2017年8月22日火曜日

A.S. von Otter / TEREZIN, THERESIENSTADT

お恥ずかしいことに、テレージエンシュタットについては知りませんでした。

アウシュヴィッツ強制収容所は、ユダヤ人虐殺の象徴として、戦後はたびたびメディアでも取り上げられたので、多少のことは知っていました。

テレージエンシュタットは、1941年にナチス・ドイツがチェコに建てたユダヤ人入植地で、6万人弱のユダヤ人が「ドイツ領内からのユダヤ人一掃」のために運ばれてきたということです。

実質的には、アウシュヴィッへの通過収容所として機能し、残ったユダヤ人の多くが劣悪な環境のもと命を落としたそうです。

ナチスはアウシュヴッツの実態を隠すために、テレージエンシュタットではある程度の自由を許していて、その中で送られてきた音楽家たちは細々と音楽活動を行うことができました。

わずかに残された音楽・・・それらを集めたアルバムが"TEREZIN/THERESIENSTADT"です。大好きなメゾソプラノ歌手のアンネ・ソフィー・フォン・オッターのアルバムを漁っているうちに見つけました。

他にも、フォン・オッターの伴奏ピアニストであるベンクト・フォシュベリ、バリトン歌手のクリスティアン・ゲルハーヘル、ヴァイオリンのダニエル・ホープ、ピアノのゲロルト・フーバーらが参加しています。

クラシックというより、1940年代のポップス、あえて言うならパリの裏街あたりの酒場で、いろいろな人生を歌にのせて語る・・・とでもいうような感じでしょうか。

歌詞の中身をしっかりと把握して聴いているわけではないので、歴史的事実の重さからするといい加減で申し訳ないのですが、音楽家たちの小さな希望であったり、現実への絶望などが交錯して感じられる大変魅力的なアルバムです。

アルバム参加者らで行われたライブのDVDもあるので、こちらも注文しました(まだ未着)。DVDには、テレージエンシュタットのドキュメントも含まれているので、これらをきっかけにちょっとでも現代史の隠れそうな一面を考えることは悪いことではないと思います。