1位となったのが、ジュリー・フェリックス。実はよく知らなかったのですが、主に60年代半ばから70年代に、イギリスのフォーク界のレジェンドとして活躍された女性です。ソプラノのバエズに対してアルトの音域で、一音一音をしっかり歌うタイプです。1964年のデヴュー・アルバムで、すでに「Masters of War」、「Don't Think Twice, It's Alright」を取り上げています。
3位はフランス人のユーグ・オーフレイの24曲。ディランと直接の親交があり積極的に難解な歌詞をフランス語に翻訳して歌いました。4位はイギリスのスティーブ・ギボンズで23曲。ロックンロール・バンドを転々とし、1998年からディランのカバーのためのDylan Projectを結成しました。
5位はアメリカのフォーク・シンガーのジュディ・コリンズで22曲。6位はイギリスのバーブ・ジャングで19曲。7位はドイツのロックバンドBAPのリーダー、ヴォルフガング・ニーデッケンの18曲で、これら上位に入っているアーティストは、「××ディランを歌う」のようなタイトルのアルバムがあります。
同じ18曲で同率7位には、やっとThe Byrdsが登場します。この後10曲以上の有名どころの名前を拾ってみると、ブライアン・フェリー、フェアポート・コンベンション、マリア・マルダー、グレイトフル・デッド、ベン・シドラン、マウンテン、ニッティ・グリッティ・ダート・バンド、ジョー・コッカー等々が気になるところでしょうか。
さらに続けると、The Band、ピーター・ポール&マリー、ランブリン・ジャック・エリオットが9曲、ピート・シガー、クリッシー・ハイド、リッキー・ネルソンが8曲、エリック・クラプトン、ロッド・スチュワートが7曲などが登場してきます。
後は名前だけ挙げておくと、ニーナ・シモン、パティ・スミス、エルビス・プレスリー(4曲!!)、ジョージ・ハリスン、リンダ・ロンシュタット、エミルー・ハリス、ジョニー・ウィンター、ウィリー・ネルソン、ビリー・ジョエル、トム・ペティ、イエス、スティービー・ワンダー、ブルース・スプリングスティーン、ベット・ミドラー・・・もうキリがありません。
では、カバーされた曲を見ていきます。
1位「Blowin' in the Wind」66回、2位「Don't Think Twice, It's Alright」48回、3位「I Shall Be Released」40回、4位「Mr.Tambourine Man」39回、5位「The Time They Are A-Changin'」38回、6位「Like a Rolling Stone」35回、7位「All Along the Watchtower」34回、8位「It's All Over Now, Baby Blue」31回、9位「Just Like a Woman」29回、10位「Girl from the North Country」28回、というところがベスト10です。
だいたい有名曲ばかりが並びますが、全般的に60年代の曲がほとんどです。意外だったのは「A Hard Rain's a-Gonna Fall」が3回しかありませんでした(微妙な違いで少し増えるかもしれません)。
カバーの定番としてよくあげられるのは、Guns N' Rosesの「Knockin' on Heaven's Door」やジミ・ヘンドリックスの「All Along the Watchtower」、アデルの「Make You Feel My Love」などがありますが、日本語カバーとなるとRCサクセションの「Blowin' In the Wind」、「I Shall Be Released」、桑田佳祐の「Like a Rolling Stone」などが思いつきます。
名演として注目されるのはジョージ・ハリスンの「If Not for You」やブライアン・フェリーの「Positively 4th Street」、Pretenders (クリッシー・ハイド)の「Forever Young」などがありますが、ちょっと興味深いものだとロバート・プラントの「One More Cup of Coffee」やRolling Stonesの「Like a Rolling Stone」も是非聴いておきたい。
ずらずら書き並べましたが、いちいち探すのは面倒だという方に向けた便利なアルバムがあります。2012年に発売された「Chimes of Freedom」というカバー曲集のアルバムで、何とCD4枚組、5時間以上、全73曲というボリュームですが、現在も実売4000円以下の良心的な価格で手に入ります。
これは人権擁護団体アムネスティが創立50周年を記念した企画として制作されたもので、売り上げはすべてアムネスティに寄付されます。50周年がディランのデヴューと一致したこと、ディランの「Chimes of Freedom」の弱者に寄り添う内容がアムネスティの理念の象徴とされたことなどがきっかけで、ディランもオリジナルの音源を提供しています。
