クララ・ハスキル Clara Haskil は、1960年にとっくに亡くなったルーマニアのクラシック・ピアニスト。若い頃は病気もあって正当な評価を受けることがなかったが、1950年頃(50歳代半ば)から急速にその卓越した技法と演奏表現が絶賛されるようになったということです。
まだまだ絶頂の時期に、事故で急死したためより一層伝説的な存在として語り継がれるようになりました。当然、自分が音楽を聞き出すのは60年代後半からですから、リアルタイムには知るべくもなく、最近になってクラシック音楽を渉猟するようになってからその存在を知ったわけです。
クラシック音楽はピアニッシモでは、ちょっとした雑音でも結構気になるし、できるだけ良好な録音の物を聞きたいと思うわけです。ですから、基本的には古い録音は、例え名盤と言われようとあまり手を出す気は起きません。
自分のCDコレクションの中でも、今までにあえて購入したモノラル録音はグレン・グールド(1940~50年代)くらい。シュナーベルのベートーヴェン(1930年代)はあくまで、歴史的な価値ということで購入しました。ほとんどの場合は、1960~80年代くらいのステレオ・アナログ録音が価格的にも手頃なセットになっていて集めやすいのです。
さて、いろいろなクラシック、特にピアノ曲を探していると、しばしば見かける名前というのが出てくる。そういう一人がハスキルで、しだいに気になる存在になってきましたが、いかんせん時代が古くてちょっと買ってみようかとはなかなか思わないでいました。
ところが、最近なんとハスキルの50年代の代表的な録音を集大成したBOX SETが発売されました。廉価版で有名なレーベルから10枚組というボリュームですが、なんとわずかに1000円。これはいくらなんでも安すぎです。著作権切れで、もともとしっかりとしたレコード会社の音源を利用したわけですが、もうほとんどただ同然と言っても過言ではありません。
ステレオ録音が一般化するのは50年代後半。ジャズを聴いているとチャーリー・パーカーを代表とするパップの時代はモノラルが当たり前。それに比べれば、かなり聴きやすい良質なモノラル録音です。これは、あらためて発売したメーカーのリマスターもかなり貢献しているようです。
こうやって聴いてみると、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマン、バッハなど今では有名過ぎるピアノ曲ばかりですが、独特の感性という物が感じられ、さすがに伝説となるピアニストだということがよくわかりました。
それにしても、しつこいようですが、こんな格安で楽しめるなんてクラシック音楽はうはうはです。その分演奏家の方々に入る収入は、少ないわけで、なんか申し訳ない感じです。ですが、こちらはすっかり甘えさせていただいて、これからもこういう掘り出し物がどんどん出てくることを期待します。