2012年6月5日火曜日

John Coltrane & Miles Davis / Complete Recordings


しつこくお届けしたジャズの巨人、テナーサックス、ソプラノサックス奏者ジョン・コルトレーンの再認識シリーズはこれが最終回。勝手に分けた時代ごとの、自分の中の代表作をおすすめしてきました。

ジャズの世界では、他人名義のアルバムに顔を出すというのはよくあることで、コルトレーンもPrestige時代は親分マイルスの仕事の合間をかいくぐって、膨大なセッションに参加していたりするわけです。

 その後も、ドン・チェリーとの共演盤などは実質的には名義貸しみたいなもの。アーチー・シェップとの共同名義盤は、シェップを売り出すためにちょっとだけ顔をだしただけというのもあったりします。人気のVillage Vanguardでのライブ盤は共演のエリック・ドルフィのソロは大幅にカットされていて、完全版ではむしろドルフィのライブと言ってもいいようなところが少なくない。

しかし、コルトレーンの側から見て最大のサイドマンとしての仕事は、マイルス・デイビスのバンドであることは間違いありません。Prestigeからは5枚、Columbiaからも7枚のアルバムが出ています。

Prestigeは、マラソン・セッションと呼ばれているものが有名で、日頃ライブハウスでやり倒していたレパートリーを一気にスタジオで収録。どれをとっても、一定水準以上のできばえですが、演奏の濃密度ということではColumbiaでの吹込みにはかなわない。

 ここでは、聴かせるテナーマンへと変貌するコルトレーンの姿が捉えられている。録音順とかアルバムごととかでいろいろな形のボックスセットが廉価にでていますから、このあたりをまとめて聴くのは今でも簡単。50年代後半のニユーヨークのライブハウスの雰囲気を、お手軽に日本のお茶の間にお届けします。

マイルスの意気込みも違っていたし、コルトレーンのすごさが伝わってくるのは、やはりColumbia盤。特に、キャノンボール・アダレイを迎えたセクステットになって、バンド内にファンキーなライバルが登場して、コルトレーンも燃えないわけにはいかないでしょう。

 ''Milestones''、''1958 Miles''、そして全ジャズアルバムの最高傑作と呼ばれる''A Kind of Blue''の3枚はどれをとっても、自信にあふれたコルトレーンを聴くことができます。もっとも、この期間の中でコルトレーンはマイルスのもとから独立していくわけですから、もう自身のスタイルを確立し親分には負けないという気持ちがどんどん出ているわけでしょう。

マイルスの側から見ると、こんなボックスはいらないといういまいち評判の悪いセットがColumbiaから出た、マイルスとコルトレーンの共演完全セット。でも、コルトレーンの側から考えれば、こんなに便利なセットはない。よけいな部分は省いて、マイルス vs コルトレーンの戦いとその成長を一気に確認できます。ただし、よけいな別テイクとか多すぎなので、多少セレクトして聴いた方がいいようです。

自分にとってのコルトレーン再認識はだいたい以上でおしまい。結果としては・・・やはり、以前から感じていたこととそれほど違いはありませんでした。本当のコルトレーンのファンではないかもしれませんので、怒られてしまう結果かもしれないのですが、大多数の音楽ファン向けの評価としてはそれほど間違いはないでしょう。