参加アーティストには、アデル、シュガーランド、スティング、マルーン5、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ、デイヴ・マシューズ・バンド、シルヴァーサン・ピックアップス、アヴェット・ブラザーズ、ラファエル・サディーク、マイリー・サイラス、ケシャ、パティ・スミス、エルヴィス・コステロ、バッド・レリジョンなど有名無名さまざまですが、わざわざこのために新たに録音した演奏は聴きごたえがあります。
本家の歌い方でわかりにくかったメロディがすっきりしたりするというメリットもありますが、この曲にはこんな解釈があったのかというような驚きもあります。聴きなれた曲にも新しい発見があったりするので、他人が演奏するディランの曲を探すのも楽しみの一つです。
本家の歌い方でわかりにくかったメロディがすっきりしたりするというメリットもありますが、この曲にはこんな解釈があったのかというような驚きもあります。聴きなれた曲にも新しい発見があったりするので、他人が演奏するディランの曲を探すのも楽しみの一つです。
2026年8月26日水曜日
ディランは歌が下手なのか
初めてボブ・ディランの歌を聴いた時、多くの人は違和感を抱くと思います。そういう自分もそうでした。えっ、この人、歌は下手糞じゃない? と言いたくなる。
その理由は、いろいろありそうですが、最も大きな理由になっているのは、歌い方と声だと思います。長く歌い続けているアーティストですから、年齢的な変化もありますが、時代によって意図的に自ら変えている部分が大きい。
もともと、トーキング・ブルースという歌い方があります。これは「語るようにブルースを歌う」というものですが、アメリカのルーツ音楽として伝統的な歌唱法の一つです。メロディ通りに音符に言葉を乗せることをせず、伴奏(たいていギター)に合わせて、ほとんど喋り続けるというもの。
1920年代にアメリカ南部で始まったと言われていますが、これを継承したのがウッディ・ガスリーでした。語られるのはほとんどが社会風刺的な内容だったので、フォーク・ソングとして反体制的なプロテスト・ソングの土台になったことは容易に想像できます。この世界にガスリーの模倣から入ったディランは、当然このスタイルも自分のものとしていきます。
メロディはあっても、音符通りに歌い出さなかったり、まだ譜面上は音符があるはずなのに早くに歌い終わったりする、また音符に対して歌詞が字余りだったりするのも、もとはと言えばトーキング・ブルースのスタイルから来ているのではないでしょうか。
その結果として、ディランの歌詞はかなり自由度が高い。無理にメロディに乗せる必要が無いので、言いたいことがあれば好きなだけ歌い続けられるのです。後年、自分の曲でさえ、まるで何の曲かわからないほどメロディを変えて歌うのも、このようなベースがあるためだと思います。
ディランをアメリカが生んだ最高のミュージシャンの一人にしたのは、そのような先人から受け継いだ自由度の高い歌い方に、時代の空気を取り込み独自の文学的な言葉を紡ぐ才能に秀でていたからに他なりません。愛だとか恋だとか、あるいは一時的な感情だけを歌うポピュラー・ソングの世界を、芸術的な高い次元に引き上げると同時に一般にも広く受け入れられるものへと昇華させた功績は誰にも真似できないものだと言えます。
もう一つの特徴が声です。はっきり言って美声とはとても言えない。若い時から、少し鼻にかかったような濁声でした。盟友ジョーン・バエズとは見事に対照的ですが、逆に人々が親しみやすいという効果があったのではないでしょうか。また、大きな声を出しても声質が変わらないという利点もあるかもしれません。
フォーク期はあきらかにガスリーに寄せていた部分があると思いますが、ロック化するとこのざらざらした声が激しいリズムにぴったりで、無理なくシャウトする感じが見事にはまります。
しかし、60年代後半になると、突如としてカントリー調の「つんつるてん」のクルーニングの発声方法を始めました。70年代なかばに元の発声に戻りますが、激しいシャウトと同時にこの頃から歌詞の文節の終わりを投げ捨てるような歌い方が目立ち始めます。
1987年にステージ上で突然新しい歌い方を閃いたというエピソードがありますが、本人が詳しくは語っていないので詳細は不明ですが、おそらく喉を絞るような歌い方から鼻に声を溜めるような方法ではないでしょうか。その後、加齢とともに声のしゃがれ感と鼻声感が強まって、ディランにしか出せない「味」は究極のものになっているわけで、これがはまると癖になるポイントです。
ディランにとって、「美しいメロディ通りに歌う」ことが歌ではなく、「言葉を伝えるための手段」であり続けました。声楽的な発声法からは、確かに「下手」だろうとは思いますが、歌を用いた表現力という観点からはポピュラー音楽史上最も偉大なシンガーの一人と呼ばれることに異論はありません。
2026年8月25日火曜日
ディランのFilmography
ボブ・ディランの映像作品はたくさんありますが、自身が関わった「公式」なものに絞って整理します。基本的には、ライブ演奏、ドキュメンタリー、そして(困ったことに)俳優として出演した映画に分けられます。純粋なライブについては、そのキャリアからすると意外と多くはなく、それぞれのアルバムとして評価するので、ここではタイトルを示すだけにしておきます。
