現代日本の巨匠と呼べる映画作家の一人が黒沢清。いずれの作品も独特の世界観がありますが、主として社会性メッセージを込めたホラー風のストーリーが多い。この映画も、一見クライム・サスペンスのようにも見えますが、登場人物たちの行動は底知れない恐怖を感じさせるものになっています。この作品でも、黒沢清が監督・脚本のいずれも担当しました。
吉井良介(菅田将暉)は、ハンドル・ネーム「ラーテル」を用いて、転売を繰り返していました。ある時は、倒産寸前の町工場の殿山(赤堀雅秋)から、定価40万円の健康器具を3000円で買いたたき、「半額20万」として売り抜けていました。転売業の先輩、村岡(窪田正孝)からは、一緒に大きな仕事をしないかと誘われています。
吉井は工場で働いていましたが、社長の滝本(荒川良々)から、しつこく管理職になって自分のサポートをしてほしいと言われるのがうるさく感じ、会社を辞めて恋人の秋子(古川琴音)と共に、都心を離れた雑木林に囲まれた一軒家に引っ越すのでした。
地元出身という佐野(奥平大兼)をバイトに雇い、転売業は順調のように見えましたが、家の窓ガラスを割られたり、警察に行くと偽ブランド品売買を疑われたり、しだいに周囲に不穏な空気が立ち始めます。
秋子は金回りが悪くなったせいか、出ていってしまいます。佐野がネットを検索すると、「ラーテル」に対する中傷の書き込みがたくさんあり、人物を特定する動きがあることがわかりました。しかし、勝手にパソコンを使ったことで吉井は佐野も追い出してしまうのです。
ネットカフェで生活する三宅(岡山天音)は、何でもいいからどこかに怒りをぶつけたくて、「ラーテル」を潰す裏サイトに参加します。そして、吉井を殺すために集まった人々は、ついに行動を開始するのです。その中には、滝本や殿山も混ざっていました。
最近は、転売屋は大きな社会問題になっています。昔から転売行為はいくらでもありましたが、最近は規模が大きく、人気の最新商品が一般の購買客にまったく手に入らない事態が頻発しています。この作品では、転売を正当化するわけではなく、転売という行為が雪達磨式に膨れ上がり、一度始めると抜けられなくなる怖さ、そして必ずしも安定した利益を得られるものではないことを示しています。
さらに、一歩進んで、個人を簡単に特定してしまうネット社会の中では、転売に限らず意図しない怨みを買うことがいくらでもあることが恐ろしい。実は、佐野というキャラクターは、おそらく意図的にどのような人物が示されていませんが、吉井が潜在的に感じている恐怖を現実化したみたいな存在で、この映画のキーパーソンなのかもしれません。
その一方で、秋子の本性みたいなところは、最初からぷんぷん匂わせているので、結末がなんとなく見えてしまうのは残念なところ。菅田将暉は、この手の役では安定感があります。吉井と面識がなく勢いで参加する三宅という人物は、これもまた岡山天音の得意な範疇の役柄だと思いました。
世の中の「弱者」と呼べる人々の行き場のない怒りの矛先が、何となくいい思いをしているだろうと想像させた特定の一人に向かう怖さを描いた作品ですが、襲う側も襲われる側の両方に感情移入しにくい面があり、何となく違和感を残しました。はっきりとしたて解答が得られないモヤモヤが残るのですが、その不穏な感覚が監督の意図するところであれば作品は成功なのかもしれません。
2025年12月2日火曜日
2025年12月1日月曜日
決戦は日曜日 (2022)
今。話題になっている「君の顔では泣けない」で監督と脚本を担当している坂下雄一郎が、その一つ前にやはり監督・脚本した作品です。日本の政界には二世議員と呼ばれる方が数多く存在しますが、ユーモアと皮肉を込めて(?)その実態に迫る映画になりました。
父親の衆議院議員が病で倒れたため、後援会や市議会議員らの後押しで娘の川島有美(宮沢りえ)が地盤を引き継いで立候補することになりました。父親から引き続き担当する事務所のスタッフは、濱口祐介(小市慢太郎)、岩渕勇気(赤楚衛二)、田中菜慈(内田慈)、そして直接の世話をする秘書として谷村勉(窪田正孝)です。
しかし、政治の世界にはまったく素人で、様々な周囲の人々のしがらみなどまったく気にしない有美は、あちこちでたくさんの問題を起こして、谷村たちをやきもきさせてばかりいるのです。差別的な発言をしたり、突撃ユーチューバーと喧嘩をしてニュースになったりしても謝罪しないため、ついに後援会の重鎮は引き上げてしまいます。
谷村らが一生懸命にお膳立てをして、それらを何とか納めていき、何とか選挙戦に突入します。いろいろあっても、父親への信用から世論調査では楽勝と思われていましたが、公示後に父親のかつての特定企業への口利き疑惑がスクープされてしまいます。さらに、市議会議員や支援する企業の役員たちが、これまでの既得権益を守ることを要求してくるのです。
有美は初めて裏の世界を知り、政治に対して幻滅して立候補を取り下げると言い出すのです。そんなことをされたら、我々は全員仕事が無くなると谷村は必死になだめるのですが、しだいに谷村自身も考えを変えるようになり、有美に「立候補を辞めるわけにはいかないので、落選しましょう」と持ち掛けるのです。
谷村の作戦で、有美は再び暴れまわって、動画をネットに上げます。対立候補の立会演説でヤジを飛ばしたりするのですが、なかなか支持率が落ちません。ついには、父親のスキャンダルの相手が事実を認めてしまい、これで一気に落選に向かうと思ったとたん、北朝鮮がミサイルを発射したことで話題は一気にミサイルに流れてしまうのでした。
もちろん、早くから政治の世界を垣間見て勉強してきた二世の方は大勢いるのでしょうから、この映画を見たら憤慨するかもしれません。ただ、立候補する人が純粋に日本を良くしたいとだけ思っているというのは稀で、おそらくは多くの利権が絡んでいたりするだろうということは普通に想像できることです。
この映画では、本来はブラック・ユーモア的な題材を、ギリギリ表立って笑えるように作ったところが味噌です。それは、宮沢りえとしてはかなり奇抜な演技と、とにかく議員秘書の大変さを具現化した窪田正孝の演技によるところが大きいと思います。
実際に有美のように最初から最後まで本音を言いたくてたまらない議員が増えると、政治はもっと面白くなると思います。ただし、その一方で、そんな人ばかりだとまとまる話もまとまらなくなりそうですから、ある程度のバランス感覚は必要でしょうね。
父親の衆議院議員が病で倒れたため、後援会や市議会議員らの後押しで娘の川島有美(宮沢りえ)が地盤を引き継いで立候補することになりました。父親から引き続き担当する事務所のスタッフは、濱口祐介(小市慢太郎)、岩渕勇気(赤楚衛二)、田中菜慈(内田慈)、そして直接の世話をする秘書として谷村勉(窪田正孝)です。
しかし、政治の世界にはまったく素人で、様々な周囲の人々のしがらみなどまったく気にしない有美は、あちこちでたくさんの問題を起こして、谷村たちをやきもきさせてばかりいるのです。差別的な発言をしたり、突撃ユーチューバーと喧嘩をしてニュースになったりしても謝罪しないため、ついに後援会の重鎮は引き上げてしまいます。
谷村らが一生懸命にお膳立てをして、それらを何とか納めていき、何とか選挙戦に突入します。いろいろあっても、父親への信用から世論調査では楽勝と思われていましたが、公示後に父親のかつての特定企業への口利き疑惑がスクープされてしまいます。さらに、市議会議員や支援する企業の役員たちが、これまでの既得権益を守ることを要求してくるのです。
有美は初めて裏の世界を知り、政治に対して幻滅して立候補を取り下げると言い出すのです。そんなことをされたら、我々は全員仕事が無くなると谷村は必死になだめるのですが、しだいに谷村自身も考えを変えるようになり、有美に「立候補を辞めるわけにはいかないので、落選しましょう」と持ち掛けるのです。
谷村の作戦で、有美は再び暴れまわって、動画をネットに上げます。対立候補の立会演説でヤジを飛ばしたりするのですが、なかなか支持率が落ちません。ついには、父親のスキャンダルの相手が事実を認めてしまい、これで一気に落選に向かうと思ったとたん、北朝鮮がミサイルを発射したことで話題は一気にミサイルに流れてしまうのでした。
