関節リウマチの診療は、自分の場合最もセールスポイントにしているわけで、このブログでも繰り返し同じようなことを書き綴っています。最近は、比較的新しい話が無く、この1年くらいはやや話題性では落ち着いている感があります。
しかし、現在治療の最前線で用いている生物学的製材(以下バイオと省略します)とよばれる注射の薬については、各製薬会社は積極的な開発競争を繰り広げており、来年に向けて新たな展開が予想されています。
これまでのバイオは、関節の中で症状に直接関係する炎症性サイトカインというものをターゲットにしてきました。サイトカインにはたくさんの種類があるのですが、特にTNF-αと呼ばれるサイトカインをたたくための薬が現在使われているバイオの中心となっています。
2003年に日本で最初に登場したレミケード(田辺三菱製薬)という薬は、その画期的な効果に対して驚愕するという表現が大げさではありませんでした。内服薬で数ヶ月かかって改善していたものが、2時間程度の点滴で出せるのですから、医者も患者さんも「特効薬」として大いに期待したわけです。
続いて2005年にエンブレル(ファイザー製薬)が登場し、手軽に皮下注射で投与できることが重宝しました。さらにヒュミラ(エーザイ)、シンポニー(ヤンセンファーマ)と登場して、選択肢がどんどん増えています。
TNF-α以外のサイトカインをブロックしようという考え方もあって、アクテムラ(中外製薬)はインターロイキン-1というサイトカインを標的にしました。TNF-α系のバイオの効果が出ない患者さんにとっては、このような薬の存在は重要です。
そして、もっと病気の上流に対して効果を発揮するオレンシア(ブリストルマイヤスクイブ)の発売は、悪さをしている一番下流のサイトカインを叩くというバイオとは一線を画するもので、サイトカインを産生する免疫細胞に作用してより病気を「治す」ということに目標をさだめたものと言えるかも知れません。
さて、NEXT NEWとなるものとしては、いよいよ内服薬の登場が近づいています。これまでのバイオは、いずれも点滴ないしは皮下注射というものでした。同等の効果が得られるのであれば、制約の多い点滴よりも皮下注射、皮下注射よりも内服薬の方が便利であることは明白です。
また、点滴で使用するアクテムラも皮下注射の開発を行っているとのことですから、より広い適応を考えることが可能になりそうです。患者さんにとっては、当分効果が出る治療薬が無くなって困るという事態はなさそうです。
ただ、いずれの薬を使用してもどうしても効果がなかったり、副作用が出てしまって使用できないという患者さんがいることもあいかわらず事実なのです。現在、いくつかの大学病院では遺伝子診断をすることで、薬の影響をあらかじめ予想する研究をおこなっています。これが、実用化すれば大変役に立つことになるのですが、一般化するにはまだある程度の時間が必要そうです。
それと同時に、なんとか治った状態にもっていき薬を中止することが可能になる手法の確立も急がれます。どんどん早期発見・早期治療が進んでいて、絶えず次の一手を考えていないといけない状況があり、なかなか医者としては気が抜けません。