キリスト教の教会暦では、キリストの受難にまつわるイベント前のおとなしくしているべき四旬節の真只中です。当然、教会でのカンタータの演奏は休みが当たり前。バッハの教会カンタータも、曲自体が無い・・・
はずなのに、実はあったりします。もちろん、教会暦をしっかりと意識して作曲活動をしていたライプツィヒ時代の作品ではありません。
BWV54 罪に手むかうべし (1714)
これはアルトのためのソロカンタータですが、3つの楽章しかなく10分程度の短いもの。冒頭曲は、失われた「マルコ受難曲」に歌詞を変えて用いられたと考えられています。流れるような弦の不協和音を中心とした伴奏が印象的です。
BWV80a すべて神によりて生まれし者は (1715)
これもワイマール時代ですが、歌詞のみ残っています。ライプツィヒでは演奏する機会が無いため、宗教改革記念日のために演奏される、BWV80 われらが神は堅き砦 (1724)へ転用されました。
後にバッハの息子フリーデマンが、打楽器や管楽器を加え、その版が旧バッハ全集で採用されていたため、名盤とされるリヒターの演奏はヴェルナー盤ではやたらとにぎやかで合唱がかき消された感じ。
新バッハ全集では修正されて、ガーディナー先生や鈴木雅明盤ではフリデーマンの追加が無い、合唱のフーガが見事な「原曲」の響きを堪能できます。