もちろん、早くから政治の世界を垣間見て勉強してきた二世の方は大勢いるのでしょうから、この映画を見たら憤慨するかもしれません。ただ、立候補する人が純粋に日本を良くしたいとだけ思っているというのは稀で、おそらくは多くの利権が絡んでいたりするだろうということは普通に想像できることです。
この映画では、本来はブラック・ユーモア的な題材を、ギリギリ表立って笑えるように作ったところが味噌です。それは、宮沢りえとしてはかなり奇抜な演技と、とにかく議員秘書の大変さを具現化した窪田正孝の演技によるところが大きいと思います。
実際に有美のように最初から最後まで本音を言いたくてたまらない議員が増えると、政治はもっと面白くなると思います。ただし、その一方で、そんな人ばかりだとまとまる話もまとまらなくなりそうですから、ある程度のバランス感覚は必要でしょうね。
2025年11月30日日曜日
朽ちないサクラ (2024)
柚月裕子による警察小説が原作。実写化に当たっては、骨格は変わりないもののいろいろと改変がおこなわれているらしいのですが、むしろ登場人物の内面を深く描き出すことに成功したと高く評価されています。
監督はこれが2作目の若い原廣利、脚本は「全裸監督」など多くの作品に携わっている山田能龍本とこの数年注目されている我人祥太が共同であたっています。我人祥太はR-1グランプリ決勝進出の経験もあるピン芸人という異色の経歴の持ち主です。
愛知県の平井中央署管内で、ストーカー被害の受理が遅れ、被害者の女性が殺されてしまいます。犯人として逮捕されたのは、神社の神官を務める男でした。しかし、受理が遅れた理由が職員の慰安旅行だったことが地方紙にスクープされてしまい、多くの非難をうけることになります。署内では、旅行のことを漏らした「犯人」は誰なのか憶測が広がっていました。
愛知県警の広報課では課長の富樫(安田顕)をはじめ、全員が電話対応に追われる中で、一般職員である森口泉(杉咲花)は親友で県警担当記者の津村千佳(森田想)のことを思い出していました。平井中央署の生活課に勤務する磯川俊一(萩原利久)から慰安旅行のお土産をもらったことを千佳に話してしまったことから、記事になってしまったと疑います。そのことを千佳に聞くと、「私ではない。今まで約束を破ったことはない。自分が漏らしたわけでは無いことを証明する」と言って去っていったのです。
数日後、川で千佳の遺体が発見されます。捜査一課長の梶山浩介(豊原功補)は、千佳の携帯の記録などから泉と頻繁に連絡を取り合っていたことがわかったため、富樫同席の上、泉に事情聴取をします。泉は千佳を疑ったことで、何か事件に巻き込まれたのではないかと自分を責め、自分も出来るだけ捜査に協力したいと言い出します。
思いつめている泉を見かねて、富樫は新興宗教の教団施設を見せにいきます。富樫は以前公安職員だったときに、教団が起こした毒ガス散布事件で、自分の軽率な行動が事件の引き金になったかもしれないという話を泉にします。それでも、前を向いていくしかないと言うのでした。
笑顔が無くなった泉を心配して、磯川は相談に乗る形で泉の捜査を手伝います。磯川は同じ職場の辺見(坂東巳之助)の様子がおかしいことに気がつき、ストーカー事件のすぐあとに職場で付き合っていた女性と強引に別れていたことを知ります。その女性の実家を千佳が訪れた可能性があったため、泉と磯川は実家を訪ねますが、千佳の遺体が発見されたすぐ後に女性は自殺していたのです。
基本的には犯人捜し的なクライム・サスペンスの形を取っていますし、実際巧妙に真相を知るためのヒントがあちこちに隠されていて、2時間の枠の中にうまくまとめ上げられた作品となっていると思います。しかし、映画の製作者、そして原作者も一番に描きたかったのは、人が後悔と向き合っていく姿です。
人は自分の行為が悔やんでも悔やみきれない結果につながった場合、どうすればいいのか。泉はどうして親友が死ななければならなかったの真相を追求しますが、それは親友に対する贖罪なのか、それとも親友を信じ切れなかった自分を正当化するためなのかもしれません。具体的な行動をしていない富樫は、「前向きになるしかない」という曖昧な表現にとどめています。
辺見も、その別れた女性も何かしらの後悔をしていました。津村千佳でさえ、親友に疑いを持たせてしまったことを後悔していたことが、事件に巻き込まれていく大きな要因だったと思います。各自の向き合い方を、蕾だった桜が満開になり、そして散り始める情景の中で、しっかりと映画に焼き付けることができた作品だと感じました。
監督はこれが2作目の若い原廣利、脚本は「全裸監督」など多くの作品に携わっている山田能龍本とこの数年注目されている我人祥太が共同であたっています。我人祥太はR-1グランプリ決勝進出の経験もあるピン芸人という異色の経歴の持ち主です。
愛知県の平井中央署管内で、ストーカー被害の受理が遅れ、被害者の女性が殺されてしまいます。犯人として逮捕されたのは、神社の神官を務める男でした。しかし、受理が遅れた理由が職員の慰安旅行だったことが地方紙にスクープされてしまい、多くの非難をうけることになります。署内では、旅行のことを漏らした「犯人」は誰なのか憶測が広がっていました。
愛知県警の広報課では課長の富樫(安田顕)をはじめ、全員が電話対応に追われる中で、一般職員である森口泉(杉咲花)は親友で県警担当記者の津村千佳(森田想)のことを思い出していました。平井中央署の生活課に勤務する磯川俊一(萩原利久)から慰安旅行のお土産をもらったことを千佳に話してしまったことから、記事になってしまったと疑います。そのことを千佳に聞くと、「私ではない。今まで約束を破ったことはない。自分が漏らしたわけでは無いことを証明する」と言って去っていったのです。
数日後、川で千佳の遺体が発見されます。捜査一課長の梶山浩介(豊原功補)は、千佳の携帯の記録などから泉と頻繁に連絡を取り合っていたことがわかったため、富樫同席の上、泉に事情聴取をします。泉は千佳を疑ったことで、何か事件に巻き込まれたのではないかと自分を責め、自分も出来るだけ捜査に協力したいと言い出します。
思いつめている泉を見かねて、富樫は新興宗教の教団施設を見せにいきます。富樫は以前公安職員だったときに、教団が起こした毒ガス散布事件で、自分の軽率な行動が事件の引き金になったかもしれないという話を泉にします。それでも、前を向いていくしかないと言うのでした。
笑顔が無くなった泉を心配して、磯川は相談に乗る形で泉の捜査を手伝います。磯川は同じ職場の辺見(坂東巳之助)の様子がおかしいことに気がつき、ストーカー事件のすぐあとに職場で付き合っていた女性と強引に別れていたことを知ります。その女性の実家を千佳が訪れた可能性があったため、泉と磯川は実家を訪ねますが、千佳の遺体が発見されたすぐ後に女性は自殺していたのです。
基本的には犯人捜し的なクライム・サスペンスの形を取っていますし、実際巧妙に真相を知るためのヒントがあちこちに隠されていて、2時間の枠の中にうまくまとめ上げられた作品となっていると思います。しかし、映画の製作者、そして原作者も一番に描きたかったのは、人が後悔と向き合っていく姿です。
人は自分の行為が悔やんでも悔やみきれない結果につながった場合、どうすればいいのか。泉はどうして親友が死ななければならなかったの真相を追求しますが、それは親友に対する贖罪なのか、それとも親友を信じ切れなかった自分を正当化するためなのかもしれません。具体的な行動をしていない富樫は、「前向きになるしかない」という曖昧な表現にとどめています。
辺見も、その別れた女性も何かしらの後悔をしていました。津村千佳でさえ、親友に疑いを持たせてしまったことを後悔していたことが、事件に巻き込まれていく大きな要因だったと思います。各自の向き合い方を、蕾だった桜が満開になり、そして散り始める情景の中で、しっかりと映画に焼き付けることができた作品だと感じました。
2025年11月29日土曜日
OTC類似薬
昨今、政治の話題でしばしば耳にするのが「OTC類似薬」という言葉。
OTCは「Over the Counter」の略で、カウンター越しに買うことができるという意味で、OTC薬というと、普通の一般薬局で購入可能な薬のことです。
代表的なOTC薬としては、解熱鎮痛薬のロキソニンS、バファリンA(アスピリン)、胃腸薬のガスター10、総合感冒薬のパブロンS、新ルルAゴールドDX、抗アレルギー薬のアレグラFXなどがあります。
じゃあ、OTC類似薬というのは何?
