年末年始診療 12月29日~1月5日は休診します
年内は12月28日(土)まで、年始は1月6日(月)から通常診療を行います
2018年1月7日日曜日
記紀の「謎」は謎のまま
古事記、日本書紀をあらまし読み飛ばしてみましたが、日本の古代史という観点からは、かなり偏った書物であるということは間違いない。何故なら、記紀に記述されている内容は、古来からの口頭による伝承が中心で、その中には意図的で無いにしろ創作・改変が多く混在しています。
また、あくまでも、7世紀後半の支配者であるヤマト朝廷が、勝者の歴史として、自らの正当性を明らかにすることを最大の目的として編纂されていますので、記紀は天皇家の歴史書と呼ぶことはできますが、日本という国全体の歴史についてはあまりに欠落が多い。
日本全体の歴史の真実を確定することは、記紀だけでは結局困難を通り越して不可能な話で、地域の様々な伝承、諸外国の記述、地道な考古学的な調査などにより、少しずつ外堀を埋めていくしかありません。
それでも、最終的な正解に達することはほぼ無理な話で、「記紀の謎」という表現の著作は山ほどありますが、その謎が真に解明されることはありえない。「謎が解けた」と主張しているものほとんどは、眉唾物と考える方が無難で、証明されていない仮説を前提にした仮々説の域を出るものではありません。
これらの仮設に対して多くの批判がされていますが、その批判の根拠にしているものも、所詮、仮設を前提にしているので、真実というよりは信念に近い話で、いつまでたっても白黒がつくようなものではありません。
ですから、あくまでもフィクション的に、記紀のストーリーの理解に徹するという読み方があってもいいと思います。また、巷にあふれる諸説については、推理小説の犯人捜し、あるいは難解なパズルを解くような「正解の可能性の一つ」として楽しむくらいが無難というところでしょうか。
とりあえず、一通り読んでみて、自分なりに「謎」として、可能なら正解を知りたいと思った点を列挙してみます。神代の話は、謎と言い出したらきりがないので、あまり突っ込んでもしょうがないかと思いますが、どうしても気になる存在がいくつかあります。
古事記冒頭、いきなり登場する天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)はどうやって生まれたのか、そしてどういう存在なのか。最初に出てきてそれきりですから、物語としての存在理由がはっきりしません。
伊邪那岐から最後に生まれる、右眼からの天照大御神、左眼からの月読命、鼻からの建速須佐之男命の三貴子についてですが、左右、太陽と月というペアとしての整合性で考えると天照大御神と月読命が主役というのが順当。なのに、月読命は、ほとんど活躍の場がなく退場してしまいます。むしろ、追加で生まれたかのような須佐之男にまつわる話がたくさん登場し、その量は天照大御神よりも多いくらいです。
出雲関連では、大国主神を助けて国造りに功績をあげる少名毘古那神も不思議。神産巣日神のこどもと説明されていますが、唐突に海の向こうからやってきて、そしてまた突然海の向こうに去っていきます。
また、大国主神が国譲りをするのも簡単過ぎる。自分のこども二人が歯が立たないからと、すぐに明け渡すようでは国のトップとしては如何なものかという感じです。これと似たような話だなと思ったのは、神功皇后の三韓征伐の話。天照大御神と神功皇后のイメージが重なり、戦わずして三韓は自ら降伏してしまいます。
勝者の天皇家からすれば、敗者である大国主神が、その後は天皇家を守護する立場として祀られるというのも納得しにくい話です。国譲りでは日和見をきめこんだ息子の事代主神が、壬申の乱の中に登場して天武天皇を助けるというのも違和感があります。
天孫降臨で、最初に地上に降り立った邇邇芸命が、なんで初代天皇にカウントされないのか。まだ国家統一というレベルではないというなら、初代天皇である神武だって、せいぜい九州地方、中国地方、近畿地方が活動範囲で、全国制覇というには寂しくないか。
神武天皇を正当な邇邇芸命からつながる最初の支配者とするなら、そもそも神武より先に近畿を支配していた饒速日命とはいったい何者なんでしょうか。饒速日も、間違いなく邇邇芸命と同じく降臨した天孫だと認められています。だったら、初代天皇と呼ばれる資格がありそうなものです。
神武以後、とにかく歴代の天皇の長命は、当然不自然過ぎる。欠史八代と呼ばれるくらい、記録もほとんどありません。存在そのものの疑問が出るのは当然で、どうせならもっと天皇の数を増やして、実時間軸との整合性をもたせられなかったのか。実在したのなら、意図的に存命期間を延長して、時代を遡らせた理由もまた不明です。
とにかく、何処まで来たら実在した天皇なのか、なかなか確信が持てません。5世紀までは、あまりに謎が多すぎて、信用できる話が少なすぎると言わざるをえない。
武内宿禰という人物も、謎の程度では最大級です。景行天皇から仁徳天皇までに参謀格のように登場してきますが、時系列を素直に信用するなら寿命が400年近いことになってしまう。皇室の血筋から生まれた人物ので、後に多くの豪族の祖先とされていますので、何世代かをまとめているんでしょうか。
他にも不思議なこと、納得できないことは、いくらでもあるんですが、挙げていたらきりがありません。また、いろいろ考えてみても、結局は答えはありません。さらに、勉強を続けてみるしかないようです。