2025年6月8日日曜日

過保護のカホコ (2017)

高畑充希の初主演テレビ・ドラマ。高畑充希は高校生の時にミュージカル「ピーターパン」で歌唱力・演技力を評価され、2016年にNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」で、全国的に知られるようにかりました。

日本テレビ制作のこのドラマは、「家政婦のミタ」の遊川和彦のオリジナル脚本で、過保護に育てられ何でも母親の言う通りに生きてきた主人公が、少しずつ自立していく「親離れ」を描いていますが、同時に母親の「子離れ」もテーマであり、大袈裟に言えば「家族再生」のコメディです。

両親に溺愛され育てられた大学生の根本加穂子(高畑充希)は、就活を始めたもののなかなか内定がきまらない。母親の泉(黒木瞳)は、何から何まで加穂子の生活を支配していて、誰に対しても主導権を譲らない性格。父親の正高(時任三郎)は、娘可愛さから母親に思っていることをまったく意見できません。

泉には二人の妹がいて、次女の環(中島ひろ子)は病気がちで、警察官の衛(佐藤二朗)と結婚したのも数年前でこどもはいません。弁当屋で働く三女の節(西尾まり)は看護師の厚司(夙川アトム)との間に娘の糸(久保田紗友)がいて、チェロ奏者として海外留学したい糸が生きがいでした。

三人姉妹の母親は大らかな並木初代(三田佳子)、父親はにぎやかですぐにすねる福士(西岡德馬)で、誰かの誕生日や祝い事があると、全員が並木家に揃って賑やかに食事会をするのを常としていました。正高の父親は根本正興(平泉成)でほとんど居眠りばかりをして、話しかけても「明日な」とはぐらかすのが口癖。母親の多枝(梅沢昌代)も正興にはあきれていますが、一番の心配事は出戻りで、無計画でいい加減な娘の教子(濱田マリ)のこと。

加穂子は大学のキャンパスで、画家を目指している麦野初(竹内涼真)と知り合います。初はこどものときに父親は亡くなり、母親は黙って出て行ってしまったため施設で長く生活していたのです。初はあまりに主体性が無い加穂子に対して、今まで誰も言わなかった意見をずばずばと言うので、加穂子は初めて「考える」ことを始めるのです。一方、加穂子は初の描くスケッチが人を感動させる力があるとお世辞抜きで褒めるのでした。

物語は糸が手の病気になり、チェロが弾けなくなったことから大きく動き出します。糸は家族全員が揃うのは嫌でしょうがない、何でこんな貧乏の家に生まれた、そして加穂子にもあんたみたいな苦労知らずは大嫌いだったと言うのです。母親にも親とは思っていないと言って、悪い仲間と遊ぶようになってしまうのでした。

それぞれの家族との関係がしだいに崩れていくことが悲しくてしょうがない加穂子は、まっすぐに何とかしようと動き出すのです。初代も加穂子の笑顔にはみんなをまとめる力があると応援します。お互いに好意を持ち始めた加穂子と初の関係も、次から次へと起こる家族トラブルの中で揺れ動くのでした。

というようなコメディとしては、ドタバタ調なところもありますが、とにかく高畑充希の突き抜けた演技がめちゃくちゃ楽しいドラマです。もちろん落ち込むときはあるのですが、回復が早く何事にもポジティブな加穂子の活躍は、見ていてすがすがしさを感じます。

こどもの意志を尊重して子育てをしてきたつもりの自分としても、いろいろと身につまされる部分があって、かなりデフォルメされているとはいえどこの家庭でも当てはまる話だろうと感じます。笑いの中に家族のエッセンスみたいなものが、ほどよく描かれているストーリーになっているのでお勧めです。