OTC類似薬は、医師が診察した上で発行する処方箋が必要な医療用医薬品でありながら、成分や効能がOTC医薬品と同等の薬のことです。
例えば、ロキソニンは三共製薬がおおよそ40年前に開発した「痛み止め」です。長年の実績で安全性などが担保されたため、2011年にOTC薬のロキソニンSとして、一般の薬局でも販売されるようになりました。
ただ。ここで一言文句を言いたい。医療用医薬品のロキソニンをOTC類似薬と呼ぶのは、どうしてもしっくりこない。ロキソニンが先で、ロキソニンSが後ですから、OTC類似薬というと後から出てきたみたいな印象になってしまう。OTC薬を医療用医薬品類似薬と呼んでもらいたいものです。
それはともかく、気になるのは価格です。医療用医薬品のロキソニンは1錠が10.4円、ジェネリック薬の場合は10.1円です。1日に3回内服する薬ですので、4日分だと12錠が必要になります。薬そのものの値段は大したことはありませんが、診察料、処方箋料、そして処方箋薬局での指導管理料などが加わりますので3割負担で1000円程度の自己負担となります。一方、一般薬局でOTC薬のロキソニンSを購入する場合は、1箱に12錠入っていて、消費税込みで768円です。
ただし、4週間分必要な場合は、医療用医薬品のロキソニンなら3割負担で300円程度増えるだけですが、OTC薬のロキソニンSだと7箱必要なので5,376円となり、大きな差が出てきます。つまり、とても大雑把な言い方をすると、ロキソニンSが4箱(16日分)を超えなければ、OTC薬を買ったほうが安上がりということになります。
今、政治家の方々が相談しているのは、OTC類似薬は健康保険の対象外でいいんじゃないかという話。ケガやぎっくり腰などで一時的な痛みで使用する場合は、ほとんどが1週間以内の使用であることが多いので、健康保険から外されても金額的にはあまり問題はないかもしれません。ただし、それはあくまでも診察は受けなくてよいと自己判断できる場合です。
中には日常生活を続けるために長期間の服用が必要な方もいますし、いろいろなパターンがあるはずなので、一律に保険適応外としてしまうのはいかがなものかと思います。増加し続ける医療費の中で薬剤費は、このような安くなった薬ではなく、近年次から次へと登場してくる高額な新薬が関与している部分が大きいことは明らかで、OTC類似薬の保険適応を外しても効果は限定的だと感じます。
いずれにしても、現状の皆保険制度の維持は今後困難になっていくことは火を見るより明らかではあるので、抜本的な構造的改革が必要であることは間違いがありません。
2025年11月28日金曜日
フロントライン (2025)
重い。この映画を見た、率直な感想は「重い」です。自分も医療関係者、医師ですから、この映画を単なるエンターテイメント作品として見ることはできませんでした。
映画全体が、最初から最後まで重苦しい雰囲気の中で進行するので、一般の方には辛い作品だと思います。ですから、そういう「重い」部分もあるのですが、やはり登場する医師たちにものすごく共感してしまう部分が重くのしかかってくるのです。
これは日本における新型コロナウイルス(COVID-19)感染症のパンデミックのきっかけとなった、2020年1月末に豪華クルーズ船であるダイアモンド・プリンセス号の乗客にCOVID-19感染者がいることが判明し、2月3日に横浜港に停泊後、全乗船者が下船した3月1日までの事実に基づいた一部フィクションを交えたセミ・ドキュメントと言える映画です。
監督の関根光才は、MV制作から出できて社会問題にもかかわる人物。脚本は「コードブルー」の製作にも携わった増本淳で、福島第一原子力発電所事故を丁寧に扱った「THE DAYS」でも制作・脚本を担当しました。
新型感染者の発生により、多くの病院が尻込みする中、神奈川県は神奈川DMAT(災害派遣医療チーム)に船内での救護活動を要請しました。DMATの指揮官、結城(小栗旬)は、DMATの専門が感染症ではないことは承知した上で、目の前の命の危険がある人々を救いたいという思いから引き受けます。
船内に入って実質的な医療行為を行うのは医師の仙道(室塚陽介)、真田(池松壮亮)らで、結城は主に神奈川県庁から多くの交渉事を一手に行っていました。厚生労働省からは立松(松坂桃李)が派遣され、このウイルスを国内に持ち込ませないことを第一の使命と考えていました。
はじめは結城と立松はぶつかることがありましたが、何の保証もなく自分たちも感染する危険の中で必死に活動するDMATを見るうちに、立松は国としてのルールよりも今現場が必要としていることに出来る限り協力する姿勢を見せ始めるのです。
そんな中で、感染症専門家と称する六合(吹越満)が、船内を訪れ専門家ではないDMATが不適切な感染対策をしているという動画をネットに上げたことで、DMATの隊員たちの中に動揺が広がります。職場から批判されたり、中には、家族が差別を受けたりする者もいて、船内の活動に従事できるスタッフが激減してしまうのです。しかし、結城も仙道も今は反論している時ではないと考えていました。
初めは厚労省やDMATの仕事を批判していたテレビ局の上野(桜井ユキ)は、メディアり取り上げ方に少しずつ疑問を持ち始めました。テレビは最初は何故乗客を降ろさないと批判していたのに、いざ下船準備が始まると何故下ろすと矛先を変えるのです。上野は結城たちの想いを感じ、起こっている事実だけを冷静に報道することを目指すのでした。
PCR検査陰性者も含めて船に足止めして2週間の隔離期間が過ぎたことで、集団下船が始まりクルーズ船での作業は終了します。真田はやっと家族の待つ家に帰宅し、仙道は新たな現場に向かいました。結城は立松に、「あんたが偉くなってくれれば、もっと我々は働きやすくなる」と言うのでした。
現実に同じ横浜市内で起こっていたこの件については、単純な傍観者にはなれませんでした。しかし、自分はクリニックの一人医者ですし専門外ですからという理由に納得して、この現場に参加するようなことは無いと思っていたことは間違いありません。
結果として、自分には何もできなかったかもしれませんが、あらためてこの映画を見ると、ものすごく後ろめたさを感じてしまいます。当時のブログを見返してみると、専門外でも少しでも冷静な客観的な情報を提供しようとしていたことを思い出しました。それすらも自己保身的なものだったかもしれない。そういう意味でも、とにかく「重い」映画でした。
映画全体が、最初から最後まで重苦しい雰囲気の中で進行するので、一般の方には辛い作品だと思います。ですから、そういう「重い」部分もあるのですが、やはり登場する医師たちにものすごく共感してしまう部分が重くのしかかってくるのです。
これは日本における新型コロナウイルス(COVID-19)感染症のパンデミックのきっかけとなった、2020年1月末に豪華クルーズ船であるダイアモンド・プリンセス号の乗客にCOVID-19感染者がいることが判明し、2月3日に横浜港に停泊後、全乗船者が下船した3月1日までの事実に基づいた一部フィクションを交えたセミ・ドキュメントと言える映画です。
監督の関根光才は、MV制作から出できて社会問題にもかかわる人物。脚本は「コードブルー」の製作にも携わった増本淳で、福島第一原子力発電所事故を丁寧に扱った「THE DAYS」でも制作・脚本を担当しました。
新型感染者の発生により、多くの病院が尻込みする中、神奈川県は神奈川DMAT(災害派遣医療チーム)に船内での救護活動を要請しました。DMATの指揮官、結城(小栗旬)は、DMATの専門が感染症ではないことは承知した上で、目の前の命の危険がある人々を救いたいという思いから引き受けます。
