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2012年4月7日土曜日

Gil Shaham / Schubert for Two


クラシック音楽での編曲物というと、どうもメインストリームからはずれた「お遊び」的なものと思われがち。これは、原典至上主義的な感覚が根強く存在するためかと思うのですが、それがクラシック音楽をまさに「古典」の世界に閉じ込める要因になっていることも否定できないでしょう。

クラシックは基本的に過去の音楽で、通常聴かれる有名な曲のほとんどは作曲者がすでに亡くなっています。ですから、作品は有限で、ある程度聴き込むと新しい出会いが少なくなってきて、(一部の)マニアとしては編曲物に走りたくなる・・・ということを以前にも書きました。

実際のところ、偉大なる作曲家たちは自分の曲を広く知ってもらうために、自ら大きな編成の楽曲を家庭で楽しめるような室内楽に書き写したりしてきました。また大作曲家にリスペクトする後輩が、自分なりの解釈を加えて編曲するということもよくあります。

そもそも、クラシックの重要な楽曲形式である変奏曲は編曲の宝庫とも言える。自分で思いついたフレーズ、あるいは他人の印象的なメロディをいろいろなパターンで展開していくやり方で、主旋律が七色に変化していくのが大変楽しい。

最近紹介したマイスキーのチェロによるシューベルト編曲物は、もともと歌曲として有名な曲のボイスをチェロに置き換えた物でした。

今回紹介したいのは、シューベルトをヴァイオリンとギターで演奏するという、完全な編曲物。ヴァイオリンのシャハムはこういう、ちょっと「変わった」アルバムをいろいろ作る人で、けっこういろいろなことを考えているだろうと思います。

ピアノソナタは、どのラインを主旋律とするか悩むことが多いと思うのですが、シャハムの編曲は何の違和感もなくヴァイオリンパートの音符を選び出していて、最初からヴァイオリンソナタとして書かれた曲かと思うくらいです。

アルベジオーネソナタは、現代ではチェロで演奏されることが多く、比較的低音域のどっしりとしてイメージの美しい曲です。ここでは、より高音域のヴァイオリンと、ピアノほど高音域がとがらないギターの組み合わせが大変調和しており、実に快適な演奏です。

このアルバムの良いところは、シャハムのヴァイオリン以上に実はセルシェルのギターによるところが大きいのではないかと思います。控えめに伴奏パートを受け持ち、時に存在をほとんど意識しないくらいヴァイオリンを際立たせている。

こういう良質な編曲物は、クラシック音楽を現代でも楽しめるように命をつないでいるという点で大変重要なものであり、こういうアルバムを見つけることも音楽の楽しみの一つというところでしょうか。