2026年10月12日月曜日

世界遺産ノート1 歴史


世界遺産が認知・制度化された過程をまとめます(赤字:最重要、青字:重要)。

1872年 イエローストーン国立公園指定
アメリカで世界初の国立公園が指定された。開拓から資源開発と工業化に進み始めたアメリカで、自然保護の必要性が高まったため。

1899年 ハーグ陸戦条約
非軍事目的の文化遺産への攻撃の禁止

1931年 アテネ憲章
歴史的記念建造物に関する建築家・技術者国際会議において、保存・修復のための基本的な考え方をまとめたもの。過去の歴史性・芸術性を尊重し、当初の部材を出来るだけ使うが、近代的な技術・材料の併用は認めるとしている。

1935年 ワシントン条約 (レーリッヒ条約)
戦時下においても重要な文化財を保護すべきとし、文化財を擁する都市は非武装化した「無防備都市」宣言を行った。

1946年 UNESCO設立
国際連合教育科学文化機関。

1948年 IUCN設立
国際自然保護連合。世界最大の自然保護ネットワークで、自然保護のための提言をし、絶滅危惧のある野生生物のリスト(Red List)を策定している。世界遺産条約などへの科学的な助言も行っている。

1954年 ハーグ条約
UNESCOが採択した武力紛争の際の文化財の保護に関する条約。自国のみならず他国の文化財を保護し、軍事的に標的としないと定めた。

1956年 ICCROM設立
UNESCOの採択によって設立された「第2次世界大戦後の動産・不動産を含む文化財の保存や修復に関する調査研究」のための国際政府間組織。

1959年 UNESCO ヌビアの遺跡群救済キャンペーン
ナイル川流域のアスワン・ハイ・ダ開発から、アブ・シンベル神殿などの水没を防ぐために、分解・移築したもので、工事は1964年から1968年にかけて行われた。その他のすべての遺跡の移築は1980年に終了した。

1964年 ヴェネツィア憲章
第2回歴史的記念建造物に関する建築家・技術者国際会議において、記念建造物は人類共通の価値を持った財産であるとした。できるだけオリジナルを再現すべきであるが、伝統的な技法が不適切と判断された場合は近代的な技術・材料を用いても良い。

1965年 ICOMOS設立
国際記念物遺跡会議。UNESCOの公式諮問機関であるNGO(非政府機関)で、世界文化遺産の候補地を現地調査し、価値評価や登録の可否を世界遺産委員会に勧告している。

1965年 世界遺産トラスト構想
ワシントンで行われた「自然遺産の保全と開発に関する委員会」で、文化遺産と自然遺産の両方を保護する提言がなされた。

1966年 UNESCO ヴェネツィア救済キャンペーン (水没危機)

1968年 UNESCO ボロブドゥールの仏教寺院群救済キャンペーン

1968年 公的または私的の工事によって危機にさらされる文化財の保存に関する勧告
UNESCOが採択した、歴史的・芸術的な重要性に応じて、文化的・経済的な変化と調和を図りながら文化財を保護・公開することを定めた。

1970年 文化財の不法な輸入、輸出及び所有権譲渡の禁止、並びに防止の手段に関する条約
UNESCOが採択した文化財の密貿易を禁止するもの。

1971年 国連人間環境会議
アメリカから自然保護を中心とした世界遺産トラスト案、UNESCOから文化遺産を中心とした国際的保護条約案が出され、両者を合わせて検討することになった。

1971年 ラムサール条約
特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約。湿地の生態系・生物多様性を保護・調査・保全することが定められた。

1972年 世界遺産条約
UNESCO総会においてUNESCO案とアメリカ案を一つにまとめた「世界の文化遺産及び自然遺産に関する条約 (通称、世界遺産条約)」が採択された。

1973年 ワシントン条約
絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約。

1994年 奈良文書
真正性に関する奈良会議で、オリジナル重視の真正性の考え方に柔軟性・多様性を加えたもの。伊勢神宮の遷宮の例のように、建て替えが頻繁に行われる日本では、欧米が主体的に作った真正性の枠組みが適用しにくい。文化遺産は、それぞれの国・地域において有形・無形の文化的背景・気候風土を考慮した真正性が求められるとした。

2001年 水中文化遺産の保護に関する条約
UNESCOで採択された、唯一の水中の文化財を対象としたもの。一部または全部が100年以上水中にあった文化遺産を対象として、発見された場所での保存を原則とした。

2003年 ニジニー・タギル憲章
国際産業遺産保存委員会で採択された、産業遺産を定義するもの。その産業に関わる全ての建造物などの他に、支えたインフラや、関わる人々の生活環境のすべてを含むとした。

2005年 ウィーン・メモランダム
「世界遺産と現代建築 - 歴史的都市景観の管理」国際会議でまとめられたもの。2003年のウィーンの再開発計画浮上により、歴史的都市景観を尊重し、できるだけその価値を維持することが重要とされた。再開発では現代建築が歴史的景観に溶け込み、全体の価値を高めることが求められた。

世界遺産は1972年の世界遺産条約の採択により成立し、1975年に発効、1978年に最初の12カ所の遺産が登録されました。日本は1992年に締結し、現在までに世界遺産保有数は27となっています。近年では、2020年にソマリア、2023年にツバル、2024年に196番目の加入国としてナウル共和国(現地語名:ナオエロ共和国)が新たに加わっています。

2026年の時点で、世界中に遺産の総数は1273(うち国境を超えるものは51)、遺産を保有する国は173となっています。文化遺産は991、自然遺産は240、複合遺産は42で、危機遺産リストには58件が選定されています。


参考

1978年の第2回世界遺産委員会で、初めて登録が決定した12の遺産は次の通り

エクアドル
  ガラパゴス諸島(自然遺産)
  キトの市街(文化遺産)
アメリカ合衆国
  イエローストーン国立公園(自然遺産)
  メサ・ヴェルデ国立公園(文化遺産)
カナダ
  ランス・オ・メドー国定史跡(文化遺産)
  ナハニ国立公園(自然遺産)
ポーランド
  クラクフ歴史地区(文化遺産)
  ヴィエリチカ・ボフニャ王立岩塩坑(文化遺産)
エチオピア
  シミエン国立公園(自然遺産)
  ラリベラの岩窟教会群(文化遺産)
ドイツ(当時は西ドイツ)
  アーヘン大聖堂(文化遺産)
セネガル
  ゴレ島(文化遺産)