船内に入って実質的な医療行為を行うのは医師の仙道(室塚陽介)、真田(池松壮亮)らで、結城は主に神奈川県庁から多くの交渉事を一手に行っていました。厚生労働省からは立松(松坂桃李)が派遣され、このウイルスを国内に持ち込ませないことを第一の使命と考えていました。
はじめは結城と立松はぶつかることがありましたが、何の保証もなく自分たちも感染する危険の中で必死に活動するDMATを見るうちに、立松は国としてのルールよりも今現場が必要としていることに出来る限り協力する姿勢を見せ始めるのです。
そんな中で、感染症専門家と称する六合(吹越満)が、船内を訪れ専門家ではないDMATが不適切な感染対策をしているという動画をネットに上げたことで、DMATの隊員たちの中に動揺が広がります。職場から批判されたり、中には、家族が差別を受けたりする者もいて、船内の活動に従事できるスタッフが激減してしまうのです。しかし、結城も仙道も今は反論している時ではないと考えていました。
初めは厚労省やDMATの仕事を批判していたテレビ局の上野(桜井ユキ)は、メディアり取り上げ方に少しずつ疑問を持ち始めました。テレビは最初は何故乗客を降ろさないと批判していたのに、いざ下船準備が始まると何故下ろすと矛先を変えるのです。上野は結城たちの想いを感じ、起こっている事実だけを冷静に報道することを目指すのでした。
PCR検査陰性者も含めて船に足止めして2週間の隔離期間が過ぎたことで、集団下船が始まりクルーズ船での作業は終了します。真田はやっと家族の待つ家に帰宅し、仙道は新たな現場に向かいました。結城は立松に、「あんたが偉くなってくれれば、もっと我々は働きやすくなる」と言うのでした。
現実に同じ横浜市内で起こっていたこの件については、単純な傍観者にはなれませんでした。しかし、自分はクリニックの一人医者ですし専門外ですからという理由に納得して、この現場に参加するようなことは無いと思っていたことは間違いありません。
結果として、自分には何もできなかったかもしれませんが、あらためてこの映画を見ると、ものすごく後ろめたさを感じてしまいます。当時のブログを見返してみると、専門外でも少しでも冷静な客観的な情報を提供しようとしていたことを思い出しました。それすらも自己保身的なものだったかもしれない。そういう意味でも、とにかく「重い」映画でした。
2025年11月27日木曜日
ある閉ざされた雪の山荘で (2024)
数えきれない実写化作品を輩出しているベストセラー作家・東野圭吾の推理小説が原作。それだけでも、期待してしまうのですが、タイトルからして話の舞台全体が密室となっていて、登場人物が一人ずつ消えていくのだろうと考えてしまいます。監督は「宇宙人のあいつ」の飯塚健、飯塚と加藤良太の共同脚本になっています。
人気劇団「水滸」の次の舞台の主役を決めるため、海辺の豪華な貸別荘に集まったのは7人の役者。集めたのは水滸の演出家東郷です。メンバーは、リーダーの雨宮恭介(戸塚純貴)、実力派人気俳優の本多雄一(間宮祥太郎)、感情的な田所義男(岡山天音)、東郷に取り入って主役を得た噂がある笠原温子(保田真由)、演技派下手ですが父親が劇団のスポンサーである元村由梨江(西野七瀬)、個性派美人女優の中西貴子(中条あやみ)、そして唯一水滸に所属していない久我和幸(重岡大毅)です。
到着すると、早速東郷からのメッセージが壁に映し出されます。それは「これから殺人事件が起きる。その状況を踏まえて各自が独自に演技をすること。犯人を突き止めたものが次の主役になる」というもので、ここが「大雪で閉ざされた山荘」であるという設定で、外部との連絡は禁止されます。
二日目の朝、笠原がいないことに気がつきます。すると東郷からの「笠原は絞殺された」というメッセージが映し出されますが、皆はこれはオーディションの設定の一部かもと考えます。しかし、三日目の朝、今度は元村がいない。彼女の部屋の壁には血糊が撒かれ、リビングには本物の血がついた花瓶が置かれていました。再び、東郷から「元村は撲殺された」とのメッセージ。
雨宮は荷物をまとめて逃げ出そうとしますが、本多はこれらも全部芝居をするための演出かもしれないと踏みとどまらせようとします。田所は、笠原、元村と消えると次は雨宮だろうから怖いのは当たり前だと言い出します。
実は、前回の舞台で最も実力のある麻倉雅美(森川葵)が、主役を笠原に取られたことで劇団を辞めて実家に帰ってしまい、雨宮、笠原、元村の三人が復帰をさせようと説得に行って、かえって麻倉を傷つけてしまったのです。しかも、麻倉は、笠原の嘘のせいで交通事故にあい下半身不随の後遺症を負ってしまったのでした。
そして、最終日、四日目の朝。荷物をまとめて出てきたのは、本多、田所、中西、久我の4人。雨宮の姿はありませんでした。
基本的には推理物ですから、せいぜい紹介できるストーリーはこのくらい。また感想もほとんどネタバレになるので、多くは語れません。
オーディションの最終選考に集められた別荘で、劇団員たちは、携帯などの使用は禁止され、敷地から出たら不合格になるという「クローズド・サークル」が設定されています。クローズド・サークルとは、推理小説で外界との交流が断たれた閉鎖空間の中を意味する用語で、東野圭吾の得意技。ただし、出たくても出れない物理的な密室のようなものとは違い、心理的な施錠がされた状況というのが珍しい。
とは言え、携帯電話などは自己申告で提出していて、2個持ちも有りうるし、本当に殺人があったと考え、かつ次は自分かもしれないと思ったら、いくら配役を貰いたくてもその場に居残るというのはあまりにも不自然ではないでしょうか。家中に監視カメラが設置してあり、そもそもこの最終選考を企画した演出家の東郷が何らかの関りがあることは間違いないわけで、そういう意味でも主役に選ばれたいモチベーションが続くはずがない。
そこは別荘に中で、殺人をテーマにした自由な演技をしろというテーマがあること、殺されたとされる人物の死体が出てこないことで、残された人々は本当なのか演技なのか疑心暗鬼になることで誤魔化されているような感じがします。
原作(未読)にも家の見取り図が掲載されていて、謎を解明する大きな手がかりになっているらしい。それを踏襲してか、見取り図上に登場人物がはめ込まれて、今どこにいるかを示すシーンがしばしば出てくるのですが、ほとんど意図するものが不明なだけ。いちいち東郷のメッセージが、いろいろな場所でプロジェクションで映されるのも嘘くさい。
また犯人の意図が判明した時点で、じゃあそもそも部外者の久我がいる理由がわからなくなります。また、犯人を特定しろという命題があるにも関わらず、そのための手掛かりは映画の中でほとんど示されません。
開けても開けても中にさらに小さな人形が入っているマトリョーシカのような構成になっているのは原作の妙味ですが、最後のシーンを見ると元々の人形が美しい箱の中にしまわれているようなことなのかもしれません。いずれにしても、原作はともかく、映画に関しては、「多くは語れない」と言いましたが、「推理物」としては、かなり雑な作りであり突っ込みたくなるところが多過ぎると思いました。
人気劇団「水滸」の次の舞台の主役を決めるため、海辺の豪華な貸別荘に集まったのは7人の役者。集めたのは水滸の演出家東郷です。メンバーは、リーダーの雨宮恭介(戸塚純貴)、実力派人気俳優の本多雄一(間宮祥太郎)、感情的な田所義男(岡山天音)、東郷に取り入って主役を得た噂がある笠原温子(保田真由)、演技派下手ですが父親が劇団のスポンサーである元村由梨江(西野七瀬)、個性派美人女優の中西貴子(中条あやみ)、そして唯一水滸に所属していない久我和幸(重岡大毅)です。