1967 Dont Look Back
1972 Eat the Document
1973 Pat Garrett & Billy the Kid (Movie)
1978 Renaldo and Clara
1986 Live in Australia
1986 Hearts of Fire (Movie)
1992 30th Anniversary Concert Celebration
1995 MTV Unplugged
2003 Masked And Anonymous (Movie)
2005 No Direction Home
2007 The Other Side of the Mirror
2017 Trouble No More
2019 Rolling Thunder Revue A Bob Dylan Story
2017 Trouble No More
2019 Rolling Thunder Revue A Bob Dylan Story
2021 Odds and Ends
2021 Shadow Kingdom
一番最初に登場した「Dont Look Back」は、D・A・ペネベイカーが監督した1965年春の初のイギリス・ツアーの模様を収めたドキュメンタリー映画で、1967年に劇場公開されました。「Don't」ではなくアポストロフィは意図的に抜かれています。このツアーはすでに電気楽器導入を始めていたディランにとって、最後のアコースティック・ツアーでした。インタビューに答える尖ったディランも興味深く、隙間風が吹き始めたジョーン・バエズとの関係も捉えています。
一番最初に登場した「Dont Look Back」は、D・A・ペネベイカーが監督した1965年春の初のイギリス・ツアーの模様を収めたドキュメンタリー映画で、1967年に劇場公開されました。「Don't」ではなくアポストロフィは意図的に抜かれています。このツアーはすでに電気楽器導入を始めていたディランにとって、最後のアコースティック・ツアーでした。インタビューに答える尖ったディランも興味深く、隙間風が吹き始めたジョーン・バエズとの関係も捉えています。
現在ではDVD、Blurayで手に入りますが、初出時は新書サイズの写真集や、世界初のミュージック・ビデオとなった「Subterranean Homesick Blues」をパラパラマンガとして見られるオマケも付属していました。フォークからロック・スターに変貌する直前の様子が、見事に映像化されていてファンにはマスト・アイテムです。
ところがディラン自身はこの作品の出来に満足できず、自ら編集し直して作られたのが「Eat the Document」ですが、一貫性の無い内容に公開を控える劇場が続出したらしい。その後もメディア作品としてはまったく手に入りませんが、ネットでは低解像度の動画を見ることが可能です。
1973年のサム・ペキンパー監督作品「ビリー・ザ・キッド」は、ディランは音楽を担当するだけのはずだったのが、ペキンパーに何故か気に入られ、わざわざ追加の役を用意されたという面白い経緯で出演しました。当然演技はド素人で、見るべきものはほぼ無いと言ってよい。
作品は、1972年11月から翌年3月までかかって撮影されましたが、監督と映画会社の間で予算をめぐるトラブルが山積して、最終的に短縮したものが監督抜きで編集・公開されたため、低評価に終わります。しかし、その後監督の考えが反映されたフィルムの再発掘により見直されています。
「Renaldo and Clara」はディランが監督し、形だけの脚本家として俳優のサム・シェパードが登用された映画(?)らしきもの。1975年10月から12月にかけて第1期「Rolling Thunder Revue」ツアーの最中に撮影されました。実際のディランの妻であるサラとジョーン・バエズが妻(クララ)と愛人の役という、常人では思いつかない配役です。
意味不明の即興劇的なフィクションとステージのライブ映像が交錯して、1978年の公開時に何と4時間という長さでは低評価は当然の結果です。メディア作品はありませんが、ヨーロッパでテレビ放送(!)された録画が出回っています。英語のセリフがよくわかりませんので、ステージでの演奏シーン以外は見ていて苦痛と言わざるを得ません。
1986年撮影、1987年公開の映画「Hearts of Fire」はリチャード・マーカンドが監督し、ディランと当時バッキング・ボーカルにしばしば登場していたフィオナ(フィオナ・フラナガン)が主演しました。かつて大スターだった隠遁中のミュージシャン(ディラン)と、ツアー中に彼と出会う若い女性ロッカー(フィオナ)を描いた音楽映画で、これもまたあまりパッとした成績は残していません。ただし、サウンドトラック盤はここでしか聞けないディランの曲があり、貴重性もあって楽しめます。
