夏季臨時休診のお知らせ
8月15日(金)~8月20日(水)は臨時休診となります
ご迷惑をおかけしますが、お間違いないようにご注意ください
2025年7月6日日曜日
にじいろカルテ (2021)
岡田恵和は、映画では「いま、会いにゆきます」、「おっぱいバレー」、「メタモルフォーゼの縁側」などがあり、ドラマでも「ちゅらさん」、「ひよっこ、」、「最後から二番目の恋」シリーズなど、原作物からオリジナルまで多くのヒット作を生み出した脚本家で、安定した高い評価を受けています。
本作はテレビ朝日の連続ドラマで、患者になった女医が田舎の村に赴任して、村全体が「家族」のように互いを支え合っていく中で、本当の自分の居場所を見つけていくというストーリー。恋愛物でも、医療物でもなく、「病とともに生きる」をテーマにしたヒューマン・コメディという表現が一番似合います。
紅野真空(高畑充希)は、東京の病院で有能な内科救命医として働いていましたが、多発性筋炎を発症したため、救急の激務をこなすことが困難になり、上司から「我々が必要なのは医者であって患者ではない」と言われてしまいます。
真空は仕事を続けたくて、偶然に知った虹ノ村診療所の内科医募集で採用され住み込みで働くことになりました。到着するなり村唯一の売店兼寄合所「にじいろ商店」で、多くの村民から大歓迎され驚きます。虹ノ村診療所のスタッフは、いつもハイテンションで口が悪い外科医の浅黄朔(井浦新)と短気で真面目過ぎる看護師の蒼山太陽(北村匠海)で、3人の遠慮のない共同生活が始まるのでした。
初めは採用取り消しを恐れて病気のことを隠していた真空でしたが、検診のため東京に月に一度行かなければならず、その理由を説明すると朔は「医者で患者は最強じゃん」、太陽は「仲間に嘘はつくな」とだけ言い許します。村の人々も、まったく問題ないとしてあらためて歓迎するのでした。
にじいろ商店は橙田雪乃(安達祐実)と橙田晴信(眞島秀和)の夫婦が営んでいましたが、雪乃はまだら認知症で、数か月ごとに自分の事がわからなくなってしまいます。そんな時は、村役場の霧ヶ谷桂(光石研)の妻である氷月(西田尚美)と村役場で働くシングル・マザーの緑川嵐(水野美紀)が、雪乃の生い立ちから順を追って説明をして元の生活に戻れるようにサポートするのでした。
教師をしていた桃井佐和子(水野久美)は、高齢の一人暮らしでたくさんの不安を隠して生活していましたが、真空がいつでも携帯電話をかけていいと言ってくれたことで元気をだします。
朔がこの村に来たのは妻の沙織(佐々木希)が野菜作りが大好きだったからですが、亡くなった時に助けることができなかった後悔をずっと引きづていたのです。太陽は、誰もが生きていくうえで何かしら抱えているものがあるのに、自分には何もなく「普通」すぎることに引け目を感じていました。
膠原病の一つで難病指定されている多発性筋炎は、自分の筋肉や皮膚に対してアレルギーを起こしてしまう病気で、倦怠感、筋力低下などにより日常生活に支障をきたすことがあります。ステロイド剤や免疫抑制剤による薬物治療が効果的ですが、肺などの合併症により生命予後を悪くする場合があります。
主人公の病状の描写は概ね間違っていないと感じました。さすがに救急医療を担うのは困難かと思いますが、通常の診療科であればスタッフの人数が多い大病院の方が働きやすいように思います。しかし、それはあくまで調子が悪ければ「代わりに仕事をしてあげる」というものであって、精神的な負担を増やすかもしれません。
肉体的には村の診療所の方が激務かもしれませんが、患者さんから精神的に支えられるというのはまさに「病とともに生きる」充実感と勇気をもらうことにつながっています。そういう意味では、病気の有無に関係なく地域医療の大切さも描いているドラマだと思います。
他人の干渉を嫌がる人が多いとは思いますし、自分もそのように考える一人なのかもしれません。しかし、このドラマでは過度の干渉のように見えて、お互いの事を理解した上での節度を保っているところが嫌味にはなっていないのがよく出来ている点だと感じました。