到着すると、早速東郷からのメッセージが壁に映し出されます。それは「これから殺人事件が起きる。その状況を踏まえて各自が独自に演技をすること。犯人を突き止めたものが次の主役になる」というもので、ここが「大雪で閉ざされた山荘」であるという設定で、外部との連絡は禁止されます。
二日目の朝、笠原がいないことに気がつきます。すると東郷からの「笠原は絞殺された」というメッセージが映し出されますが、皆はこれはオーディションの設定の一部かもと考えます。しかし、三日目の朝、今度は元村がいない。彼女の部屋の壁には血糊が撒かれ、リビングには本物の血がついた花瓶が置かれていました。再び、東郷から「元村は撲殺された」とのメッセージ。
雨宮は荷物をまとめて逃げ出そうとしますが、本多はこれらも全部芝居をするための演出かもしれないと踏みとどまらせようとします。田所は、笠原、元村と消えると次は雨宮だろうから怖いのは当たり前だと言い出します。
実は、前回の舞台で最も実力のある麻倉雅美(森川葵)が、主役を笠原に取られたことで劇団を辞めて実家に帰ってしまい、雨宮、笠原、元村の三人が復帰をさせようと説得に行って、かえって麻倉を傷つけてしまったのです。しかも、麻倉は、笠原の嘘のせいで交通事故にあい下半身不随の後遺症を負ってしまったのでした。
そして、最終日、四日目の朝。荷物をまとめて出てきたのは、本多、田所、中西、久我の4人。雨宮の姿はありませんでした。
基本的には推理物ですから、せいぜい紹介できるストーリーはこのくらい。また感想もほとんどネタバレになるので、多くは語れません。
オーディションの最終選考に集められた別荘で、劇団員たちは、携帯などの使用は禁止され、敷地から出たら不合格になるという「クローズド・サークル」が設定されています。クローズド・サークルとは、推理小説で外界との交流が断たれた閉鎖空間の中を意味する用語で、東野圭吾の得意技。ただし、出たくても出れない物理的な密室のようなものとは違い、心理的な施錠がされた状況というのが珍しい。
とは言え、携帯電話などは自己申告で提出していて、2個持ちも有りうるし、本当に殺人があったと考え、かつ次は自分かもしれないと思ったら、いくら配役を貰いたくてもその場に居残るというのはあまりにも不自然ではないでしょうか。家中に監視カメラが設置してあり、そもそもこの最終選考を企画した演出家の東郷が何らかの関りがあることは間違いないわけで、そういう意味でも主役に選ばれたいモチベーションが続くはずがない。
そこは別荘に中で、殺人をテーマにした自由な演技をしろというテーマがあること、殺されたとされる人物の死体が出てこないことで、残された人々は本当なのか演技なのか疑心暗鬼になることで誤魔化されているような感じがします。
原作(未読)にも家の見取り図が掲載されていて、謎を解明する大きな手がかりになっているらしい。それを踏襲してか、見取り図上に登場人物がはめ込まれて、今どこにいるかを示すシーンがしばしば出てくるのですが、ほとんど意図するものが不明なだけ。いちいち東郷のメッセージが、いろいろな場所でプロジェクションで映されるのも嘘くさい。
また犯人の意図が判明した時点で、じゃあそもそも部外者の久我がいる理由がわからなくなります。また、犯人を特定しろという命題があるにも関わらず、そのための手掛かりは映画の中でほとんど示されません。
開けても開けても中にさらに小さな人形が入っているマトリョーシカのような構成になっているのは原作の妙味ですが、最後のシーンを見ると元々の人形が美しい箱の中にしまわれているようなことなのかもしれません。いずれにしても、原作はともかく、映画に関しては、「多くは語れない」と言いましたが、「推理物」としては、かなり雑な作りであり突っ込みたくなるところが多過ぎると思いました。
2025年11月26日水曜日
ファーストキス 1ST KISS (2025)
今年の春の話題作。話題の理由の一つは、監督が塚原あゆ子というところ。飛ぶ鳥を落とす勢いというのは、最近の塚原に相応しい表現で、2024年だけでも公開された映画は「ラストマイル」と「グランメゾン★パリ」があり、テレビでも大作となった「海に眠るダイヤモンド」がありました。もう一つの話題性は脚本の坂元裕二によるオリジナル・ストーリーだということ。1991年の「東京ラブストーリー」以来、時代の空気を的確に読み込んだ脚本の数々でいつも注目を浴びてきました。
さらに主演がもうベテランと呼ばれるようになった松たか子と「夜明けのすべて」で見事な演技を見せたSixTONESの松村北斗という、18歳差のカップルというのも驚かされました。しかし、年の差があるからこその、ほろ苦さの残るSF的なロマンス映画になりました。
硯カンナ(松たか子)の演劇舞台の美術スタッフとして働いていますが、最近、夫の硯駈(松村北斗)との関係はぎくしゃくしていて、ついに離婚することになります。駈が離婚届を持って仕事に出かけた日、カンナは一本の電話により駈が死んだことを知らされるのでした。駅のホームでベビーカーが線路に転落し、助けようと飛び降りた駈は入って来た電車に轢かれてしまったのです。
しばらくして、舞台の不備で呼び出されたカンナは、首都高のトンネルから出ると、見知らぬ場所にいました。車を置いて田舎道を歩いていくと、立派なホテルにたどり着きます。そこは、15年前に駈と初めて出会った場所で、しかも若々しかった本人と再び出会うのでした。
カンナは、出会った頃の楽しかった日々を思いだし、何度も首都高からタイムスリップをして、駈との初めて出会いを体験します。そして、何とか駈が死なずにすむように、いろいろと違った行動や会話をして、未来を変えたいと思うのでした。しかし、現実に戻るとどうやっても駈が死んでしまう事実は変わらないのです。
そして、駈を死なせない方法としてカンナが導き出した結論は、二人が結婚しないということでした。再びタイムスリップしたカンナは、駈と関係が生じないようにしようとしますが、駈はその時代のカンナを見つけ驚き、また未来のカンナが落とした「2024年 駈死亡」のメモを拾ってしまうのでした。
出会った頃は、あれほど楽しかった二人の生活が、時を重ねて冷めていく様子がたんたんと描かれるシーンがあり、「初めはお互いにいいところばかり探すが、しだいに悪い所ばかりを探すようになるのが結婚」というセリフは、真実を含んでいるように思います。そうなる未来を先に知っていれば、それを回避して修正するポイントはたくさんあるのでしょうが、現実には難しい事です。
若い時の気持ちに戻って、改めて駈に恋するようになっていくカンナの気持ちは切ない。何しろ15年後に二人がどうなるのか知っているし、そもそも駈の運命もわかっている。カンナは何度も何度も最初の出会いを繰り返しますが、駈は毎回初めてのカンナとの出会いになるので、駈にとってはどんどんカンナの変人度合いが大きくなっていくのです。
若い時の松たか子は、本当に若い。それほど多くのシーンがあるわけではないので、おそらくCG処理をしているのだろうと思います。一方、現実の中年になった駈はメイクだろうと思いますが、こういうところは20世紀の映画では嘘っぽくなったと思いますが、今の技術は見事に成立させてしまうのが凄い。
若い頃の駈の恩師にリリー・フランキー、その娘で駈が好きな娘に吉岡里帆、現代のカンナに若いながらアドバイスをする仕事仲間に森七菜などが登場します。リリー・フランキーが「タイム・マシンがあったら、若い人は未来を見たくなり、年を取ると後悔を正すため過去に戻りたくなる」とコメントしているのはさすがです。
