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2012年6月3日日曜日

John Coltrane / Giant Steps


コルトレーンが巨人の域を超えて伝説にまで昇華して背景には、わすが40才で亡くなったということが大きい。彼を越えようとがんばってみても、永久に決着がつけられなくなったジャズ界の喪失ははかりしれないものがあったはず。

もしもコルトレーンが生きていたら・・・ああしただろう、こうしただろう、これはこうなっていたに違いない、などなどの想像がさらにコルトレーンを神格化している部分は否定できない。

コルトレーンは、基本的に努力の人であったことは間違いない。休むことを知らず、とにかく絶えずいろいろなものを吸収し、そこから新しい何かを少しずつ発散していく。活躍した期間が短い(世に知られるようになって10年ちょっと)ので、その変化は急激な印象を持つが、最後までジャズという音楽の中に止まった。

マイルス・デイビスは、自分のやりたいことをやり尽くすとガラリとスタイルを大きく変え、マイルスという音楽ジャンルを確立したが、コルトレーンより長きにわたって君臨した帝王なので、そのことをもってコルトレーンの方が格下とするのは可哀想かもしれない。

マイルスのもとを離れ、自分の真の音楽を創造し始めたのは、1959年にAtlanticと契約してから。当然、「私のお気に入り」という何ともこどもっぽい邦題のついた''My Favorite Things''が一番有名なアルバムということになっている。

これは、マイルスからプレゼントされたソプラノサックスを初めてアルバム録音で使用したということもあるし、その後も何度も重要なレパートリーとして演奏をし続けたことも関係している。でも、移籍第一弾となった''Giant Steps''の重要性の方が大きいし、自分もアルバムとしてはより聴くことが多い。

全曲を自分で書き下ろしたことからも、そうとう気合いが入っていたことは容易にうかがえる。しかも、残されている別テイク集から、日を変えメンバーを変え、何度もテイクを重ねていて当時のジャズとしてはかなりの練り込みようであることがわかる。

この後、亡くなるまで続いていく真のコルトレーンサウンドのスタートはここから始まると言っても過言ではない。ところが流れ出す音楽は、そんな苦労を微塵も感じさせない。軽快に吹きまくるコルトレーンのテナーが心地よい。