今年はショパン・イヤーということで、生誕200年をきっかけにレコード会社はいろいろな企画物を大量に出してきています。去年はハイドンの没後200年であり、かつメンデルスゾーンの生誕200年。
もう、そんなにメジャーな作曲家の記念の年は無いだろうと思っていたら、シューマンを忘れていました。今年はシューマンの生誕200年だったんです。いかにクラシック音楽と言われているものが、18世紀後半から19世紀の100年間で発展したということがよくわかる感じです。ちなみに来年はリストの生誕200年かぁ~、楽しみだなぁ。
でもって、ロベルト・シューマンですが、実はけっこう好きなんです。たとえばベートーヴェンのピアノソナタは超はまっていますが、交響曲はあまり興味がない。シューベルトも同じ。バッハはクラシックを聴きだした基本ではありますが、今はグレン・グールドの素材としての興味であって、あまり集める気はない。
ショパンはクラシック・ピアノを聴くからには避けては通れない。リストはピアノ曲は楽しいが、オーケストラ物はどうでもいい。ヴィバルディ、ハイドンはあまりに膨大すぎてどれを聴いても同じに聞こえる。ブラームスはなんか重たい感じ。
シューマンは、ベートーヴェン時代、つまり古典派からロマン派に移行する時代に人ですが、同時代の作曲家に比べるとロマン派としての色彩が強く、一見雰囲気に流されて主題が見えにくく、とっつきにくい印象がありました。
最初にデームスのピアノ独奏曲全集を安いという理由だけで購入して、逆に多すぎてどれも何となくという聴き方をしたものですから、どうも面白くなかった。ところが、アルゲリッチのソロBOXが出たときに、シューマンのクライスレリアーナを聴いてその圧倒的な演奏に感服しました。
そこから、シューマンの室内楽曲、協奏曲、交響曲などをあらためて聴いてみると、何かが見えてきた気がします。さらにその勢いを加速させたのが、奥さんのクララの存在。二人は互いに影響を及ぼし合ったことはよく言われていますが、敵としてのライバルではなく夫婦としての共同作業であった点が特異なことなんでしょう。
そのクララ・シューマンのピアノ全集を聴いて、ますますロベルトさんが好きになりました。そこで、あらためてシューマンのピアノをしっかり聴いてみたくていろいろCDを探したのですが、意外に全集がありません。ケンプとアシュケナージの作品集くらいで、全てを網羅した物は最初に買ったデームス盤くらい。
そしたら2006年からフランスのピアニストのルサージュが、こつこつとピアノ独奏曲と室内楽曲の全曲録音に挑んでいたんですね。昨日も書いたαレーベルで、まずCDケースのデザインがいい。
そして、録音が素晴らしい。たいへんクリアなピアノの音色は、さすがに古くなったデームスとは段違い。演奏はいかにもフランス人らしいのか、アルゲリッチほどは攻撃的ではないのですが、丸みのある優しさを残しながら、時にはばしっときめてくる。
ときどき室内楽曲がはさまって、聴いていても飽きがきにくい構成もなかなかにくい感じです。シリーズの最初がクララにインスパイアされた曲を中心にしているところもなかなか面白い。
これまでに8セット、CD14枚、フランス本国ではつい最近9巻目が登場して、おそらくそろそろゴールが近づいているシリーズですが、なかなか目が離せそうもありません。