この不思議なストーリーの結末はどのように締めくくるのか気になる方は必見ですが、単純な恋愛物ではないので「なるほどそう来るか」と塚原・坂元コンビニ感心してしまいました。
さらに主演がもうベテランと呼ばれるようになった松たか子と「夜明けのすべて」で見事な演技を見せたSixTONESの松村北斗という、18歳差のカップルというのも驚かされました。しかし、年の差があるからこその、ほろ苦さの残るSF的なロマンス映画になりました。
硯カンナ(松たか子)の演劇舞台の美術スタッフとして働いていますが、最近、夫の硯駈(松村北斗)との関係はぎくしゃくしていて、ついに離婚することになります。駈が離婚届を持って仕事に出かけた日、カンナは一本の電話により駈が死んだことを知らされるのでした。駅のホームでベビーカーが線路に転落し、助けようと飛び降りた駈は入って来た電車に轢かれてしまったのです。
しばらくして、舞台の不備で呼び出されたカンナは、首都高のトンネルから出ると、見知らぬ場所にいました。車を置いて田舎道を歩いていくと、立派なホテルにたどり着きます。そこは、15年前に駈と初めて出会った場所で、しかも若々しかった本人と再び出会うのでした。
カンナは、出会った頃の楽しかった日々を思いだし、何度も首都高からタイムスリップをして、駈との初めて出会いを体験します。そして、何とか駈が死なずにすむように、いろいろと違った行動や会話をして、未来を変えたいと思うのでした。しかし、現実に戻るとどうやっても駈が死んでしまう事実は変わらないのです。
そして、駈を死なせない方法としてカンナが導き出した結論は、二人が結婚しないということでした。再びタイムスリップしたカンナは、駈と関係が生じないようにしようとしますが、駈はその時代のカンナを見つけ驚き、また未来のカンナが落とした「2024年 駈死亡」のメモを拾ってしまうのでした。
出会った頃は、あれほど楽しかった二人の生活が、時を重ねて冷めていく様子がたんたんと描かれるシーンがあり、「初めはお互いにいいところばかり探すが、しだいに悪い所ばかりを探すようになるのが結婚」というセリフは、真実を含んでいるように思います。そうなる未来を先に知っていれば、それを回避して修正するポイントはたくさんあるのでしょうが、現実には難しい事です。
若い時の気持ちに戻って、改めて駈に恋するようになっていくカンナの気持ちは切ない。何しろ15年後に二人がどうなるのか知っているし、そもそも駈の運命もわかっている。カンナは何度も何度も最初の出会いを繰り返しますが、駈は毎回初めてのカンナとの出会いになるので、駈にとってはどんどんカンナの変人度合いが大きくなっていくのです。
若い時の松たか子は、本当に若い。それほど多くのシーンがあるわけではないので、おそらくCG処理をしているのだろうと思います。一方、現実の中年になった駈はメイクだろうと思いますが、こういうところは20世紀の映画では嘘っぽくなったと思いますが、今の技術は見事に成立させてしまうのが凄い。
若い頃の駈の恩師にリリー・フランキー、その娘で駈が好きな娘に吉岡里帆、現代のカンナに若いながらアドバイスをする仕事仲間に森七菜などが登場します。リリー・フランキーが「タイム・マシンがあったら、若い人は未来を見たくなり、年を取ると後悔を正すため過去に戻りたくなる」とコメントしているのはさすがです。
この不思議なストーリーの結末はどのように締めくくるのか気になる方は必見ですが、単純な恋愛物ではないので「なるほどそう来るか」と塚原・坂元コンビニ感心してしまいました。
2025年11月25日火曜日
ババンババンバンバンパイア (2025)
コメディ映画は、笑わせることが一番大事で、笑って元気が出ればOK・・・というのは、確かに正論です。とは言え、笑いのためにストーリーがあるのか、ストーリーのために笑いがあるかで、映画としての質はだいぶ異なるものになります。
この映画は、奥嶋ひろまさのBLマンガが原作。昨今やたらとメディアに増えた「BL」は、普通は「Boy's Love」でゲイの同性愛を意味しているわけですが、この作品の場合は「Bloody Love」ということらしい。
そもそもの設定が奇抜で、450年前本能寺で織田信長と伴に命を落としたはずの森蘭丸が、不死のバンパイアとして生き延びていて、現代の銭湯で働きながら銭湯の息子が美味しく育つの待っているというもの。森蘭丸が吸血鬼というストーリーの骨格だけならホラーなんですが、銭湯の息子への「愛」が登場したことで、完全にギャグ化しています。
それを実写映画化したのは、「一度死んでみた」の浜崎慎治監督で、脚本は大人気となったテレビ・ドラマ「ごくせん」や「花咲舞が黙っていない」の松田裕子です。主題歌はドリフターズの「いい湯だな」の替え歌で、最後まで楽しませます。
銭湯「こいの湯」に住み込みで働く森蘭丸(吉沢亮)は、実はバンパイアでした。銭湯を営むのは、おおらかな三代目主人は春彦(音尾琢真)、その美人の妻は珠緒(映見さくら)、隠居した二代目長次郎(笹野高史)、そして美少年の息子李仁(板垣李光人)という立野一家で、蘭丸の450年前からバンパイアという話は妄言と思い、その設定を維持する努力がすごいと思っていました。
バンパイアの究極の御馳走は18歳童貞の血なので、蘭丸は李仁が成長するのをひたすら待っていたわけですが、高校に進学した李仁は、同級生の篠塚葵(原菜乃華)に恋してしまいます。蘭丸は、李仁の童貞を守るため葵との仲を引き裂こうとするのですが、李仁は逆に蘭丸が恋のライバルだと勘違いします。
李仁や葵の学校の担任をしている坂本梅太郎(満島新之助)は、実はバンパイア・ハンターで蘭丸の存在に気がつくと・・・。そして、バンパイア・ハンターを逆に血祭りにあげている森長可(眞栄田郷敦)も蘭丸を探していたのです。葵の兄、フランケンこと篠塚健(関口メンディ)も巻き込んで、ストーリーは混迷していくのでした。
信長が蘭丸を寵愛した逸話は有名ですが、蘭丸の兄・森長可はあまり知られていません。ヘビメタなミュージカル仕立てを部分的に導入して、サクサクとあらすじを説明してしまうところはうまい方法です。また、蘭丸が何故李仁の血を狙うのかも、歌にしたことで下ネタ感が減って受け入れやすくなったと思います。
信長を演じたのは堤真一で、本能寺で死ぬのは「本能寺ホテル」以来2度目。出番は多くはありませんが、信長ははまり役かもしれません。子役から活躍している原菜乃華は、やっと俳優らしくなってきたように思います。それにしても、同じころに大ヒットした「国宝」の準備もしていたはずの吉沢亮が、「国宝」とは真反対のぶっ飛んだ演技をしているところは、その振り幅の広さに感心します。
どちらかと言えば、笑わせるためのストーリーで、特に何かを主張するような映画ではありませんが、ギャグがストーリーにしっかり溶け込んでいるので、無理なく笑って楽しめる作品になっていると思います。
2025年11月24日月曜日
蕎麦乾麺の美味しい茹で方
・・・というようなキーワードで検索してみてください。
もう、やまほど動画を中心に結果が出てきます。
蕎麦好きとしては気になるんですよね。
ふだん一番よく食べる乾麺の蕎麦は、一人前100gの束が4つ入っていて300円ちょっと。たまにもう少し高いものも食べますが、それでも蕎麦屋で食べるものには太刀打ちできません。
で、よくある裏ワザは、「水から茹でる」とか「しばらく水につけておく」というのが多い。
で、やってみた。
で、・・・で、・・・とても食べれたもんじゃないことがわかりました。
べたべたして舌触りは悪く、喉越しもぐちょぐちょだ。見た目も角がまったく無くなっています。