どうしたって演技力をディランに期待するのは無理というものですが、2002年にまたもや映画出演したのが2003年公開の「Masked And Anonymous」で、邦題は「ボブ・ディランの頭の中」というあまりと言えばあまりなタイトル。監督はラリー・チャールズ。内戦状態のアメリカを想定した架空の国を舞台に、仮出所した伝説のミュージシャン、ジャック・フェイト(ディラン)が国を立て直すという不思議で難解な内容で評判は良いはずがない。
ただし、何故かジェフ・ブリッジス、ペネロペ・クルス、ジョン・グッドマン、ヴァル・キルマーなどの有名俳優が大挙して出演したことと、ディランの演奏シーンだけが記憶に残ります。なお、オープニングのテーマ曲は何と真心ブラザースが歌う、日本語の「My Back Pages」です。
2005年の「No Direction Home」はテレビ用に作られたマーティン・スコセッシ監督によるドキュメンタリーで、ディランのデヴュー直前からバイク事故で表舞台から消えるまでが描かれています。このために珍しくディラン本人がインタビューに答えていたり、ジョーン・バエズ、アレン・ギンズバーグ、ピート・シーガー、アル・クーパーといった重要な関連人物の証言も交えて、当時の様子が生々しく再現された音楽ドキュメンタリーの傑作と言われています。
マーティン・スコセッシはThe Bandの解散コンサートを映画化した「The Last Waltz」を監督していて、実力のある映画監督の中でもディラン周囲の理解が深かったことが起用された大きな理由になりました。「Dont Look Back」の未公開フィルムや、ディランの手元にあった膨大なフィルムから3時間半におよぶ映像が再構築されました。
特に1966年のThe Band (当時はレヴォン・ヘルム抜きのThe Hawks)を従えたイギリス・ツアーで、フォークからロックに転向した直後で観客の戸惑いが浮き彫りになっています。観客から「ユダ! (裏切り者)」と罵声が飛ぶ瞬間がスリリングです。DVD、Blurayでも発売されていて、また貴重な音源がサウンドトラックとして「The Bootleg series vol.7」に収録されています。
「The Other Side of the Mirror」に収められたのは、1963年から1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルに出演したディランの映像です。1963年の初々しいバエズとのデュエットは興味深いのですが、一番素晴らしいのは1965年のステージで、突然、エレキギターで登場し、初めてロック宣言をした映像です。まさに歴史が動く瞬間を、DVDやBlurayで見れると言うのは驚きを越えて素晴らしい事です。
宗教色に染まったディランを見事にとらえたのがテレビ用に作られた「Trouble No More」で、「The Bootleg Series Vol.13」の付属DVDで初めて一般に見直されることになりました。ライブ演奏と俳優マイケル・シャノンによる説法が交互に入る形で、キリスト教布教活動真っ最中という感じですが、演奏内容は悪くはありません。
2019年に突如Netflixに登場したのが、1975年の第1期ローリング・サンダー・レヴューのドキュメントです。監督は再びマーティン・スコセッシ。40年以上謎に包まれていた、伝説のツアーの演奏シーンだけでなくバックステージの映像が残っていたことに驚きますが、これというのも「Renaldo & Clara」の撮影フィルムが大量にあったからです。わけがわからないフィクション部分は除いて、純粋にドキュメンタリーとして再構築された映像は見ごたえがあり、2時間半が短く感じられるほどです。
ただし、ここに監督の仕掛けがあって、実はこの作品はフィクションとノンフィクションを巧妙に混ぜ合わせたモキュメンタリー作品です。ジョルジュ・メリエスの無声映画の人物消滅の手品映像から始まり、すでにこの作品には仕掛けがあることを明示しているのです。女優シャロン・ストーンや架空の人物へのインタビューは、まったくの作り事だったりします。そのような悪ふざけに付き合いながら、狂乱のツアーの雰囲気をDVD、Blurayで感じることができます。
今のところ、現時点で最新の公式ドキュメンタリーは2021年の「 Odds and Ends」で、デジタル配信されネットで見ることができます。タイトルは「残り物」という意味で、まさに未公開秘蔵映像の集大成的な作品です。新しい映像も含まれますが、あくまでもこれまでの映像作品を補足するような位置づけで、見て損はないという程度のものだと思います。
その他、ディランが登場する主だったイベントの多くがテレビで放送されたため、画質にこだわらなければほとんどの映像はネットで見ることができます。良い時代になったというべきか、アーティスト泣かせというか・・・まぁ、楽しみはいくらでもあるということです。
その他、ディランが登場する主だったイベントの多くがテレビで放送されたため、画質にこだわらなければほとんどの映像はネットで見ることができます。良い時代になったというべきか、アーティスト泣かせというか・・・まぁ、楽しみはいくらでもあるということです。
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