ヘンデル・・・とグレーテルなら知っているという方はいるかもしれない。いやいや、それはヘンゼルだし、グリム童話だし。
ヘンデルというと、日本クラシック音楽界では「音楽の母」と言われるドイツ人の大作曲家(ちなみに「音楽の父」はJ.S.バッハ)。
正確にはGeorg Friedrich Händelで、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルとなるのですが、実際のところイギリスに帰化して生涯の2/3をイギリス人として過ごしている。
ですから、George Frideric Handel、ジョージ・フリデリック・ハンデルという呼び方もあったりします。
小学校の音楽の授業などで教わるヘンデルの名曲・・・「水上の音楽」と「王宮の花火の音楽」、そしてオラトリオ「メサイア」の中の「ハレルヤ」コーラスのほぼ3つだけ。
バッハについても、その仕事の大部分は教会と密接に関係していたにもかかわらず、音楽の授業で教わるのはごく一部の器楽曲だけでした。今はどうなっているかわかりませんけど、ずいぶんと偏向教育だったように思います。
さて、ヘンデルの音楽を聴くのに、その資料的なものを本・ネットで探してみようと思うと、そのあまりの少なさに驚きます。仮にも「音楽の母」と称するにもかかわらず、父バッハの膨大な記述に比べて、その他大勢扱いです。
これでは水上・花火・ハレルヤの三羽烏の世界から広がるはずもなく、ヘンデルの世界を堪能することはかなりの困難がつきまとう。自分は音楽学者ではないですから、あくまでも与えられた限られた知識しかありません。
ただ、資料の多いバッハの音楽、特に宗教曲の世界をいろいろ知る中で、同時代にバッハと対称的な生き方をしたヘンデルの話は断片的に登場し、少なくとも小学校の音楽室以上にためになりました。
ですから、ヘンデルの仕事の多くはバッハのそれと同じように声楽にあったことを知ることができました。バッハはストイックな教会の礼拝のために多くの声楽曲を作り、そしてヘンデルは一般大衆の娯楽のために劇場音楽、つまりオペラ、オラトリオを作った。
当然、一般の民衆の認知度には雲泥の差が生じるわけで、生前の人気は「流行作家」のヘンデルが圧倒的で、「純文学作家」のバッハは相当コンプレックスをもっていたかもしれません。
しかし、流行音楽は忘れられやすく、厳格な教会の記録が残されたバッハの方が資料が多く、没後の研究が盛んに行われたことが、今の差になっているのかもしれません。
バッハと同じく、1980年代に古楽演奏が注目されるようになり、忘れ去られていたヘンデルのオペラの再演が行われるようになりました。
ここで、重要な活躍をしたのがジョン・エリオット・ガーディナーです・・・そうなんです、自分にとってクラシック趣味を大きく変えてくれたガーディナー先生がここでも登場するのです。
この時期にガーディナーが取り上げたヘンデルのオペラ・オラトリオは10作品ほどで、全部で70作くらいある中の一部ではありますが、今日重要とされるものはだいたい含まれています。ガーディナー先生の世話になって、一つ一つを確認していくことから始めたいと思います。
そして、ネットでほとんど唯一と言ってもいいくらいのヘンデル情報が日本語でまとめられているのが「ヘンデル御殿」です。こちらのサイトは、情報が抜けている作品もありますが、ほとんどそのまま本にして刊行してもいいくらいの完成度は頭が下がります。
さて、ヘンデルの音楽の世界・・・って、よくわかっていないのに、ずいぶん強気の話ですが、少し興味が湧いてきましたから、これからガーディナー先生のCDを順番に聴いていきたいと思います。