もしかしたら、自分が下手なだけかもしれませんが、やはり、沸騰してから茹でるのが失敗が無い方法だろうということ。
裏ワザはあくまでも裏ワザ。ヨイコは手を出さない方がよさそうです。
2025年11月23日日曜日
アンダーニンジャ (2025)
日本のギャグ・エンターテイメントの鬼才(?)と呼べるのが福田雄一。テレビでは脚本のみ、あるいは脚本・演出を手掛けた多くのドラマなどで、ほどほどのギャグの嵐で視聴者を笑わせ続けています。ところが、映画ともなるとタガが外れてしまったような「くだらなさ」が爆発して、特定の人だけが面白い賛否が極端に分かれるような作品が多くなる。
この映画もそういう作品の一つで、あまりにも監督の自己満足的な笑うに笑えないようなシーンが多すぎて、結局ストーリーの主題がぼやけてしまった感が否めない作品になりました。元は花沢健吾のマンガが原作ですが、かなり独自の斬新な世界観が設定されていて、(自分のように)原作を知らない者には、よりこの映画は何だかよくわからないうちに終わってしまうのです。
忍者は現代でも密かに存在を続けていて、厳格ではありますが今風の組織NINとして暗躍しているらしい。NINを抜けた忍者の大半はアンダーニンジャ(UN)と呼ばれる組織に入り、NINと敵対していました。NINのメンバーのうち一般職は下忍と呼ばれ、地味に暮らしている雲隠九郎(山﨑賢人)もその一人。上司の中忍の加藤(間宮祥太郎)から、講談高校に潜入しUNの情報を掴むように指令を受けます。
講談高校の女学生である野口(浜辺美波)と知り合った九郎は、いじめられっ子の瑛太(坂口涼太郎)からも校内の事情を調べます。すると、学校全体を陰で操っているのは、実質的には用務員の主事さん(平田満)であると確信します。講談高校の地下はかつて、NINとUNが雌雄を決する戦いをした場所で、多くの忍者が死亡した聖域のような場所でした。
UNの刺客として猿田(岡山天音)が、講談高校に乗り込んできて殺戮を始めたためNINの鈴木(白石麻衣)や蜂谷(宮世琉弥)が応戦します。美人でぶりっ子の山田(山本千尋)を怪しいと感じていた九郎は、封印されていた地下の迷宮へと向かうのでした。
まぁ、さしあたって、一番のお勧めはヒロインの浜辺美波の変顔。基本的に美人系女優さんなのに、よくぞここまで吹っ切れた演技ができるもんだと感心します。一部のファンの人は、崩れ去る理想像にがっかりするかもしれないくらいの勢い。ビラン側のヒロインは山本千尋で、本格的な武術をやっていただけに、なかなか切れのあるアクションが見物です。
佐藤二朗やムロツヨシの意味不明のギャグは、せっかくの物語の緊迫感を薄れさせているのですが、それこそが福田節だと考える人にはたまらないパートだろうと思います。アクション・シーンの出来は評判が良いので、そういった「無駄」な時間がもったいないと思い人もかなりいるのも間違いない。
福田監督は当然、そういった賛否両論は重々承知の上でやっている確信犯みたいなものなので、嫌いなら見なければよいと居直っているように思います。物語は雲隠十郎の登場で終わっているので、まだまだ続編の構想もあるのかもしれませんから、見ようと言う方はそれなりに覚悟した方が良さそうです。
この映画もそういう作品の一つで、あまりにも監督の自己満足的な笑うに笑えないようなシーンが多すぎて、結局ストーリーの主題がぼやけてしまった感が否めない作品になりました。元は花沢健吾のマンガが原作ですが、かなり独自の斬新な世界観が設定されていて、(自分のように)原作を知らない者には、よりこの映画は何だかよくわからないうちに終わってしまうのです。
忍者は現代でも密かに存在を続けていて、厳格ではありますが今風の組織NINとして暗躍しているらしい。NINを抜けた忍者の大半はアンダーニンジャ(UN)と呼ばれる組織に入り、NINと敵対していました。NINのメンバーのうち一般職は下忍と呼ばれ、地味に暮らしている雲隠九郎(山﨑賢人)もその一人。上司の中忍の加藤(間宮祥太郎)から、講談高校に潜入しUNの情報を掴むように指令を受けます。
講談高校の女学生である野口(浜辺美波)と知り合った九郎は、いじめられっ子の瑛太(坂口涼太郎)からも校内の事情を調べます。すると、学校全体を陰で操っているのは、実質的には用務員の主事さん(平田満)であると確信します。講談高校の地下はかつて、NINとUNが雌雄を決する戦いをした場所で、多くの忍者が死亡した聖域のような場所でした。
UNの刺客として猿田(岡山天音)が、講談高校に乗り込んできて殺戮を始めたためNINの鈴木(白石麻衣)や蜂谷(宮世琉弥)が応戦します。美人でぶりっ子の山田(山本千尋)を怪しいと感じていた九郎は、封印されていた地下の迷宮へと向かうのでした。
まぁ、さしあたって、一番のお勧めはヒロインの浜辺美波の変顔。基本的に美人系女優さんなのに、よくぞここまで吹っ切れた演技ができるもんだと感心します。一部のファンの人は、崩れ去る理想像にがっかりするかもしれないくらいの勢い。ビラン側のヒロインは山本千尋で、本格的な武術をやっていただけに、なかなか切れのあるアクションが見物です。
佐藤二朗やムロツヨシの意味不明のギャグは、せっかくの物語の緊迫感を薄れさせているのですが、それこそが福田節だと考える人にはたまらないパートだろうと思います。アクション・シーンの出来は評判が良いので、そういった「無駄」な時間がもったいないと思い人もかなりいるのも間違いない。
福田監督は当然、そういった賛否両論は重々承知の上でやっている確信犯みたいなものなので、嫌いなら見なければよいと居直っているように思います。物語は雲隠十郎の登場で終わっているので、まだまだ続編の構想もあるのかもしれませんから、見ようと言う方はそれなりに覚悟した方が良さそうです。
2025年11月22日土曜日
レコード大賞の衝撃
優秀作品賞
× ILLIT「Almond Chocolate」
× M!LK「イイじゃん」
× FRUITS ZIPPER「かがみ」
△ アイナ・ジ・エンド「革命道中 - On The Way」
△ 幾田りら「恋風」
△ Mrs. GREEN APPLE「ダーリン」
× CANDY TUNE「倍倍FIGHT!」
× 新浜レオン「Fun! Fun! Fun!」
△ 純烈「二人だけの秘密」
× BE:FIRST「夢中」
新人賞
× CUTIE STREET
× SHOW-WA & MATSURI
× HANA
× BOYNEXTDOOR
物心ついた時からある、日本の音楽関係の(たぶん)最高の栄誉となる日本レコード大賞。
主催は公益社団法人日本作曲家協会で、スポーツ紙を含む各新聞社の記者が中心となって投票して決定されるもので、昔は大晦日といえば「レコ大」と「紅白」を掛け持ちして大急ぎで移動する歌手のことが話題になりました。
その年に大ヒットを飛ばした話題作が選出されるので、昔は知らない曲が出てくることはなく、まさに世相を反映した1年の締めくくりにふさわしいイベントだったと思います。
上に列挙したのは、今年のレコード大賞に選出されたもの。この中から12月30日に大賞が発表されることになります。
で・・・頭についている×と△は何か?
自分がアーティストの名前を聞いたことが無い、顔もわからないというのは×印をつけました。名前は知っているが、顔は知らない、あるいは曲を聞いた記憶がないというが△です。名前、顔がわかって曲も知っていたら〇を付けたかったのですが・・・
何と、一つも〇を付けられないじゃないか!!
Mrs.グリーンアップルは顔はわかるし、過去のヒット曲なら聞き覚えがあるかもしれないけど、この曲はわからないじゃないか~!!
・・・
・・・
・・・
年を取ったものだ、と実感する日々です。
2025年11月21日金曜日
イチケイのカラス (2023)
2021年にフジテレビの連続ドラマとして放送された「イチケイのカラス」は、最終話で主人公の法曹界トップに反旗を翻した入間みちおは熊本に左遷されました。2023年に、入間みちおが東京を去って1年後のストーリーが、スペシャルドラマとして放送されています。もう一人の主人公である坂間千鶴は他職経験制度というシステムにのっとって一時的に弁護士業務を行っていました。
そして、その流れで劇場版が公開されました。入間みちお(竹野内豊)は熊本から岡山県秋名市に異動し支部長となっています。坂間千鶴(黒木華)は秋名の隣町である日尾美町で弁護士の職に就いていました。
日尾美町から出発した貨物船が、海上自衛隊イージス艦に衝突・沈没する事故が発生します。すべては貨物船船長の島谷の責任となり、納得できない船長の妻・加奈子(田中みな実)は、葬儀に訪れた政府関係者に包丁を向けてしまい逮捕されてしまいました。
その裁判の担当となった入間は、防衛省が事件の詳細を隠匿しているため、正当な判決を出せないと考え、伝家の宝刀「職権発動」により再捜査を開始しますが、防衛大臣(向井理)からの圧力により裁判長を下ろされてしまいます。
一方、坂間千鶴は、日尾美町の町そのものと言っても過言ではないシキハマ株式会社の工場に環境汚染の疑いがあることを知ります。坂間は人権派弁護士といわれている月本信吾(斎藤工)と協力して、その証拠を集めるのですが、いろいろな嫌がらせを受け、アパートは放火され、ついに月本は殺されてしまうのでした。
坂間は、何とか健康被害の民事裁判に持ち込みますが、なかなか決定的な証拠をつかめないでいました。その裁判の担当となった入間は、独自の調査によって貨物船事故と工場の環境汚染を結びつける証言を得ることに成功したのです。
かつてのイチケイのメンバーたちは、ちょっとずつのサービス出演という感じで、ほぼ竹野内豊と黒木華による展開になっています。周りを固めるのは、日尾美町の医師として吉田羊、秋名裁判所の若手裁判官に柄本時生と西野七瀬、シキハマ工場長には平山祐介、シキハマの弁護士に尾上菊之助らです。
ドラマの刑事事件と違って、民事訴訟がメインなので対決するのは弁護士同志で、裁判官の挙動もドラマとは異なります。ドラマとスタッフはほぼ共通で、脚本は浜田秀哉。監督は田中亮ですが、劇場版となって事件が起きた深い人間関係を掘り起こすような展開となっています。
そういう意味では、リーガル・エンタテイメントとしての痛快感は薄れてしまったのが残念な感じがします。また、一見関係ない二つの事件が次第に結びつくところに注力していますが、貨物船事件は無くてもいいような感じで、日尾美町の問題に集中した方がヒューマン・ドラマとしては深みが出たような感じがしました。
そして、その流れで劇場版が公開されました。入間みちお(竹野内豊)は熊本から岡山県秋名市に異動し支部長となっています。坂間千鶴(黒木華)は秋名の隣町である日尾美町で弁護士の職に就いていました。
日尾美町から出発した貨物船が、海上自衛隊イージス艦に衝突・沈没する事故が発生します。すべては貨物船船長の島谷の責任となり、納得できない船長の妻・加奈子(田中みな実)は、葬儀に訪れた政府関係者に包丁を向けてしまい逮捕されてしまいました。
その裁判の担当となった入間は、防衛省が事件の詳細を隠匿しているため、正当な判決を出せないと考え、伝家の宝刀「職権発動」により再捜査を開始しますが、防衛大臣(向井理)からの圧力により裁判長を下ろされてしまいます。
一方、坂間千鶴は、日尾美町の町そのものと言っても過言ではないシキハマ株式会社の工場に環境汚染の疑いがあることを知ります。坂間は人権派弁護士といわれている月本信吾(斎藤工)と協力して、その証拠を集めるのですが、いろいろな嫌がらせを受け、アパートは放火され、ついに月本は殺されてしまうのでした。
坂間は、何とか健康被害の民事裁判に持ち込みますが、なかなか決定的な証拠をつかめないでいました。その裁判の担当となった入間は、独自の調査によって貨物船事故と工場の環境汚染を結びつける証言を得ることに成功したのです。
かつてのイチケイのメンバーたちは、ちょっとずつのサービス出演という感じで、ほぼ竹野内豊と黒木華による展開になっています。周りを固めるのは、日尾美町の医師として吉田羊、秋名裁判所の若手裁判官に柄本時生と西野七瀬、シキハマ工場長には平山祐介、シキハマの弁護士に尾上菊之助らです。
ドラマの刑事事件と違って、民事訴訟がメインなので対決するのは弁護士同志で、裁判官の挙動もドラマとは異なります。ドラマとスタッフはほぼ共通で、脚本は浜田秀哉。監督は田中亮ですが、劇場版となって事件が起きた深い人間関係を掘り起こすような展開となっています。
そういう意味では、リーガル・エンタテイメントとしての痛快感は薄れてしまったのが残念な感じがします。また、一見関係ない二つの事件が次第に結びつくところに注力していますが、貨物船事件は無くてもいいような感じで、日尾美町の問題に集中した方がヒューマン・ドラマとしては深みが出たような感じがしました。
2025年11月20日木曜日
イチケイのカラス (2021)
犯罪物、いわゆるクライム・サスペンスというと、一般には捜査をして犯人を逮捕する警察官が主役ですが、その後に待っている裁判を描くのが法廷物(リーガルドラマ)というジャンル。過去には、検事が主役の「HERO」、弁護士が主役の「リーガル・ハイ」、「99.9-刑事専門弁護士」、「石子と羽男」などがヒットし、全部の仕事をまとめた「虎に翼」も思い出されます。
「イチケイのカラス」は東京地方裁判所第3支部第1刑事部、通称「イチケイ」を舞台にした裁判官が主役のドラマで、原作は浅見理都によるマンガです。ただし、主役やキャラクター設定は改変されていて、落ち着いた配役によって安定したライト・コメディに仕上がりました。
イチケイに新たに配属されたのは超真面目で、上からの期待が高い優秀な女性裁判官、坂間千鶴(黒木華)です。イチケイのトップは駒沢(小日向文世)、書記官としては川添(中村梅雀)、石倉(新田真剣佑)、浜谷(桜井ユキ)、事務官として一ノ瀬(水谷果穂)がいますが、一番問題児なのが中卒で、元弁護士の裁判官、ふるさと納税を趣味とする入間みちお(竹野内豊)です。
入間は、誰もが納得できる正しい裁判を行うために、裁判官としては異例の「職権発動」によって自ら再捜査に乗り出してばかりいるので、たくさんの処理案件が滞っているのです。しかし、駒沢もそのことに理解があるので、イチケイ全体が問題視されているのでした。
12年前、入間が弁護士として関わった殺人事件で、担当した日高亜紀裁判官(草刈民代)は、まったく弁護側の主張を聞き入れず、被告に無期懲役の判決を下しました。無実を主張していた被告は絶望して自殺し、弁護士に嫌気がさした入間は、駒沢の申し出により裁判官になったのです。
あまりのマイペースぶりに坂間のイライラはつのりますが、いろいろな事件を担当するうちに、少しずつ入間の想いを少しずつ理解するようになっていきます。そして、ある事件をきっかけに、12年前の事件の真相に近づくチャンスが巡ってくるのです。
本当の裁判官からすると、こんな裁判官はあり得ないといわれそうですが、エンターテイメントとしては、実に良く出来ています。それでもキムタクも松潤も相当変わっていましたし、堺雅人ほど極端なキャラではないので、一般人からするとだいぶ現実的な印象を持ちます。
それはキャスティングの妙もあると思いますが、演技者として定評のある出演者によってそれぞれがしっかりと描かれていると思います。ただし新田真剣佑だけは活躍の場が少なすぎて、ちょっと物足りなさを感じます。
裁判官は法廷の最後でほとんど事実関係が明らかな状態で登場するので、ストーリーを盛り上げたのは原作者の力が大きいとは思いますが、それをうまくドラマに落とし込んだ脚本の浜田秀哉も評価されると思います。
2025年11月19日水曜日
ラ・フランス
ラ・フランスは西洋梨の代表的な品種ですが、当然、フランスではそうは呼ばない。
原産国フランスでは、クロード・ブランシェ(Claude Blanchet)さんが19世紀半ばに発見した品種ということで、発見者の名前を冠した呼び名が用いられます。
ところが、本国ではその後すたれてしまい、日本では山形・長野を中心に定着し世界最大の産地になりました。
今が食べ頃というわけですが、実際に収穫されるのは10月だったりします。
実は、収穫されてから、数週間の追熟によって、含まれるでんぷん質が糖分に変化するすることで、甘くトロリとした美味しさになります。
好きな方にはたまらない美味しさなんですが、難しいのは食べ頃の判定。
耳たぶくらいの柔らかさが目安と言われていますが、タイミングを逃すと腐らせてしまうので、毎日にらめっこしないといけませんね。
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